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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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眠落

屋敷の中に入ると、団員さんがすぐに案内してくれた。


みんな黙って、その場所に走って向かう。


団員さんが襖を声をかける前に開ける。


「秋森様がいらっしゃいました。」


葵煌「マキ!」


キキさんはこの間結婚をした数珠丸さんの奥さん、マキさんの名前を呼び、敷いてある布団に走る。


その布団の周りには臓方たちと犬太さんの年齢に近い、おそらく腹方の人たちがいた。


僕はそっと近づくと、そこの布団には静かに眠るマキさんがいた。


虎雅「え…マキさん…?」


肌は青白く、いつも赤く染まっていた唇は青くくすんでいる。

ただ眠っているだけなら、お腹が動くはずなのにマキさんの体は一ミリも動かない。


周りの人達は、信じられないと固まっている表情を

していたり、キキさんのように泣き崩れている人もいる。


僕はその様子を見て、目からポロっと静かに涙が溢れた。


なにがあった?

ほんと数日前まで元気に笑顔で過ごしていたマキさんが急病で倒れてしまったのか?


[スッ…]


襖が開く音がして後ろを見ると、(かしら)(かしら)の手を引きながら、顔を涙で濡らす愛芽李さんが立っていた。

僕はとっさにパーカーの袖口で愛芽李さんの涙を拭く。


愛芽李「あり…が、とう…ごっ、ざいま…す…。」


涙を必死に抑えているのか、声が途切れ途切れだ。


頭「樂と虎雅はいますか?」


樂・虎雅「はい。」


頭「今、世永と大一さんが数珠丸を止めるのに手こずっているの。…こんな時に悪いけど、手伝ってくれるかな?」


(かしら)の顔は見えないが、声は震えてた。


たしかにその3人の顔がなかった。


樂「どこにいますか?」


頭「菊畑。」


樂は(かしら)の後ろをスッと通り抜けて、走り出す。

僕も一緒に走ってついていくと、せいさんの泣き声と、大一さんの大声が聞こえる。


樂「まずい。獣臭い。」


虎雅「それって…」


樂「助けよう。」


虎雅「うん!」


ドタバタと廊下を走り、菊畑に着くと

せいさんが泣きながら数珠丸さんの顔をつかみ目を見て戻ってこい!と何度も言っていて、大一さんは腰に刀を差し、首を持ち踏みつけながら、数珠丸と何度も名前を呼ぶ。


唸り声をあげて、数珠丸さんは地べたで暴れている。


樂「数珠丸!今こんな事してる場合じゃない!マキさんが悲しむことはしないって言ってただろ!」


樂が数珠丸さんに向かって走りながら叫ぶ。


虎雅「数珠丸さん!まだあなたと生きたい!お願いです!心を奪われないで!」


大一「そうだぞ!数珠丸!凶妖の力に屈服するな!戻れ!」


世永「俺の責任だ。お前の意識の中、俺を殺せ。だから戻ってくるんだ。数珠丸、お前の責任じゃない。自分を責めるな。戻ってこい!」


数珠丸さんが赤い涙を流しながら、暴れる。


僕はいつもマキさんが触っていた数珠丸さんのお団子になってる髪の毛を鷲掴みする。


虎雅「マキさんは数珠丸さんの中でも、僕たちの中でも生き続けています。そのマキさんを傷つけないで!」


髪の毛を触れた瞬間、少し暴れる力が弱まった気がした。


樂・大一・世永「数珠丸!」

虎雅 「数珠丸さん!」


一斉に数珠丸さんの名前を呼ぶ。


すると数珠丸さんが息を荒げながら、暴れるのをやめた。


世永「まるちゃん、ごめんね。」


大一さんが数珠丸さんから離れる。


数珠丸さんがゆっくり起き上がり、

息を整えて呼吸を落ち着かせる。


数珠丸「…俺こそすまん。自分としたことが情けない。大一さん、世永、樂、虎雅、迷惑かけた。本当に申し訳ない。」


数珠丸さんがあぐらをかいて深々と頭を下げる。


さっきとは全く別人だ。

あれが凶妖化。

人ならざるもののような気配。

そしてあの濁った数珠丸さんの色。

数珠丸さんの心臓の方へ流れ込んでいたあの汚い柿色は凶妖化になる最中だったんだろう。


虎雅「数珠丸さん!よかった!よかったぁ!」


僕は泣きながら数珠丸さんに抱きつき、次にせいさんが抱きついた。


樂「…なにがあったんですか?」


樂が大一さんにこの一件に対して質問する。


大一「数珠丸の妻、マキが殺された。」


樂「そう…ですか。凶妖が…、あの山に出たんですか?」


大一「いや。人だ。」


人?人が人を殺したのか?

しかもなぜマキさんを?

あの人が恨まれるようなことをしたとは思えない。


いつだって人のことを思って動いていたし、

天然で少し抜けてるところだって、数珠丸さんを支えているところだって、あのいつも笑顔で安らぎを与えてくれる。

素敵なところばかりのマキさんがなぜ人に殺されないといけないんだ。


樂「それは…、見知らぬ人だったんですか?」


大一「いいや…。元イブの団員達だ。」


え…。それはもう…。

…僕が、あの時追い出していなかったら、

…僕が、あの時団員さんを追いかけていたら、

…僕が、ここに入らなかったら、

この出来事は起こらなかったのではないだろうか。


呼吸が荒くなる。


泣いていたのと、衝撃の事実でパニックに陥る。


世永「虎雅!落ち着いて。虎雅のせいじゃないよ。」


過呼吸になった僕の肩をせいさんが掴む。


数珠丸「そうだ。これはお前のせいではない。遅かれ早かれきっと…誰かが犠牲になっていたんだ。それがこの世界では…マキ、だっただけだ。それだけだ。だから自分を責めないでくれ。辛い思いをさせてしまってごめん。」


[バン!]


僕の背中を樂が叩く。


樂「なにやってる。数珠丸を助けにきたんだ。今こうして数珠丸は戻った。それだけでいいんだ。」


大一「そうだ。悩むな。今を見ろ。俺たちはどんなことがあろうと前を向いて生きないといけない。どんなに後ろ髪を引かれようとも決して後ろを向くな。前が見えなくなったら終わりだ。」


過呼吸になってしまった僕を、みんなが落ち着かせてくれる。

苦しかった呼吸がだんだんと通常に戻り、しっかり息を吸ったり吐いたりできるようになる。


虎雅「ありがとう…ございます。」


僕は泣きながらお礼を言った。


そして僕たちは立ち上がり、みんなでマキさんの元へ向かった。

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