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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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使うものと使われるもの

豪「今の意味わかるか?」


絢愛「分からないですが、響きがいいです!」


二轅「なんだそれ。」


豪さんの席の隣に僕、絢愛さん、樂の順に並び、

僕の向かい側には柊優歌さんと正、誠。博。

樂の隣に二轅と龍門がいる。


その向こう側には40〜50人近くの団員さんがいる。

きっとまだ他にもいるんだろう。

大広間のテーブルはまだ空いているスペースがある。


豪「食事は体を作る根本だから、生き物として何か食べていくのは必須条件だ。

だから今、俺たちはこうやってみんなで飯を食う。

その時に毎回『いただきます。』って言うのは何故だと思う?」


虎雅「作ってくれた人に感謝ですか?」


豪「違う。俺たちの体に入る食材への感謝だ。ある所では家畜と呼ばれる動物は、人間に食べさせるために神が作ったという。

しかし、この『いただきます。』という意味を作った者は人間も他の動物も命は同根と言って、命には差別がないと説く。

食事をする前に犠牲になった命のあること、命の重みを噛み締めて、生きていかねばいけない申し訳ない気持ちからこの言葉は作られた。

全ての命が巡り巡って、自分の体を作ってくれているんだ。」


虎雅「野菜でも?」


豪「草でも動物でも生き物としても根本は変わらないが、痛覚や意識があるかどうかで俺たちは線引きをしている。

幸い野菜には痛覚はないらしい。だから進んで野菜を食べるようにしているが、人間も完璧でないから動物を食べることがある。

生きていく以上、その命を頂いた限り少しでも人として向上しなければ食べる意味がないんだ。

俺たちは気づかないうちに命を消費している。それを食事をするたびに思い出すように『善人向上』と付け加えていただくことにしている。」


虎雅「そういうことだったんですね。」


絢愛「明日のご飯から使うようにします!」


なるほど…。

少量の肉でもどこかの牛の肉を剥いでいるわけだ。

その子の命はとうに奪われていて、人間に食べられる。

そのことをなかったかのように、毎日肉や魚は大量にスーパーに並べられている。

あたかも、それがそういう形で生まれてきたかのように。


(みじか)に家畜の殺生を見てきたことがないから、

なんの気もなしに肉や魚のパックをカゴに入れ清算しているけど、それは確かに命あった物だったんだ。

自分の体を形成してくれた多くの食事に命があったものが入っている。


それを食べきれないからと言って捨てたり、

消費期限が過ぎてしまったからと言って捨てたり、

大量生産しすぎたと言って捨てたりする。


きっと痛い思い、苦しい思いをして命を奪われたものなのにそれを簡単に人間はこちらの都合で捨てる。

同じ生き物として生まれてきて、そんな風に扱われたら僕だって嫌だ。


だから今、凶妖が力を強めているんだろう。


僕たちは必要以上に命を捨てている。

それが逆に捨てられる側として育てられていたら?

どんなに足掻いても、抵抗しても、逃げられる場所はない。


最後に見たものは、人間の食と金の欲。


どんなに辛いものだろうか。

その立場にならないと分からないけど、自分の命が適当に扱われることを知った時、怒り狂うのは当然だろうと僕は思う。


柊優歌「最近の人たちは作ったものを簡単に捨ててしまうから、個を大切にすることを忘れてしまっているのよ。どんなものにも思いは込められているのにそれに気づきにくくなってしまっているの。

きっと便利を追い求めすぎて、愛でることを忘れているのよ。」


柊優歌さんはお椀を見せる。

金色の線が枝のように伸びていて、桜の花びらが舞うお茶碗。


柊優歌「これは割れちゃったんだけど、私のお気に入りのお椀で自分で直したの。他のもこうやって金色の線が入ってるものは全部修理したわ。

新しいものもいいけど、一つのお気に入りを見つけてそれを使い続けるのも楽しいわよ。」


柊優歌さんがニコっと笑いまた食べ始める。


少し前、樂の服がヨレヨレだったことを思い出す。

樂は言わなくてもその服のこと気に入っていたのかもしれないな。


たくさんの物で溢れていて、とても魅力的な世界ではあるけど僕も自分のお気に入りの物を愛でる日がいつか来るといいな。


虎雅「後でそのやり方教えてください。」


柊優歌「いいわよ。」


柊優歌さんが優しく微笑みながら、もぐもぐとお米を食べる。

僕も温かいうちに食事を食べ進めた。

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