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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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記憶

見透極通けんとうごくつうは、人の生死の色と凶妖の色が見える。

嗅鋭敏通きゅうえいびんつうは、犬のように匂いを辿れるようになる。

聴静保通ていせいほつうは、音の聴き分けが出来るようになるらしい。


ただの風で揺れた木々の音だと誰でも思う音も、

豪さんであれば本当に風か、凶妖が葉に当たった音か分かるらしい。


豪さんは自我穿通じがせんつうを合わせた4つの通りをどの臓方よりも極めた人だと、絢愛さんが庭に移動している時こっそり耳打ちで教えてくれた。


極めたのならこの耳打ちも聞こえてるのかなと思ったりしたけど、どこまで聞こえるのかは分からない。


豪「聴静保通は、見透極通に近く体中に酸素を行き渡らせて血のめぐりを良くする。そして些細な音に耳を傾ける。どんなに同じ音に聞こえようが違いはある。そこを感じ取れるようになれたら取得できたと言える。 今の段階だったら、足音の聴き分けくらい出来るだろう。 しかし、音がない時には匂い。それもない時は色で人を見つけるんだ。わかったな。」


絢愛「はい!」


虎雅「はい!」


樂「…はい。」


豪「俺は監視役だ。誰が誰を捕まえたか、見透極通でわかる。捕まった者は速やかに屋敷に戻って待機しろ。」


「「はい!」」


みんなで声を揃える。


豪「5分後、開始の鐘を一度鳴らす。」


と言って、フッと豪さんの姿が消えた。


柊優歌「はい!じゃあみんなそれぞれ隠れてね!」


と言って、みんな森林に向かって走っていった。

僕はとりあえずみんなが向かっていない方向へ走って中に入った。


とりあえず茂みに隠れて鐘が鳴るのを待つ。


刹牙の匂い…は、近くにないっぽい。


[ゴオオォォォ…ン]


鐘が鳴り、隠れ鬼が開始した。


まずは気配がある方へ行こう。

見透極通を使い、白っぽい光が近くではポツポツと二つ見える。


よし、あそこにいる。

気づかれないようにそっと動く。

鬱蒼と生い茂る葉を避けながら、近づくがこれじゃあ僕が見つかるのも時間の問題かもしれない。

いっそのこと思い切って走ってしまおうか。


[カサ…]


真横から茂みが揺れる音がする。

誰かいる?


僕はすぐに隠れる。


しかしそれは刹牙とはまた別の保護された凶妖だった。

ここには僕たち以外にもいるのか。

もっと集中してみんなを探さないと…。


耳、鼻、目を集中させる。

深呼吸をして酸素を身体中に巡らせる。


目が動き、どこか嗅いだことのある匂い。

左側にいる。


目を開き、一気に自分の思っていた方角へ進む。

いたらすぐさまタッチしてしまおう。


人影がみえる。

あの後ろ姿は絢愛さんだ。


すみません、捕まえます。


僕はそのまま猛スピードで絢愛さんに近づきあと一歩で手が届くといいう時、絢愛さんがこちらに気づく。


絢愛は近くにあった木に登り逃げる。


豪「見つかった者は追われてる者から、逃げ切るまで追われ続ける。

しかし、どちらも大きい音を立てたら他の者に見つかる。それを考えながら体を動かせ。」


豪さんの声が森林に響き渡る。


全員が鬼で全員が逃げる。

なかなか難しい。

下手な動きはできないな。


僕は音を立てないように追ってるうちに絢愛さんを見失ってしまった。

やっぱり動きの速さには絢愛さんに勝てないな。


木の上でまた探していると、小さい白い光が見える。

ちょうどこちら側に来ている。


上から人が来るとは考えてないだろう。

光の流れを見る。

あと少し、こっちに来い。


カサっと茂みが揺れて、そこでその光の動きが止まる。

ちょっと離れてるけど届かない距離じゃない。


僕は木の上からその下めがけてジャンプする。

最小限に抑えた木の音に気づかないでくれ。


光の元は二轅。

僕が上から来てることにまだ気づいてない?


あと少しで地面というところで、二轅がこちらを向いてニコっとする。


あ、罠だ。


少し離れたところから何かが来る音がする。僕はそれまでに二轅を捕まえようとしたが、一歩届かない。


二轅は逃げ、僕は二轅を追う。

僕を追ってるのは…やっぱり龍門か。


兄弟で言い合いをしている時に気になった言葉。


『お前たちは3人で1人』


ってことはこの2人は、2人で1人。

結託してるのか。


僕は自我穿通をさらに強め、足を早くし二轅の肩にタッチする。


二轅「うわ!捕まった!最悪!」


二轅は足を止めて、息切れしながら屋敷に向かう。

龍門はまだ僕のことを追ってるらしい。


そのまま僕は逃げる。


龍門は僕より足が遅いが、耳がいいのか僕の些細な音でこちらに気づき追ってくる。


振り切れないなら、そのまま違う人を探してしまおう。


追われながら人を探していると、二つの光が僕らと真反対に向かって行くのが見えた。

僕みたいに誰かが追われてるのか。


僕はそちらに進路変更し、追う。


すると樂と絢愛さんだった。

樂が絢愛さんを追っているみたいだ。


樂を捕まえれば、次は絢愛さんを狙う。

この付近には誰もいない。

だから思いっきり音を出してしまっても大丈夫。


僕は思いっきり、地面を踏みつけてジャンプする。

木よりも高く、刹牙よりも早く動けるくらい。

樂とは、まあまあいいとこ。


龍門は、この高さでは追ってこれないらしくそのまま下から走って追ってきてる。


樂の団服の裾めがけて、手を伸ばすがなかなか届かない。


これだけ力を出しても届かないとなると…。


僕は一つの考えが浮かんだが、ためらった。

お腹を凶妖に噛まれた人は記憶との代償を引き換えに強くなれる。

僕もあの大ネズミにお腹を噛まれた。


…でも、これで何か忘れてしまうのは。


豪「10、9、8、7…」


豪さんがカウントダウンを始めた。


すると龍門が僕の高さの半分まで飛んできた。

僕は驚いて逃げる。


豪「6、5…」


龍門「絢愛の彼氏、行くよ!」


龍門はヌンチャクのようなものを出して、振り回し始める。

何をしようとしてる?


豪「4、3…」


龍門は思いっきり振りかぶって、僕にそのヌンチャクを投げてきた。

まずい、空中は体が動かせない。


これまでと思った時、目の前がスローモーションになる。

すごい、ゆっくりヌンチャクが僕に向かってこっちにくる。

これなら避けれるんじゃないか?


僕は体をなんとかくねらせる。

すごく重い。さっきまで自我穿通のお陰で軽々しかったのに。

お腹に力を込めて、ヌンチャクが来るまでに僕の体をグネらせそのまま地面に僕は叩きつけられる。


無理に体をひねったせいで、着地がうまく出来なかった。


[ガチャン!]


と大きい音を立てて、ヌンチャクの鎖が何かに絡まるような音をたて大きいものが落ちる音が聞こえる。


豪「終了。」


龍門「あー!あと少しでタッチ出来たのに!」


樂「物を使うのは反則だろ!」


龍門「とーちゃんそんなこと言ってないもーん。」


べーっとベロを出してそそくさと龍門は屋敷に向かっていく。


絢愛「虎雅大丈夫?」


虎雅「あ、はい。着地に失敗しただけです。」


絢愛「そっか!」


絢愛さんが僕を引っ張り立ち上がらせてくれる。


あのスローモーションになった時、僕は絢愛さんと同じような感じになっていたのかな。

もしかして咄嗟なことで使ってしまったのかもしれない。

なにを忘れたかが分からない恐怖。


僕は二轅を1人捕まえられた喜びよりも、

記憶がなくなってしまったかもしれないことに恐怖を感じていた。

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