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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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二轅の部屋で、人の色を見えるようになるコツを教えてもらう。


二轅が窓に布をかけて、部屋に一切光が入らないようにする。


二轅「見透極通をするときに、集中力を上げるだろう?あのときの脳みそみたいにするんだよ。」


虎雅「もわんとしている感じ?」


二轅「そうそれが一呼吸で出来たらだいぶいい。常に見えたら、とーちゃん並み。」


二轅が僕の手を暗がりの中で掴み、軽く上げる。


二轅「今真っ暗で何も見えないだろ?でも見透極通をし続けると、手から白い光が出てきて、さらに色が見えるようになってくるんだ。」


僕は言われた通り、深呼吸をして酸素を体に行き渡らせて見透極通をする。


するとちょうど手を挙げているところに白いモヤの光が見える。


二轅「見えた?」


虎雅「見えた。」


二轅「それでさらに頭の中を空っぽにしてモワンとさせる。薄目をして手を見ようとしないで視界全体をボワっと見る感じで。」


虎雅「うん。」


擬音が多めだが、なんとなくわかる。


モワンとボワっと…。


目を細めて、ちょうどいい呼吸に戻す。

少しずつ夜が明けてきたのか鳥のさえずりが聞こえる。


何分経ったか分からなくなって来て、焦点の合わせ方がよく分からなくなって来た頃、一瞬だけど赤色が見える。


虎雅「あ!」


二轅「わ!びっくりした!見えた?」


虎雅「多分!二轅は僕の色の正解わかる?」


二轅「うん、わかるよ。」


虎雅「多分ピンクじゃなくて…、あれが濃くなったとしたら深い赤色かな?」


二轅「そう。虎雅は『紅の八塩』っていう深みのある赤い色をしてる。」


虎雅「紅の八塩?色の名前?」


二轅「そうだよ。ただ赤って言っても人それぞれ赤の色の濃さとか混じりけの感じとか個性があるんだ。だからとーちゃんは、あの隠れ鬼の時に誰が誰を追っているのか分かるんだ。」


虎雅「なるほど。」


二轅「じゃあ次。俺の色はなんでしょう?」


じっと二轅を見つめて、集中する。


虎雅「黒に近く見えるけど…青みがあって若干ピンクもある感じがする。」


二轅「そう!勝色っていうんだ。俺の色は紺色に近い感じの色なんだ。」


虎雅「おー!当たった!」


二轅「その感じを忘れないように自分の手で寝る前に練習してみて。まただんだんと見えやすくなるから。」


虎雅「ありがとう!」


二轅「じゃ、朝ごはん食べに行こう。」


虎雅「うん!」


窓にかぶせていた布を剥がすと、朝日が力強く差し込んできた。

目が痛いけど、この朝の感じ好きだな。


二轅と二人、またあの大広間に向かうとすでにみんなご飯を食べ始めていた。


僕たちに気づいてみんなが手を振り声をかけてくれる。


柊優歌「二人ともおはよう。今よそうからそこに座っててね。」


虎雅「ありがとうございます!」


昨日、みんなで柊優歌さんの修繕教室に参加した。

あの金の枝は金継ぎといって壊れたところを漆で継ぎ金粉を蒔いたものらしい。


金粉出なくてもその器に合わせた色に合わせることが出来て、それが一回壊れたものか分からないほど綺麗に修復できる。


これなら新しいものを買わなくても、修理するものさえあればずっと使い続けられる。

今度手直しするものがあったらやってみようと思う。


柊優歌「はい、おまたせ。」


僕と二轅の分を柊優歌さんは持って来てくれた。


虎雅「ありがとうございます!善人向上、いただきます!」


二轅「善人向上、いただきます!」


ご飯を食べながら時計を見ると、10時を回ろうとしていた。

気づかなかったけどだいぶ長い時間やってたんだな。


虎雅「長い時間教えてくれて、ありがとう。」


二轅「ううん。みんな出来ることだけどその感覚を忘れてるだけだから、思い出させただけだよ。」


虎雅「うん、ありがとう。」


二轅にしっかりお礼をいい、ご飯を食べ終えて出発の準備をする。

1日だけだったのでそんなに荷物を広げることもなくスムーズに片付けを済ませる。


「入る。」


絢愛「はい!」


[ガラ…]


豪さんが刹牙を抱いて、部屋に来た。


豪「話がある。」


豪さんは出窓に腰をかけて、座る。

僕たちは頭にはてなを浮かべながら豪さんの周りを囲み座る。


豪「いつもは、今日の朝みたいなことは教えずに葵煌ききらの元へ向かわすんだが…。何か悪い予感がしてな。最近、山の様子が特におかしい。もしかしたら大きい凶妖が動き出すかもしれない…が、それとは何か違うような気がするんだ。」


なんだかうやむやな発言をする豪さん。

いつもあんなにはっきりとモノを言うのに不思議だ。


豪「今、とても胸がざわついている。いつもの凶妖とは違う何かが動いているのかもしれない。

だから本来やらなくてもいい人の色や匂いと音を教えた。

今年参りに来た者たちには、皆習得してもらうつもりだ。

きっと何か大きい事が動く、確証はないが俺の勘は当たる。

だからお前たちは、今まで以上に辛い目に合うと思う。しかし、何があっても自分を捨てるな。自分を最後に守れるのは自分だ。死ぬ瞬間でも自分を失わず、心の生は保て。わかったか?」


「「「はい。」」」


豪「不安にさせたくはなかったが、突然降り注ぐ災難より事前に分かっていた方が取り乱しにくいだろう。どんなことでも受け入れて、前を向け。進めなくても前を向いていれば勝手に足が動かそうと思う日が必ず来る。」


豪さんが僕たちの頭を順番にポンポンして扉に向かう。


豪「幸田、梵唄、佐伽羅。そして狼の刹牙。お前たち、4人でいれば俺より強い。4人で1人だ。仲間を大切にしろ。」


「「「はい!」」」


豪さんは、そういって部屋を出て行った。


不穏な会話であったが、これから起こる災難に備えて心構えが出来る。


絢愛「何があっても」


絢愛さんが言葉を発する。


絢愛「…何があっても、私は仲間を見捨てない。みんな大好きな家族だから。」


虎雅「僕も。何があっても前を見続ける。人を助ける努力をし続ける。」


樂「はぁ…。何があろうと俺たちはやるべき事をやるだけだ。どんなことがあろうと、未来を繋げるために動くのみ。」


刹牙『俺がお前たちを守る。』


絢愛さんが、グーにした手を前に出す。

樂がそれに合わせて、絢愛さんの手にグーを当てる。

僕も真似をする。

刹牙は冷たい鼻を中央に刺す。


絢愛「よおおおし!イブのみんなで今を未来に繋げよう!そして共存の未来を手に入れよう!」


「「「「オーーー!!!」」」」


3人は拳を高く突き上げて、叫ぶ。


4人の決意が4人それぞれの思いと共に心に灯る。

この世を変えるために一人でも多くの人間が動く必要がある。


今はとても少数でも、声を上げ続ければ届く日がいつか来る。

それを今日も願って稽古を励む団員さんたち。

みんな思いが一つでなくても、見ているゴールは一緒なんだ。

だから大丈夫。そのゴールに向かってみんなで走り抜くだけ。

道の途中でいくつもの命が消えて来たけれど、思いは残り続けるし、また新たにゴールを目指す者が来てくれる。


だからゴールを見失わなければ、進み続けることが出来る。


ゴールテープを切れるまでこの思いを繋ぐんだ。



柊優歌「寂しいわね。また来年も来てね。」


絢愛・虎雅「はい!」


豪「あの泣き虫によろしくな。」


二轅・龍門「世永さんは、泣き虫じゃない!」


わーわー豪さんに言い始める二轅と龍門。

豪さんは顔を変えず、無視をしている。


柊優歌「なんだか二轅と龍門は、数年前から世永さんのファンになったみたいなの。」


樂「あの泣き虫にファン?」


二轅・龍門「泣き虫じゃない!」


樂が足元をポコスカけられながら、二轅と龍門がせいさんの好きな所を言っていく。

本当にファンなんだなぁ。


正・誠・博「絢愛、いかないでぇ…。」


正、誠、博が絢愛の足元にしがみついて離さない。

三つ子は絢愛さんのファンか。


柊優歌「あらあら、じゃあ私も。」


ふわふわと前髪を柊優歌さんに触られる。


柊優歌「このサラサラな前髪触りたかったの。」


ニコっと優しい笑顔で僕を落としに来る柊優歌さん。

一気に顔が熱くなる。


[ギュムッ!]


柊優歌さんの後ろにいた豪さんが、柊優歌さんを挟んで大きい手で僕の鼻を掴む。


豪「…おい。それ以上瞳孔開いたら口も押さえてやる。」


豪さんは柊優歌さんに恐ろしい形相を見せないようにわざと柊優歌さんの後ろから腕を伸ばしている。


怖すぎて一気に血の気が引く。


虎雅「ふぁい…。」


ビッと鼻から勢いよく手が離れる。


柊優歌さんは謝っていたが、それより豪さんの様子が怖くて気が気でなかった。


最終的に豪さんが二つ子と三つ子をひっぺがして強制バイバイをし、僕たちは最後の京都に向かった。


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