凶妖
頭「元はね、災害は神の気まぐれで起こったものだからしょうがないものだったのです。
しかし、人はその神を信じなくなり人自身が神と名乗るようになって、この大地、大海、大空を人は支配した。
本当は支配してはいけないものなのにね。
今この時代になって、野生動物は消えたこと知っているかな?」
少し前にニュースでやっていた。
全ての動物を人間が保護をし管理するとニュースでは話していた。
虎雅「はい、ニュースで何度か見ました。」
頭「そう、ニュースでは保護という名目で動物を管理するようになってしまった。この世はどこにいっても動物園状態。人に全て管理されてしまう世の中になってしまった。
ただ少し脳が発達しているからカーストの頂点と勘違いしている人間が、
この世の生き物の自由を奪い生死を管理する。
生命の根本はとても儚くて尊いものなのに、
それを軽視している人間の都合で殺される。
それが凶妖になってしまう理由だよ。
人間の住処を少し荒らしただけで殺されたもの、
人間の娯楽にために生まれてきたもの、
人間に食べられるために生まれてきたもの、
全て凶妖になるきっかけを持っている。
その怨みや痛みを少しだけでも晴らせるように私たちは動いている。
だから虎雅、樂、ご両親や大切な人を亡くされてとても辛い想いをしたのは分かるが凶妖の想いも汲み取ってあげてね。」
虎雅「…はい。」
樂「…。」
頭「凶妖は殺せばもう出てこなくなるが、わたしはその生物も殺したくはないんだ。
だから封印をして臓の館で妖力をとって元の場所で過ごしてもらうようにしている。
これは人間のせいなんだ。だから個人個人が向き合わないといけない。
それをしない人たちが多いから凶妖が災害を起こし人間を喰らい妖力を高める。
悪循環になってしまっているのは分かるかい?」
虎雅「はい。」
頭「これから虎雅も樂も自分でもそうだけど、周りの人たちにも自然環境を良くするために動いて欲しい。
その小さな努力が見えるときは、中々遠いがみんなで協力すればできることなんだ。
この世が人間で作られたものではないと心で分かった時、
大地、大海、大空を神に返還した時、このしがらみから解放され全ての生き物と共存できるようになると私は考えているんだ。
だからこれから私たちと頑張ろうね。」
虎雅「はい!」
樂「…はい。」
頭は愛芽李さんの手をとり立ち上がった。
頭「じゃあまたね。気をつけていってらっしゃい。」
世永「ありがとう、姉ちゃん。」
せいさんが頭に手を振って見送る。
僕はなぜか自然と頭を下げた。
とてもありがたい言葉を聞いた感じがして、感謝の気持ちを表したかったのかも知らない。
襖が閉まり、頭をあげる。
世永「この団体の内容はなんとなくわかったかな?」
虎雅「はい、真実を知れてよかったです。」
世永「樂は?」
樂「俺は…間違ってた。鍛錬し直してくる。」
樂は1人立ち上がり、縁側からでていってしまった。
ぶっ倒すと言っていた樂。
きっと凶妖が無造作に人を殺していたとずっと思っていて家族を殺した怨みが強かったのだろう。
そう考えて今まで戦ってきたのかと思うと胸が痛くなる。
世永「樂はあまり人の意見を聞かない子だったから、今日頭に会えてよかったのかもね。やっぱり一人一人頭に合わせた方がいいのかもなぁ。」
と目を閉じながらせいさんは考える。
僕はただ抵抗できず人が死ぬことが嫌でここにきたけど、
他の動物は集まるすべもなく殺されていたんだ。
これから僕たちが共存すべきものたちを守るためここで働く。
恨んでいたって何も始まらない。
生きているなら今と未来を見続けないといけない。
死んでいった人たちのためにも僕たちは僕たちの過ちを正す時が来た。