継往開来
あの日から1週間ほど経った。
大晦日という事もあり、街にたくさんの人々が行き交う。
僕は、去年のようにまたTVで長々とやる特番や歌番組を見る日を送るんだと少し前までは思っていた。
暖かい暖房が効く部屋で、真司、彩晴、翔馬、優太のみんなで年越しそばを食べて、どこかから聞こえる除夜の鐘を聴きながら眠りにつくんだと思っていた。
けれど、今は違う。
今年はせいさんの屋敷で少し隙間風が入る部屋で、頭、せいさん、数珠丸さん、腹方たち、数人の団員と静かに年越し蕎麦を食べながら今後の動きなどの会議をしていた。
誕生日席に座って、ねこ舌なのかゆっくりと蕎麦を冷ます頭の隣に頭専属の腹方、15歳の白露 愛芽李さん。
今日腹方として改めて自己紹介してくれた。
少し前に新しい団員さんも増えたからだ。
腹方は通常、自分の管轄地域以外でも呼ばれればすぐに向かうのだけど、愛芽李さんは頭の希望で離れない。
頭の自我がこうやって保てているのは一霊四魂の三徳を得ている事もあるけど、愛芽李さんが側にいてくれる安心感もあるらしいと隣にいたせいさんがコソっと教えてくれた。
僕には知らない信頼関係が、頭の支えになっているらしい。
次に燈藤寺 向日さんを支えている腹方が、いつもどんな時でも穏やかな表情を崩さない21歳の野亜里 憲治さん。
髪の毛がゆるふわパーマで、より一層に憲治さんが柔らかく見える。
自己紹介の仕方もとてもふわふわしていてゆったりとした動きをしていた。僕が見てきた団員さんの中で一番のんびりとして見えた。
腹方とは信じ難いけど、せいさんみたいに自我穿通を守ってあの行動なのかもしれない。
その隣には樂、犬太さんと来て、
次に嘉田苛 嵐さんを支える腹方、25歳の佐久間 優璃さんいる。
左手が凶妖に噛まれた…というか少し食べられてしまったのか薬指がなく、手の甲に痛々しい跡が残ったままだ。
けれど、その左手で放たれる弓矢は優璃さんが思ったもの全てに当たる。さっき練習していたところをこっそり絢愛さんと見させてもらった。
優璃さんは少し人と接するのが苦手らしく、モジモジしながら自己紹介をしていた。
練習していた時の表情と、普段の表情が全く別物で驚く。
優璃さんの隣には嘉田苛 豪さんを支えている腹方、23歳の奇新木 叶兎さん。
見た目で人を判断するなと言われたけど、叶兎さんが豪さんの腹方とは初見で思えなかった。
だって、すごくチャラそうなんだもん。
団員の人は大体髪の毛を染めていないのだけれど、この人は金髪で襟足に赤とオレンジでコントラストをつけた炎のような髪の毛をしている。
その髪色でリーゼント風の髪型をしていて、自己紹介の時に元カノの名前が入ってると言って、下腹部のタトゥーを見せていた。
名前というより鳥のような絵が入っていた。
まあまあな人数がいるこの食事の中でずっとこの人が会話を引っ張っていたくらい、話すのが好きらしい。隣にいた優璃さんはずっとアワアワしてた。
頭「みんな食べ終わったかな?」
「「はい!」」
頭「うん、こうやってみんなで食事が出来るのがとても嬉しいよ。では早速だけれど、今後の動きをまとめようと思う。
凶妖は、必ず殺さずに保護する。これは動物への尊重の意を表す行動だから、自分の身が危ないと思ったら一歩引いて戦ってほしい。
そして主に言霊が使えるのは、私と世永、向日、樂、新しく入った轟 清の5名のみ。しかも…私は戦闘に参加できないので頭数には入れない。
この4人がいる班は、その人を守る行動をしていってほしい。時間は掛かるけど、確実な方法を最優先でお願いしたい。
他の子は体を使わないと凶妖は封印出来ない。いつもだけれど、それ以上に自分の身は自分で守るように心がけてほしい。」
「「はい。」」
頭「そして、数珠丸たちの来願組は
元団員たちを保護して連れ戻す。あまり言葉に出して言いたくはないけれど、…きっと平然に貴方たちに向こうは刃や銃口を向けてくるでしょう。
それでも…、仲間を助けるためによろしくね。」
数珠丸「はい。」
「「はい!」」
数珠丸さんの近くに座っている団員さん5名が返事をする。
あの5名は自分から立候補し、腹方・臓方両方の特別稽古で脱落しなかった人たち。
元は30人近くいたが、力を思う存分に振るえない人が多く5人になってしまったそう。
殺意剥き出しな相手でも、元は一緒に力を合わせていた仲間だ。その人に対して殺す気はなくても戦闘不能にしないといけない。
僕はその覚悟がまだ出来なかった。
なので覚悟がある5人だけが、来願組として数珠丸さんをサポートする。
頭「もう、どんな人も動物も無駄に命を落として欲しくない。今この慰撫団にいてくれる人はそう思ってくれていると私は信じている。
みんなの思いが全ての人に届くようこれからもよろしくね。」
「「「はい!」」」
そして除夜の鐘が遠くから聴こえて来る頃、
みんなそれぞれやるべき事をするために移動し始めた。
僕は今まで通り、凶妖を保護する。
樂と絢愛さんと刹牙で班を組まれた。
樂はこれから、新人の清くんと稽古をするらしい。
清くんは、僕たちが道府県参りをしていた時に入ってきたらしい。
僕たちとはまた別の孤児の団地で生活をしていて、久しぶりに本を読もうという気になって古本屋に行った時〔自然災害と妖〕の本を見つけたらしい。
清くんは真司と同い年。そして真司と同じく災救に入ろうと志していたらしい。
首には樂とはまた別の動物の噛み跡。
二つの大きな引っかき傷のようなものが残っている。
その傷のせいで学校では嫌がらせを受けていた清くん。初めて会った時から無言を貫き通されたけど樂には懐いているっぽい。
けど一人でも心を開いてくれてよかった。
絢愛「どうする?私たちは今のところ仕事はないけど…」
虎雅「僕は家に帰ろうと思うんですけど…、もしよかったら僕の家に来ますか?」
絢愛「え!虎雅の家族に会っていいの!?」
虎雅「絢愛さんが良ければ。きっとみんなも喜びます。」
絢愛「行く行く!じゃあささっと着替えて、年が明ける前に帰ってあげよう!」
虎雅「はい!」
私服に着替え、すぐに呼ばれても大丈夫なように全て必要なものをリュックに入れる。
準備が出来て、絢愛さんが優善一宅まで飛ばしてくれた。




