朝が来る
后桔山に着き、頭が指定したポイントに向かう。
あと数時間後には多くの凶妖たちと元団員が来る。
ポイントに着き僕たちは清めの水を全身にかけ、狼煙の場所を確認しそれぞれが気持ちを引き締めて朝を待つ。
みんな冷えた地べたに座って、自我穿通、見透極通、嗅鋭敏通、聴静保通の4つの通りを高めるため、目を瞑って体全身を使って深呼吸をしていく。
みんなそれぞれ、思い思いの呼吸で自分の感覚を高めていく。
樂「朝が来る。」
この5人の中で一番鼻が効く樂が声を発する。
絢愛「よーし!みんなで円陣組もう!」
絢愛さんが勢いよく立ち上がり、腕を広げる。
すぐさま琥崙さんが絢愛さんの横につき、その横に嘉蘭さん。
僕は樂と絢愛さんの間に入る。
絢愛「みんながいれば大丈夫!…はい!」
「「「「え?」」」」
絢愛「繰り返すんだよ!はい!」
「「「「みんながいれば大丈夫。」」」」
絢愛「みんながいれば怖くない!はい!」
「「「「みんながいれば怖くない。」」」」
絢愛「5人で最強!樂虎絢愛、嘉蘭琥崙!イッェーイ!」
と、絢愛さんが勢いよく一歩脚を出し、腕を明け始めた空に突き上げる。
みんな半テンポ遅れて真似をする。
全く打ち合わせのない掛け声だった。
樂「…アドリブか?」
絢愛「アドリブ!」
琥崙「…最高だ。」
嘉蘭「青春っぽーい。懐かしい♡」
虎雅「頑張りましょう!」
絢愛・嘉蘭「「うん!」」
樂・琥崙「「おう。」」
樂以外のみんなが、僕に微笑んで答えてくれる。
日の出を5人で見守る。
その朝日はこの前3人と見たときより、少し霞んで見えた。
けれど、その霞に負けず太陽が僕たちを照らす。
その朝日の温かさが僕に現実だと訴えかける。
嘉蘭「…来るよ。」
みんなで朝日の温かみを感じていると、嘉蘭さんがポツリと呟いた。
数秒後、地面の揺れを感じ始める。
樂「とりあえず木の上にいよう。」
みんなで凶妖から見えやすい葉の少ない木に登る。
『…れた!…られた!』
虎雅「来てる。けど…遠い。」
僕は目をつぶり、もっと凶妖の言葉に頭を傾ける。
『仲間が殺される!助けて!』
虎雅「行かなきゃ!」
と、僕は呼ばれる凶妖の元へ行こうとすると、樂に腕を掴まれる。
樂「ちゃんと話せ。」
虎雅「ここに来る前に殺されそうになってるんだ。急がないと!」
樂「嘉蘭さん、向かってもらってもいいですか?」
嘉蘭「行ってくる。」
樂は僕ではなく、嘉蘭さんに向かわせる。
『…痛い。』
『早く走れ!追いつかれる!』
『先に行っ…』
沢山の言葉が流れ込んでくる。
虎雅「…死んでる。殺されてる。」
僕は凶妖の苦しみと不安の声で、涙が溢れそうになる。
樂「お前しか言葉が聞けないんだ。ちゃんとしろ。」
虎雅「…うん。」
僕はその声が聞こえるまま、心を落ち着かせるために目を開けて一点集中する。
琥崙「来た。」
絢愛「来た!」
2人が同時に指差す方向から、色んな種類の凶妖と動物たちが走ってくる。
先頭には白いイタチがこちらに向かって、仲間を先導している。
沢山の凶妖の声の中から、人数を教えてくれる声を探す。
『あと少し!』『妹が…』『私たちが生きるんだ。』『今は自分のことが第一だ!』『走れ走れ走れ!』『…うぅ…痛い…。』『もういっそのこと…』『なんで私たちがこんな目に。』『そんな事言うな!生きろ!』『あそこにも4人いる!』『また人間だ。』『…死ぬの?やだよ。』『俺たちなんで生きてるんだ…。』『何も考えるな!まず脚を一歩でも前に出せ!』『助けて…。』『傀奡から聞いた!3人だ!私たちを助けてくれ!』『みんな死んだ…。』『なんだってこんな風に…』『みんな、人間にも仲間がいる!大丈夫!』『血が…血が…』『こんな事しないと生きられないのか。』『みんな生きるため動くんだ!』
沢山の声の中に一つあった。
虎雅「3人。怪我してる凶妖もいる。」
僕は胸いっぱいに空気を取り込んで、豆粒くらいの遠くにいる凶妖たちに届くように声を張り上げる。
虎雅「僕たちは君たちの仲間だ!君たちを助けるためにここにいる!手当もする!だから、生きて走り抜いてくれ!」
『ありがとう。虎雅。』
人数を教えてくれた声と同じ凶妖がお礼を言ってくれた。
樂「絢愛は動物の救助。琥崙さん、嘉蘭さん、虎雅、俺で元団員を捕まえる。」
絢愛「分かった!」
絢愛さんは木から降りて、凶妖に大声で誘導し始める。
その中で怪我した凶妖を何匹も抱き上げ走っていく。
樂「行こう。」
虎雅「うん。」
琥崙「おう。」
3人で凶妖の進路を邪魔しないよう移動し、まだ見えない元団員と嘉蘭さんの元に向かった。




