こんばんわ
黒服の人が声をかけた人たちはみんな喜んでついていく。
僕たち以外はみんなその特別相談室に行きたいみたいだ。
憲治「見に行きたい所だけど、5人は…。」
樂「2、3で動くか?」
絢愛「5人でって、世永さんに言われたじゃん!」
叶兎「せっかく来たからには何か掴んどきたいよな…。」
虎雅「みんなどこに集められてます?」
憲治「…あのB.I.Pルーム。あそこに咲さんたちがいるんだと思う。」
今はDJのみで場を盛り上げている。
虎雅「相談が終わった人にどんなだったか聞きますか?」
叶兎「それだと時間が見えないよなー。」
確かに、あと20分で相談が終わる確証は無い。
絢愛「…でも、もう出てきてる人がいるよ?」
絢愛さんが指差す方向にはさっき相談室に入った人がもう出てきている。
虎雅「聞きにいきましょう。」
僕たちは一緒に人混みをかき分けて、1人で歩くその人を追いかける。
虎雅「すみません!お兄さん、RAMMYさんと…」
僕はその人の肩を掴むと、その人は歩くのを止めてくれたがこちらを向かない。
樂が回り込んでその人を顔を覗くと、目を見開く。
樂「虎雅、肩離してやれ。」
虎雅「…え?わかった。」
僕は言われた通り手を離すと、その人は歩いて行ってしまった。
叶兎「どうしたんだ?」
僕より後ろにいた3人が不思議そうに樂に尋ねる。
樂「…白目、向いてた。」
「「「「…!?」」」」
樂「首に注射でも刺されたのか、あの真四角の白い絆創膏貼ってた。」
叶兎「…おクスリ?」
絢愛「じゃあ、あの2人捕まるよ!」
憲治「こんな大きいイベントをして、わざわざクスリを使う必要が分からない…。」
確かに憲治さんが言うことは分かる。
こんな大規模なイベントをするより、隠れてフォロワーの人たちに撒いた方がいいだろう。
まあ、どんなクスリかは分からないけど…。
僕たちは人の間を縫いながら、たまたま壁のようになっている非常用扉の前につく。
これだったら、何かあっても逃げやすい。
絢愛「あと10分で出ないといけないけど…、え?」
絢愛さんが隣の人の顔を見て、驚く。
僕らもその人の顔を見る。
「「「「え…。」」」」
その人はよだれを垂らして、目を瞑ったまま音楽にノっている。
僕は他の人の様子も見た。
すると他の人も体は音楽にノって動いているけれど、白目を向いたり、目を瞑ったままだったりして夢遊病状態でクラブに参加している人ばかりだった。
樂「やばくないか…?」
虎雅「もう、出た方が…」
[ブヅヅッヅッヅッブヅヅッッッ…]
と、急なノイズ音が会場に響くと、さっきまで体を揺らしていた人たちがバタバタと倒れていく。
咲さんたちの仲間だと思っていた、DJも黒服も倒れている。
絢愛「え…!何…」
絢愛さんの口を叶兎さんが抑えて、みんなでしゃがみこみ身を小さくする。
何が起きてるんだ。
樂「血だ…。」
樂がかすれ声でみんなに教える。
樂「花の匂いでかき消され気味だったが、ずっと血の匂いがしてた。みんな口を覆っとけ。」
みんなでジャケットやスカーフなど持っていたもので口を塞ぎ、人に埋もれるよう隠れる。
「居ないわね。」
「そうですね。」
あの2人の声がB.I.Pルームから出てくる。
僕らは近くの人山から2人を覗く。
咲「ふぅー…んっと、この子はいい目してるわ。」
さっき絢愛さんをナンパした人たちの胸ぐらを掴んで軽く持ち上げる。
咲「…どうしたらこんなにベトベトになるのかしら。」
凌太「水です。」
凌太さんは近くにあったペットボトルの水で、男の服を乱暴に離した咲さんの手を擦り洗う。
咲「さっき、良い体つきの子が舞台の脇に見えてたんだけど帰っちゃったかしら。」
凌太「どんな特徴でしょう?」
咲「スーツとレースドレスの5人組で、サングラスとストールしてたわ。」
僕たちだ!
一気に冷や汗が流れる。
これはバレたら何されるか分からない。
とりあえず何も物音を立てないようにしないと。
咲さんと凌太さんはその後、倒れている人たちを眺めてはお気に入りの人を見つけてどこかに運んでいく。
叶兎「次、運びに行った時にここから出よう。」
叶兎さんが真後ろの非常用出口を指さす。
すると、人を運び終わった2人がまた会場の中に入ってきた。
僕たちは再び体を縮こませ、息を殺す。
咲「そこの金髪の上に乗ってる子も運んで。」
わわわわ…、叶兎さん金髪だけど大丈夫かな。
こちらに近づく足音が自分の心音でかき消される。
人が持ち上げられた音とその隣が明るくなったのを感じる。
大丈夫か…、バレてないかな。
凌太「……。」
なぜか凌太さんは人を担いだまま、こちらを見ている。そう気配で感じる。
凌太「…?」
凌太さんが人を置き、こちらに近づく音が聞こえる。
来ないでくれ。お願いだ。
咲「凌太。」
凌太「すみません。」
凌太さんが人を担いで向こうに行く音が聞こえる。
カツカツとヒールの音も向こうに行く音が聞こえるので、きっと咲さんも行ったはず。
僕たちは静かに頭を上げる。
すると、あの黒レースのスレンダーな脚が目の前にあった。
[ダン!]
僕の頭を咲さんが力強く掴み、壁に一度打ち付ける。
咲「こんばんわ、慰撫団の愚かな仲間たち。」
咲さんは無表情で僕とみんなの目を見て挨拶する。
僕は咲さんの目を見て、その気配の色を見る。
なんだ、この人は…。真っ黒…?
いや…、黒にほとんど近い、朱殷よりも黒が濃い。
咲「今動いたら、命は無いわ。」
平然とそういう咲さん。きっと冗談を言う人では無いはず。
周りのみんなが僕のために動こうとしてくれたけれど、その動きを止めた。
咲「これから慰撫団に負けないチームを作ろうと思うの。名前は何が良いと思う?」
「「…。」」
咲「聞いてるのよ。あなたに。」
また僕の頭を打ち付ける咲さん。
その衝撃で少し目が霞む。
咲「…時間の無駄ね。子供は早く帰りなさい。」
咲さんが僕の髪の毛をそっと離す。
絢愛「咲さん、なんでそんな乱暴なことするんですか?仲間ですよね。」
咲「絢愛ちゃん。」
咲さんが絢愛さんと目線を合わせるためにしゃがむ。
そして絢愛さんの頬を右手の薬指で撫でる。
咲「誰も仲間と思った事、一度も無い。」
その言葉をまた無表情で言い放つ咲さんは、人間かと思えないほど冷酷な生き物に見えた。
絢愛「あま…」
樂「やめとけ。帰ります。」
絢愛さんが言い返そうとしたが、樂が止めて立ち上がる。
咲「話が早い子は好きよ。」
咲さんもたち上がり、樂を見下すよな目線を上から送る。
僕たちも立ち上がり、そのまま非常用扉を使い外に出る。
叶兎「絢愛、しょうがない事もあるんだよ。」
絢愛「…頭はみんな仲間って思ってくれてるのに。私も咲さんの事、好き…なのに。」
憲治「とりあえず、世永さんたちに報告しましょう。」
みんなで手を握り、せいさんの屋敷に帰る。
咲さん、凌太さんは屋敷に戻った団員とは段違いの雰囲気だ。
咲さんの色も気になるけれど、まずは咲さんたちがチームを組もうとしている事を解決しないといけない。
後頭部がズキズキしながらも、せいさんが待つ部屋にみんなで走って向かった。




