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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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電話のベル

刹牙のいびきが聞こえる中、キキさんは説明し始めた。


葵煌「一霊四魂いちれいしこんってみんな知ってる?」


絢愛「四魂はアニメで聞いたことあります!」


虎雅「僕もです。」


樂「俺はない。」


プププと犬太さんが笑う。

わざわざ煽らなくても良いものを。


樂はその様子を見て立ち上がり、葵煌さんの隣にいく。


葵煌「積極的だな!好きなタイプ!けど話の邪魔したら怒るよ?」


樂「大丈夫です。邪魔しません。」


犬太「葵煌様!こっち!」


犬太さんはわざわざ逆側に座布団を置いて、キキさんを移動させようとしている。


葵煌「邪魔するって言っただろう?ほら、頭をここに。」


半音下がった声で少し不気味な表情で笑い、

ポンポンと太ももを叩くキキさん。


犬太「え!ありがとうございますぅ!」


犬太が頭を置くや否や、キキさんが犬太さんのパン!と音をたてて口を塞ぐ。

けど、犬太さんは幸せそうにしていた。


精神年齢はいくつなんだろうか。


そのままキキさんは話し始めた。


葵煌「一霊四魂は核となる『直霊なおひ』と、『奇魂くしみたま』、『荒魂あらみたま』、『和魂にぎみたま』、『幸魂さちみたま』の四つの魂で人の心が出来ている。

だからこの一霊四魂を鍛え抜くのが大切なんだ。

もともと人はこの魂を磨くために生を受けたとされる。」


キキさんが白いまんじゅうを一つを置き、

僕たち側に淡い青、緑、黄、桃色の順で並べていく。

どうやら魂に見立てているらしい。


葵煌「荒魂は、前に進む向上心。勇猛果敢に進むだけではなく、コツコツ鍛錬をしていく力だ。

和魂は、親しみ交わる心。場の空気を乱さないように相手を尊重する力だ。

幸魂は、人を愛して育てる心。人を受け入れて、許し、育て、何かしてあげようとする力だ。

奇魂は、簡単にまとめると探究心。物事を観察し、分析し、工夫する力だ。

この魂の度合いで人それぞれの個性が出る。それが今の自分の性格でもある。

そして直霊は、その4つの魂で動かされた自分の行動が良い悪いを省みることが出来る存在だ。

直霊は直接天の神、伊都能売御霊いづのめのみたま様たちが私たちを見守ってくれてるから善悪を教えてくれる。

だから自我穿通を一段と高めるために必要なことなんだ。」


樂「魂には魂をってことか?」


葵煌「そう!樂は奇魂が強いかなぁ。」


と言って、淡い緑色のまんじゅうを樂の目の前に置く。


葵煌「それぞれ、その魂の力の度合いは違うけれど、第1段階の一つ極めることが出来るなら十分だ。」


僕の前には、淡い青色のまんじゅう、

絢愛さんには、淡い桃色のまんじゅう、

刹牙の方に、淡い黄色のまんじゅうを置いた。


葵煌「ご先祖様は第4段階の善徳を得ていたからこそ、一人でもなんとかなっていたらしい。けれど今の私たちでは、(かしら)の未世麗でも3つが今は限界だと言う。私たち臓方は2つ。腹方は1つだ。 この徳を得た者が腹方や、臓方になる条件の一つでもある。」


虎雅「じゃあ樂や犬太さんは、一徳を得ていると言うことなんですね!」


葵煌「そう。こんなケンでも魂は磨けるから、虎雅も絢愛も大丈夫。元々備わっていることもあれば、これから磨いていくこともある。

まあ大体磨いていく方が多いんだけどね。」


絢愛「どうしたら磨けますか?」


葵煌「それは直霊の声をよく聞くこと。それしか方法がないから難しい。直霊は、行き過ぎな部分を止めてくれたり、逆に一歩踏み出す勇気も与えてくれる声なんだ。だから心の声に正直になるんだ。」


絢愛「分かりました!」


僕はイマイチわからなかった。


葵煌「直霊の真の声を聞く時に、もう一つの声も聞こえてくる。それが曲霊まがひ。」


ぽんっと真っ黒なまんじゅうを前に出す。


葵煌「この曲霊すごく善人ぶるんだけど、その本質は、自分中心の答えを発してるだけなんだ。『自分が正しい』とか、『自分はもっと評価されるべきだ』とかね。そこの選択を間違えると、今まで磨いてきた直霊の四魂が曲霊の汚れで侵されてしまう。

荒魂は、争いばかりする『争魂そうこん』になり、

和魂は、少数の仲間で悪巧みをする『悪魂あくこん』になり、

幸魂は、道徳的に退廃した『逆魂ぎゃくこん』、

奇魂は、思想的に歪んだ『狂魂きょうこん』になってしまう。みんなが言う自我は真霊、他我は曲霊に近い。」


少し黒みがかった青、緑、黄、桃色のまんじゅうを並べる。


葵煌「少しだけなら改善の余地はある。けど曲霊に一度汚されてしまうと、中々元の輝きを取り戻すのが難しいんだ。そして一度耳を傾けただけで、曲霊の声が聞こえやすくなってしまうんだ。だからこそ汚れやすい。

豪から凶妖化の話は聞いただろう?

あれは、凶妖の妖力の根源が怨念だからだ。だから心を強制的に曲霊に傾けられ汚され、最後には理性を失い暴れまわる殺人鬼になってしまうんだ。」


虎雅「…刹牙は?刹牙はそんな風に感じられません。」


葵煌「刹牙は、自分の妖力を自在にコントロール出来る技量を備えていたから、今こうしているんだろうと豪が言っていたよ。こうしてイブに来てくれたのは本当に嬉しいことだ。」


刹牙を見て、キキさんは微笑む。

そんなことも知らず呑気に刹牙はまだ寝ている。


葵煌「だから、直霊の声が聞こえないとしても、曲霊の自分勝手な声に耳を傾けてはダメ。わかった?」


「「「はい!」」」


葵煌「うん!いい返事!じゃあ…」


[ジリリリリリリリリン!]


昔の電話だろうか。廊下に響き渡るとても大きい音。


すると、葵煌さんと犬太さんが血相を変えて、その電話を取りに行く。

すぐさま樂も絢愛さんもついていく。


なんだ、なにが起こっている?


僕も気になって、ついていくと屋敷中にいた団員さんがその電話めがけて一直線に走る。


バッと電話を取ったのはキキさん。


葵煌「はい、はい。」


と、相槌だけ打つキキさん。

その様子をみんなが真剣な表情をして見ている。

きっと僕だけ分かっていない。


刹牙『どうした?』


虎雅「分かんない。」


刹牙にこそっと話すと、チンっと電話を置く音が聞こえる。


葵煌「犬太、絢愛、樂、虎雅、刹牙。今から予定変更。慰撫団本拠地、東京の未世麗邸に向かう。私の手を掴め。」


キキさんがさっきとは全く違う表情をしている。

東京でなにか災害が起きたのか?

でも僕は、携帯に東京で災害が起きた時にアラームが鳴るよう旅の前にかけといたはず。

けどそのアラームは鳴っていない。


葵煌「みんなごめん。すぐに戻る。結界を強めておいてくれ。」


「「「はい!」」」


と、団員さんはバタバタと準備をし始めた。


葵煌「みんな、少し長旅だから息止めといて!」


「「「はい!」」」


みんなで息を吸い込んで、目を瞑る。

僕は刹牙がどこかに行かないようにパーカーの中で入れ、抱っこした。


ブワッと力強い風が吹いて、目を開くと(かしら)の屋敷についていた。


キキさん先頭にみんなが屋敷の中に向かって走っていく。


素足でも関わらず石庭を走るみんな。

相当な事があったのだろう。


僕は刹牙を下ろして、一緒に屋敷に向かった。

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