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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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僕たちが部屋に着く頃、

豪さんが廊下の向こうからやってきた。


泥だらけでさっきまで仕事をしていたのか、

臓方特有の特注団服を着ていた。

大きいマントにモコモコの上着、それを締めるコルセットにふくらはぎがキュッと閉まっているズボンを履いている。


豪「数珠丸さん。大丈夫ですか?自分を見失わないでください。」


数珠丸「心配かけてすまない。もう大丈夫だ。」


豪さんは少し焦った様子で話していた。

どんな人も心が揺れてしまうこの出来事。


せいさんと数珠丸さんがなにがあったかをみんなの前で話すことになった。


数珠丸「…俺が、世永に用事があって一人で山を降りたんだ。マキも一緒に…」


数珠丸さんが泣き出してしまう。


世永「マキちゃんもぉ…」


せいさんが代わりに話そうとしていたが、泣き出してしまった。


大一「…世永から聞いた話だ。マキも一緒に行こうとしたが数珠丸は飛ぶのが嫌で、歩いて世永邸に向かった。そのあと事を済ませて世永がマキと数珠丸でご飯を食べようと提案し、食事を持って家に帰った。

家に帰ると普段のようにマキが『お帰り』と挨拶をしに来てくれなかったことに不審に思った数珠丸は、家の中を慌てて探すとマキが血だらけで倒れていた。

マキが倒れていたのは武器庫で、誰かに荒らされていた様子だったそうだ。

なんとかマキの息を吹き返そうと華宮本家のこの家で治療したが間に合わなかった。…だよな?」


世永「はい…。」


大一「その後、未世麗が全員に連絡をして今に至る。救護班が傷を調べたところ、動物の牙や爪の類ではないそうだ。銃弾があるということも踏まえて人間。

磨馬家があそこにあることを知っているのは団員のみ。

世永が少し前に教えてくれた元団員が武器を作りに来た話を踏まえると、きっとそいつらがやったと考えるのが妥当だろう。」


嵐「出て行った人達が…、マキちゃん殺したの?」


大一「多分、武器を取り返しに来たんだと思う。あいつらも人の子、わざわざ殺すために来たとは思いたくない。」


向日「武器を使って…、何をする気なのかな。」


大一「凶妖を殺すため、自分の都合の良い世界を作るためだろう。」


絢愛「酷いよ!自分の都合で命を奪うなって、あれだけ言ってきたのになんで分かんないの!」


大一「成長を辞めてしまった人間だ。考えは凝り固まってる。」


数珠丸「みんな。」


数珠丸さんが気づいたら土下座をしている。


数珠丸「こうなってしまったのは、俺が作った武器に原因がある。

俺は人を守るため武器を作ってきたが、言葉足らず俺の思いが伝わらず…この結果だ。

だから、俺から提案がある。」


数珠丸さんが顔をあげる。

目尻が釣り上がっていて、目は真っ直ぐとみんなを見る。


数珠丸「もう俺は武器作りはやらない。俺はマキを殺した元慰撫団の者たちを捕まえたい。」


大一「捕まえてどうする?」


数珠丸「…考えはないですが、人を殺しても平然と生きているのがどうにも許せない。」


世永「それは…そうだけど、殺しはだめだよ。」


数珠丸「殺しはしない。大一さんが言っていたようにあいつらも人の子。…周りに殺しを止めてくれる者がいなかっただけなんだ。だったらまた慰撫団に戻ってきてもらって精神を鍛えて欲しい。二度とこんなことが繰り返さないように。」


世永「…よし。まるちゃん、みんなを連れて帰って来てくれる?」


数珠丸「勿論だ。俺は人を殺めてしまうような武器は使わないと約束する。ただあいつらが…このままだと他我に襲われ凶妖化するのも時間の問題だ。どんな命も皆平等だから、あいつらを救いたい。」


世永「そうだね…。わかった!数珠丸を狷介固陋けんかいころう者たちを慰撫団に引き戻す隊長に任命。

臓方たちは、団員に声をかけて手を上げてくれた者の中から数人、数珠丸の手伝いに回してやってくれ。

あとは作り手の引越し。こんなことが二度と起こらないようにまずは近くの狼煙のろしに避難してもらおう。」


「「はい!」」


(かしら)が手を上げ、みんながそちらに向く。


頭「みんな、マキのために集まってくれてありがとう。…人員は足りない、凶妖は日に日に力をつけ、更に新しく人も凶妖も殺す輩が出てきた。

しかし元をたどれば、皆仲間。今ここにいない仲間たちの心も救済出来るように今から邁進していこうね。」


「「「はい!」」」


みんなで(かしら)に返事をする。


みんながそれぞれマキさんに手を合わせて、自分の屋敷に戻り、やるべきことをやりに行く。


臓方たちはまず団員へ報告しに屋敷に帰り、結界の強度を高める。

腹方たちは、武器製作をしてくれている人達を狼煙と呼ばれている独立した救護院に避難させる。


狼煙という施設はもともと動物が寄り付かないように火を焚いて、人にここに救護班がいるとわかるよう狼煙を上げていたことから出来た物らしい。

現代では、数が減っている銭湯の一部が狼煙として使われている。


数珠丸さんと世永さんは、磨馬家の家の片付けに。


僕には、今は何も出来ることがなかった。

それは絢愛さんだった。


2人で泣き腫らした目を氷で冷やす。


絢愛「力が足りないって悲しいね。」


虎雅「…そうですね。」


絢愛「…よし!稽古しよう!」


虎雅「はい!」


僕と絢愛さん、そして刹牙と今まで教えてもらったことを反復する。

今よりもほんの少しだけでも前に行け。


僕が前に進まないと人生なにも変わらない。


マキさん。僕の心の中で生きているマキさんは、今僕を見て笑ってくれているだろうか。

あの優しい笑顔をしながら応援してくれているのだろうか。


あなたが笑顔であり続けるなら、僕は頑張れます。

死んでもなお、涙が出るなら夢で会いましょう。


そして一緒またおかきを作って食べましょう。


あの時の数珠丸さんと一緒にいる笑顔が一番素敵だったから、あの時の笑顔が好きだから。


また見せてくださいね。

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