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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
自身の正義
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才能

稽古場に行くと、竹刀が打ち合っている音が聞こえる。


キキさんが稽古場の扉を開けると、目の前にたくさん竹刀が転がっていた。


絢愛「竹刀がいっぱい落ちてる!」


世永「あー!虎雅!なんでこんないい人材紹介してくれなかったの!?」


虎雅「え?」


中に入ると真司が竹刀をバットのように持ち、せいさんと清くんが真司に向かって竹刀を投げそれを真司が打ち返していく。

しかも全て切っ先部分を打っている。

その竹刀は二人の手元に戻って行き、それを繰り返していた。


絢愛「真司すごーい!」


真司「ありがとうございます!」


そういえば一年の中で唯一レギュラーに選ばれたって言ってたもんなぁ。


樂と絢愛さんが3人の近くに行き、絢愛さんは竹刀を投げ、樂がそれを見てなにか学ぼうとしてる。


虎雅「才能がある子は違うな…。」


葵煌「才能というより、積み重ねた努力の賜物って感じがするけどな。」


虎雅「そうですか?」


葵煌「うん。真司は世永さんと清の手癖を見て打ち方変えてるんだよ。」


キキさんが言ったことを確認するためにジッと見る。

真司が打つ前にその人に合った打ち返し方に持ち手を戻している。

ついさっき絢愛さんも入り出したけど、三者三様の打ち返し方をしてる。


虎雅「…でも見極める才能ってことじゃないんですか?」


葵煌「ううん。ここに落ちてる竹刀が努力の証。元から才能がある子はこんなにたくさんのヘマをしないんだよ。」


僕は下に落ちてる竹刀を見た。

おそらく50以上は落ちている。

確かに元から打ち返せてたら打ち返してるもんな。


葵煌「そう簡単に人間って才能に恵まれてないから、努力しようと思えるんだ。得意も不得意も自分の物にするには相当な時間と精神力が必要。その努力をするかしないかは自分次第。人に勝つより、自分に勝たないと前には進めないんだ。」


自分に勝つ。


怠ける自分に勝つ。

昨日の自分に勝つ。

今日の自分に勝つ。


そうやって毎日を繰り返せた人が、高みに立っている。


虎雅「真司は…すごいな…。」


葵煌「虎雅もすごいよ。」


虎雅「え…?」


葵煌「…今日の深夜に起きた事、かしらに聞いたの。ごめんなさい、私が早くまじないのことを教えてあげればよかった。」


虎雅「キキさんは悪くないです。」


葵煌「…ありがとう。さっきその事を自分の中に閉じ込めないでしっかり相談してくれたでしょ?

自分の非を他人に話す事は誰にでも出来ることじゃない。それを話して自分を改め、改善していこうとしたから私たちの声が聞こえないくらい集中できたんだよ。

今は自分の物にする途中で前が見えない時もあるけれど、目的をしっかり持ち続ければ迷いはしない。

虎雅も今ここにいるみんなも目的を達成するために集まった仲間でしょ?それが個々は違う思いを抱えているけれど、大きい枠組みの『共存』はみんな一緒の考えだから、仲間として、友達として、家族として一緒にいれるんだと思うの。

虎雅は自分が思っている以上に相手の心を動かしてるって自覚を持った方がいいかもね。

それはここの誰にも持ってない才能だよ。」


虎雅「僕は…、人に気持ちを動かされてばかりだと思います。」


葵煌「そう…?」


虎雅「不安になった時、辛い時、周りにいる人達の言葉で助けられてきました。だから僕は動かしてもらってる側です。」


葵煌「それは仲間からの言葉でしょ?誰だって信頼の置ける人たちからの言葉は胸に刺さる。

だけどね、嫌ってる相手からの言葉って耳に残らないの。」


虎雅「?」


葵煌「虎雅が元団員に言った『かしらが難しい共存の道を選んだ』こと。

それは十何年も一緒に凶妖狩りをしていた人たちにとって選びたくない道だったし、その思いも汲み取ってかしらもそんなに強くは言ってなかった。だからあの時、虎雅がきっちり伝えてくれてかしらは嬉しかったと思う。

その言葉で慰撫団を辞めて、凶妖狩りを勝手に始めてしまうのはあの人たちが自分の思いを凶妖滅殺に振り切ったから。

けどあのまま、あやふやなまま慰撫団を続けてもあの人たちの心は報われない。だったら一度やってみるしかない。」


虎雅「でも…そのせいで、なにも悪さをしていない凶妖が殺されました。」


葵煌「団を離れたみんなは境を見失ってしまったのかもね…。でもその命の犠牲を元団員に取らせるために、またかしらは連れ戻そうとしてるんだ。

みんな大切なものを奪われ奪った身として、これから人としてどう生きるかを考えてもらうために連れ戻す。それがかしらの考えなんだ。

やっぱり、かしらはどんな相手に対しても怒りを見せない。見せるとしても自分に対してなんだと思う。あれこそ才能って思うよ。私はどうしても元団員たちには優しい気持ちにはなれないから。」


虎雅「かしらはすごいですね…。」


葵煌「その部類に虎雅も入ってるってこと。やり方は違うけれど二人の才能は誰にも真似できないよ。」


虎雅「…ありがとうございます。」


キキさんが言ったように才能があっても、悪い方向にいってしまう。

人の心を動かすのなら、もっといい方向に動かせる才能がよかった。


今の自分にだってまだまだ自信が持てない。

昨日だって、凶妖化しかけてしまった。

そんな半分心を乗っ取られるような奴の言葉なんて誰が聞くんだろう。


絢愛「そろそろ夜ご飯だ!」


真司「あ。お雑煮。」


世永「お雑煮?」


絢愛「杏さんが作ったお雑煮を一緒に食べるの約束してるんです!帰らなきゃ!」


世永「そっかそっか。じゃあここらで終わりにしよう。」


みんなで使ったものを片付けて、稽古場に出る。


せいさんとキキさんとかしらで話し合いをするらしく二人と別れて、優善一宅にみんなで帰った。


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