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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
自身の正義
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おかえり

屋敷の中に戻ると、廊下でちょうど沢山の服を持った絢愛さんと優璃さんに出会う。


絢愛「え…、え!刹牙!?」


絢愛さんは僕の抱いている刹牙を見た瞬間、持っていた服をバサバサバサと落とし刹牙目掛けて走ってくる。


絢愛「刹牙、おかえり!」


刹牙『あや、ただいま。』


虎雅「ただ…っ!」


絢愛さんは刹牙と一緒に僕と天音さんを巻き込んで抱きつく。


僕は重さに耐えらえなくて、とっさに倒れる体を腕のみで支えて軽く尻もちをつく。


絢愛「わぁー!よかったよかった!元気そうで良かった!」


刹牙『心配かけてすまないな。』


刹牙が僕の腕から絢愛さんの胸の中に飛び込む。


「わぁ、虎雅にぃモテモテじゃん。」


後ろから話しかけられ、振り向くと真司と清くんが学校から帰ってきていた。


虎雅「あ、2人とも学校お疲れ様。」


真司「…あ!刹牙いる!おかえり!」


清「おかえり。」


2人が絢愛さんの腕の中にいる刹牙を撫でる。

僕は立ち上がり、天音さんがまた僕の背中に乗る。


優璃さんが1人絢愛さんが落とした服を拾ってるのに気付き、僕は一緒に拾う。


優璃「あぁ…あり、が…とうご、ざ…ます…。」


虎雅「いえいえ。僕も持ちますよ。」


優璃「…。」


顔を赤らめて、また目を逸らされてしまった。


僕は絢愛さんが落とした服を持ち、みんなでゆっくり話が出来そうな部屋を探す。


せいさんの屋敷は結構広いけど、戻ってきた団員の寝泊まりする場所や稽古などで使っているので部屋の空きが少なくなっていた。


樂「もう、世永の部屋でいいだろ。」


虎雅「えー…?勝手に使っていいの?」


樂「何も気にしねぇだろ。」


樂がズンズンとせいさんの部屋に向かっていき、パァン!と勢い良く襖を開ける音が聞こえる。


「ちょっとー、どこ行ってたのー?え!傀奡おかえり!え!何そのイタチ、可愛(かわう)い!」


せいさんの声が聞こえる。

部屋にいるなら丁度いっか。


開け放たれた襖から世永さんの部屋に優璃さんと一緒入ると、腹方たちが何か絵を描いていた。


虎雅「何描いてるんですか?」


一番近くで描いていた犬太さんに声をかける。


犬太「面のデザインだ。」


虎雅「お面?」


世永「そう!広報活動の時につけるお面のデザインを自分で考えてもらってるんだ。」


虎雅「へー!」


と、犬太さんの絵を覗き込むと、写真のようにリアルな絵ではあったけれどキキさんの似顔絵だった。


虎雅「え…、あの…」


犬太「俺は終わってるんだ。」


虎雅「…そうですか。」


僕は持っている沢山の服を優璃さんと同じ場所に置く。


後から入ってきた絢愛さんたちを見て、せいさんの目玉が飛び出そうになる。


世永「刹牙!おかえり!」


せいさんが刹牙に駆け寄り撫で回す。


世永「こんなにはげちゃって。いっぱい美味しいものあげるね。お疲れ様。」


せいさんが涙ぐみながら優しい笑顔で笑う。


刹牙『じゃあ、ジャーキーとマグロとふかし芋。ドラ頼んどけ。』


虎雅「えー。」


世永「刹牙はなんだって?」


せいさんが目を輝かせて僕に聞いてきくる。


虎雅「ジャーキー、マグロ、ふかし芋らしいです。」


世永「お腹ぺこりんなんだね。とりあえずふかし芋、頼んでこよー。」


せいんさんは足軽に調理場に行ってしまった。


傀奡『この方々はこのツンツンに気配が似てるな。』


樂の肩の上で傀奡が聞いてくる。


虎雅「そうだよ。各地域の腹方たちがここにいるんだ。」


傀奡『そうか。じゃあ少し手を止めて、私たちの話を聞いてくれるか?』


僕は傀奡たちが皆さんに話があると言って、一旦手を止めてもらった。

すると丁度、せいさんも帰ってきた。


愛芽李さん以外の腹方と、せいさん、絢愛さん、天音さん、真司、清くん、僕。

凶妖の刹牙、傀奡、咲舞音でせいさんの12畳の部屋が狭く感じる。


傀奡・虎雅「この間の大移動の件は本当にありがとうございました。

犠牲になったものは少数いますが、仲間たちも理解をしています。

本当に手助けありがとうございます。」


傀奡がお辞儀をする。


傀奡・虎雅「そして、この件を大地の神、國琉(こくりゅう)様は見ていたようで、今回國琉様が考えていた策は一旦保留にして頂くことに決定しました。

その頼みをここにいる私共々がしていたため、帰りが遅くなってしまいました。申し訳ありません。」


世永「おぉ!良かった!じゃあ凶妖の大災害は無くなるのかな?」


傀奡・虎雅「いえ。無くなりはしません。しかもこの件はただの保留に過ぎません。

今回、人と動物が協力し人の道をそれかけた者を後戻りさせた事に神々の関心を得ただけで、確実に人と動物と自然との心の繋がりには信頼を得てはいません。

なので、自然にあたる神々たちは我々の生き物を様子をしばらく観察する事を決めました。

この間の様に手を取り合い、種の垣根を超えて助け合える仲間になる者が増えていくのであれば数百年に一度、大きくこの島国を動かすための地震を起こすだけにすると約束してくれました。」


絢愛「え!すごい!」


傀奡・虎雅「いえ、あまりいい条件ではありません。

まずはこの一年で無駄な殺生を5分の1以上減らす事、

自然を汚す物をこれ以上使わない作らない消費を減らす、

そして自然と共に生きる力を身につける事です。」


さっきまで希望に満ち溢れたみんなの笑顔が一気に引き締まる。


傀奡・虎雅「これは人間に対して最後の忠告だそうです。

来年の春までに少しでも改善が見られない様であればその時は文明を終わらせるとおっしゃっていました。」


みんながその言葉に息を呑む。


世永「…こんなに大切な事、教えてくれてありがとう。」


傀奡・虎雅「私は人に育てて頂いたので、居なくなってしまうのは寂しいのです。」


世永「そっか。…俺たち頑張るね。」


せいさんが笑顔で傀奡の頭を撫でる。


刹牙『國琉の他にも後2体、神がいると言っただろう。』


刹牙が僕に話しかけてくる。


虎雅「うん。」


刹牙『國琉(こくりゅう)は主に生命維持を大事にし、

海の神の凱縷がいろうは生命が生きるための自然を大切にし、

全てを見る天の神の鳳鸞ほうらんは生命の成り行きを大切にしている。

俺たちはその3体の箱庭で暮らしている。

その箱庭で育てていた生き物が、自分の大切にしてきたものをどんどん破壊していったらどうだ?気分が悪いだろう。

だから、これは人間が神の箱庭で生き続けるか否かの選択を自分の行動で表せと言うことだ。

あちらもすぐに改善は見えるとは思ってない。

だがな、その改善しようと思う心を宿せるかどうかを見ているんだ。心の動きで俺らの動きが変わるからな。

だから、この一年が勝負の年だ。生きたいと思っていても、他人に人生を任せた瞬間すぐそこに死がやってくる。

今まで他に任せ続けたツケが回ってきたんだ。

心してやれ。』


虎雅「わかった。」


僕は刹牙が教えてくれた事をみんなに伝えると、みんなの目の色が変わる。

みんな目の奥が燃えている様に感じる。


僕たち人間がこの最後のチャンスを逃したら、今まで培ってきた文明を全て消される。


消されないため、生き抜くため、僕たちはすぐさま動き始めた。


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