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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
自身の正義
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おまじない

僕、樂、絢愛さんでキキさんに連れられて来たのはお茶室。


葵煌「今日は稽古というより、考え事をするからゆったりくつろげる所にしたんだ。」


絢愛「え!もしかして、もしかしてなんですけど、葵煌さんがお茶作ってくれるんですか!?」


葵煌「ピンポーン!お菓子も持ってきたから、糖分補給してしっかり頭使ってもらうよ。」


絢愛「わー!楽しみ!」


キキさんがお茶を立ててくれる…。

僕たち、今世界一幸せ者かもしれない!


僕たちは一列に座って、キキさんがお茶を立てる所を見る。

一つ一つの動作…というより、所作が綺麗で見惚れてしまう。

全ての物に対し、敬意を持って扱っている感じが伺える。


葵煌「そんな無言で見られると恥ずかしいなぁ…。」


絢愛「黙ってなくていいんですか?」


葵煌「うん。そんなに堅苦しいものにしたく無いから、足も崩していいよ。」


絢愛「はーい!」


みんなそれぞれ足を崩す。


虎雅「そういえば今日は犬太さんは来ていないんですね。」


葵煌「うん!犬太には内緒で来たから、今頃探してるかもねー。」


多分、話すと一緒に行きたがるからだろう。

屋敷中を探す犬太さんを想像してしまう。


葵煌「今日はね、道府県参りの特別稽古の続きをしに来たんだ。」


虎雅「一霊四魂の?」


葵煌「そう!直霊なおひ曲霊まがひの事覚えてる?」


虎雅「はい。直霊は自分の行動が良いか悪いかを省みることが出来るもので、曲霊は自分中心な考えで他我に近いと言ってました。」


葵煌「そう。曲霊と他我はとても近い存在なんだ。どちらも他人と関わりがあると出てきやすいんだ。

曲霊は相手との意見のすれ違いで、自分の意見を押し付けること。他我は相手の意見を全て鵜呑みにして考えることを放棄すること。」


樂「近い…か?」


葵煌「うん。自分の直霊の声が聞こえなくなってるって言う部分でね。」


虎雅「…自分が見えなくなった時に凶妖化してしまうんですか?」


葵煌「精神的に気を失うと凶妖化する。精神的に気を失うのは…、例えばその人の生き方の本質に殺人という選択肢が元は無いのに突然現れる時がある。そう言う時は大抵曲霊の声なんだ。人としての理性が働いていない時にそうなる。

あの時、数珠丸さんが凶妖になりかけた時もそういう選択肢を選びそうになっていたからこそ、そうなった。」


自分の生き方の本質にある選択肢。

あの時の僕は怒り任せになっていた。

だけど、僕の自我穿通のやり方は怒ること…。


虎雅「…他人に対しての怒りは曲霊の分類になるんでしょうか。」


キキさんが少しびっくりした顔をした後、泣きそうな顔で僕を見る。


葵煌「…うん。自我穿通の中でも怒りはとてもコントロールしにくくて…、でも発揮する時はすごい強力なパワーになってくれる。

けどね、怒りって自分の身や仲間の身を守るために備わった本能でもあるから、他人に向けやすいものなんだ。」


僕はあの時、元団員に怒りを感じていた。

いつもの『自分』にではなく、腕を折ってしまったあの人に。


虎雅「…僕にコントロール出来ますか?」


キキさんが僕を見て優しい顔で微笑む。


葵煌「出来るか出来ないかじゃなくて、やるしかないの。自分の力を最大限に活かせるのは自分でしかないの。他人任せにしていたら一生自分は成長しないんだ。」


キキさんの目が力強く、僕を捉えたまま離さない。


葵煌「だからね、今日は直霊の声を聞くためのおまじないを考えようと思う!」


「「「?」」」


3人で首を傾げる。


葵煌「映画であったでしょ?『お土産3つ、タコ3つ』ってやつ。」


キキさんがリズムよく胸を指先で打つ。


絢愛「知ってます!狼子どもの!」


虎雅「あー!知ってます!」


樂「あー、一回見たか。」


葵煌「あの時、お母さんが女の子のために教えてくれたでしょ?あれを自分のオリジナルで作って欲しいんだ。」


樂「でも、あの子はまじない効いてなかったぞ?」


葵煌「うん。あれはちゃんと使い方を分かってなかったから。ただ唱えればいいんじゃない。あの唱えてる時間に自分を見つめ直して、今からする行動に対して直霊の声を聞こうっていう意味があるんだ。

その唱えている時間が、曲霊や他我から自分を守ってくれる。」


絢愛「なるほどー!なんでもいいんですか?」


葵煌「言葉はなんでもいいけど、二言三言関わりのない単語を付け合わせるのがいいかもね。さっきのみたいにゴロがいいと気持いよね。」


絢愛「ふむふむ…。」


絢愛さんは顎を触りながら考える。

樂も空を見上げながら考え始めた。


僕も頭の中でぼーっと考える。

お土産3つ、タコ3つ…


樂「ネギすき、ネギまん、ネギとろろ…」


葵煌「…ゴロはいいけど、それで樂はいいの?」


樂「…もうちょい、考えます。」


なるほどなぁ…そう言う感じか。


絢愛「まっちゃん、もっちゃん、みくろっちゃん…?」


葵煌「うん?いいけど…誰?」


絢愛「分からないです!」


二人は思い浮かんでるけど、僕はなかなか浮かばない。

ゴロと関係ない単語って難しいな。


しばらく考えて、自分の名前の虎を使おうとふと思う。


虎雅「虎々心身とらどらしんしん、煌々燦々(こうこうさんさん)…」


思ったことをゴロよく言ってみる。


葵煌「虎雅の結構いいんじゃない?自分でいい感じだと思ったら自我穿通しながら唱えて。」


虎雅「はい。」


二人の邪魔にならないように寝っ転がって、座布団に突っ伏し延々とまじないを唱えながら自我穿通する。


また、ああならないように僕自身がしっかりしないと。


虎雅「…虎々心身煌々燦々。…虎々心身煌々燦々。」


しばらく一人集中して突っ伏して唱えていると、頭を叩かれる。


虎雅「痛っ…。」


樂「寝てんじゃねぇ。」


虎雅「寝てないよ。二人は決まったの?」


絢愛「うん!私は『あやとり結び、ひと結び』!」


樂「俺は『凛々累唱りんりんるいと賛魄願さんはくがん』。」


虎雅「二人とも、可愛い響きだね。」


絢愛「ありがとう!」


樂「お前、喧嘩売ってんのか?」


虎雅「違う違う!」


葵煌「よし!みんなまじないが決まった事だし、お菓子も食べてー。」


キキさんが寒牡丹と名付けられている上生菓子をくれた。

ピンク色がとても映えている花のお菓子だった。


少しお茶休憩をして、真司と清くんが行ったと思われる稽古場でみんなで向かった。

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