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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
自身の正義
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焦り

屋敷に帰ると、捕まえられた団員たちのために布団を用意する救護班の人たちや泥だけ傷だらけの団員たちがバタバタと屋敷中を動き回る。


琥崙「…まだ動けるか?」


虎雅「動くことしか僕に出来ることがありません。」


琥崙「…そうか。」


琥崙さんはみんなの様子を見て、まだ人手が足りなさそうな所を見つけ手伝いにいく。

救護班の人が手当に集中出来るよう道具を補給したり、災獣園に新しく入った凶妖の凶暴化を止めたり、元団員たちが少しでも心安らげるようお香を焚いたり僕たちが出来る限りのことをする。


手伝いをする中で、天音さんを見つける。


静かに眠ったままで、暴れまわることはなさそうだった。

このままケロッとして、自分の事を思い出してくれればいいのにとどれだけ祈ったか。

でもかしらが嘘を言うはずがない。

確証があるからああやって注意してくれたんだ。


1人で天音さんの事を思いながら作業しているとフワッと強めの風が庭に吹き、その風に血の匂いが乗ってやってくる。


[ズシャ…]


と、庭に撒かれている砂利の上に大きなものが倒れる音がする。


僕は急いで庭に向かうと、真司と清くんが血まみれで倒れてる。


虎雅「真司!清くん!」


僕が大声で2人の名前を呼ぶと鈍い動きで真司がこちらを見る。


真司「あ…虎雅にぃ。轟がやばい…。」


小さくかすれ声で真司が僕に教えてくれる。


虎雅「救護班の方!重症2名!急いで!」


僕が屋敷に呼びかけて数秒後、ドタドタと4人の救護班が担架を持ってやってくる。


「教えて頂き、ありがとうございます。」


虎雅「よろしくお願いします!」


僕には、救護班を呼ぶ事しか出来ない。

2人の大怪我の手当の仕方だって分からない。

助けてあげたいのに、自分の知識の無さが苦しい。


真司「…虎雅にぃ、ありがと。」


担架で運ばれる前、真司が僕の手をきゅっと握り力なく離した。


虎雅「助けてください!お願いします!」


「「はい!」」


救護班が強く返事をし、屋敷の中に2人を運んでいく。


こんな所で泣いてる場合じゃない。

何も出来ない僕は、出来る人のために動かないといけない。


僕はまた屋敷に戻り、みんなのために動く。

するとまた強い風が吹く。


「災獣園の人ー!来てぇー!」


せいさんの声だ。

僕は誰よりも早くせいさんの元へ行く。


僕は2人を見て、心臓の鼓動が一瞬止まった。


傀奡が翼が折れ、小さく折られた矢が刺さっている。

せいさんの右目からは大量に血が出ていて、まぶたが開けられない様子。まさか目が潰されてしまったのか?


虎雅「せいさん!傀奡!」


世永「おー!虎雅、無事…でもないけど生きてるね、優秀優秀。俺ちょっと疲れたから傀奡を災獣園に連れてってもらってもいい?」


虎雅「分かりました!」


せいさんからそっと傀奡を預かり、屋敷に向かうためせいさんを背に走ろうとすると、後ろから人が倒れる音がする。


振り返るとせいさんが倒れている。

さっきまで気づかなかったが、せいさんの背中から多量の血が流れてる。


虎雅「庭の近くにいる人!華宮世永が倒れてる!急いで救護室に運んで!」


すると、二階の窓が勢いよく開き、そこから2人の団員さんが担架を庭に投げつけ、飛び降りる。


「「ありがとう!」」


虎雅「よろしくお願いします!僕は傀奡を災獣園に連れてきます!」


「わかった!よろしく。」


2人は団服を脱いでせいさんに巻きつけ、止血し始める。


僕は急いで災獣園の人に傀奡の手当をお願いする。

この間、何回呼びかけても傀奡の声は聞こえなかった。

でも…まだ温もりはあったから大丈夫。

…絶対大丈夫。


災獣園から出て、救護室にまた必要なものを持って届けに行く。


だんだん近づくにつれて、血の汚れと匂いが強くなる。


虎雅「扉の前に道具置いときます。」


僕は扉を前に言葉をかける。

バタバタと人が動く音が聞こえる。


「ありがとうございます!」


焦っている声がお礼を言う。

それほど怪我人が多い、僕はまだ無事に近い人なんだからもっと動かないと。


僕は屋敷中を走り回り、必要なものを聞いては届ける事を繰り返す。

たまに元団員が凶妖化していないかも確認し、自分の怪我も忘れ、動いた。


かしら!愛芽李さん!」


と、庭から2人の名前を呼ぶ声が聞こえる。


僕は二階にいたけれど、すぐに窓から飛び降り2人の元に駆け寄る。


少しお腹に痛みを感じる。


バチッと愛芽李さんと目が合う。

息を切らしながら愛芽李さんが、


愛芽李「あ…ぁの、かしらの血が足りないです…。」


虎雅「血ですか?」


愛芽李「かしらの血を集めてもらっても、…良いですか?」


虎雅「分かりました!」


飛び血と泥まみれの愛芽李さんと、初めに気づいた救護班の人がかしらを抱える。


愛芽李「あの…虎雅さん、お腹から…」


僕はそれを聞いて、初めてお腹に意識した。


血が溢れ始め、団服を汚し始めている。


虎雅「あ、多分他の人です!まずかしらを助けます!」


僕は屋敷にいる団員たちからガラス細工に入ったかしらの血を預かり救護室に届ける。


するとたまたま琥崙さんと会った。


虎雅「あの、かしらの血が足りないんです。他の地域の団員…」


琥崙「お前の血が足りなくなるだろ。まず、自分が生きる事を第一優先で考えろ。」


虎雅「…は、はい。」


琥崙さんが持ってきた布で傷口の手当をしてくれる。


虎雅「ありがとうございます。」


琥崙「…かしらの血が足りないんだな。俺が貰ってくるからお前はしばらく休め。」


虎雅「でも…」


琥崙「かしらが『自分の命を大切にね。』と言ってただろ。お前が倒れたら、また救護班の仕事が増える。無駄に仕事を増やすな。

俺が戻ってくるまで、元団員でも見張りながら横になっておけ。」


初めてこんなに喋ってくれたことに驚き、冷静になる。


虎雅「…わかり、ました。」


琥崙「樂と嘉蘭が来たら、今の事を伝えろ。俺はまず嘉田苛さんたちの所に行ってくる。」


と言って、琥崙さんは立ち上がりそのまま行ってしまった。


一度、僕は冷静になると腹の痛みに襲われる。

さっきまで焦りが募り、アドレナリンが出て痛みを感じなかった。


壁を伝いながら、庭に近い元団員たちの部屋に行く。

痛すぎて横たわれないので、柱にもたれかかる。

痛みが頭に来たのか、急な睡魔に襲われて少しの間気を失ったかのように眠ってしまった。

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