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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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白あんと緑茶

夜になると降っていた雪は落ち着き、ハラハラと少しだけ降っていた。


僕は屋根上に来たけど、燐香さんはいなかった。


まあ毎回いるはずもないし、燐香さんも仕事があるだろうし、ここで感じる匂いを探しながら待つことにした。


雪の冷え切った匂い、庭の緑の匂い、昨日よりお香の匂いが強い。みんな外で稽古をしないせいか強い匂いが直接届く。


そういえば燐香さんの匂いってどんなだっけなぁ。


あの晩は夜の匂いに一所懸命だったから、燐香さんの匂いまでは分からなかったな。


「おい、風邪引くぞ。」


「なにしてるのー?」


二つの声が聞こえ、振り向くと樂と絢愛さんだった。


虎雅「あ、人待ってるんだ。2人にも会ってほしいなって思ってたからちょうどいいや。」


樂「ここで待つのかよ。」


虎雅「ここでいつも会ってるから、少ししたら来るかなって。」


絢愛「へー!どんな人?」


虎雅「燐香さんって言う人で、とても人思いの優しい人なんだ。」


絢愛「そうなんだ!」


樂「…?」


樂が難しそうな顔をしている。


絢愛「燐香さんとは屋敷の中では会ったことない?」


虎雅「そうですね、たまたま会ってないですね。でもここにいれば来ると思いますよ。」


絢愛「楽しみだなー!新しい人かな!そういえば大一さんの娘さんにもリンカって名前の人いたなー!」


虎雅「そうなんですか?他のイブの屋敷にいるんですか?」


絢愛「…ううん。亡くなったの。」


虎雅「…凶妖との戦いで?」


絢愛「うん。本当は大一さん、6人子供がいたんだけど今生き残ってるのが嵐さんと豪さんだけなの。みんな人のため世のために動いて…、たくさんの命を救ったけどリンカさんは帰って来なかったって。」


樂「生きるか死ぬか、妖力の強い凶妖は特に死を覚悟して戦う。ここ最近、凶妖の動きが多くてイブの人数が足りてない。今は小さい自然災害が多いが、それは凶妖の予行練習と考えていい。

刹牙が言ってた睡蓮の花を使う凶妖が動くようになれば、いずれ知り合いの死は免れない。

…凶妖は人を殺すために災害を起こす。だからタチが悪い。通常なら人が死なないものも凶妖の意思次第で大きくなるし、起こすことも出来る。

だから死んでも悲しんでる暇はない。」


樂は寂しいことをいうが、間違っているわけではない。

今ここにいる3人は、将来一緒に笑いあって遊べているのだろうか。

イブのみんなが心と記憶の代償を払わなくていい時が来るのだろうか。


絢愛「こうやって出会えた仲間が突然この世からいなくなるのは悲しいけれど、出会えたから今の私が作られてる。

その人との過ごした日々がどんなに短ろうとも、人づてに聞いた話だろうとも、生き様が心に残ればその人の思いが生き続けるから人はまた一歩足を踏み出せるんだ。

私みたいに記憶がなくなってもその人をふと思い出すと、心が温かくなるからきっとそういうことなんだよ。」


虎雅「…だからみんな戦い続けられるってことですね。」


絢愛「うん。だから心を殺さない死なせないことが自分を生かすために大事だと私は思うよ。今と未来を見ることが出来なくなってしまったら、生きている意味を考えられなくなっちゃうからね。」


樂「どっちみち人は死ぬんだ。そいつが何を成すのかはそいつ次第。俺らは凶妖が悪さをしない世界を作る。それだけだ。」


虎雅「…そうだね。人と他の動物がお互いを傷つけない世の中にしていこうね。」


絢愛「頑張ろう!」


虎雅「はい!」


樂「おう。」


3人でしばらく燐香さんのことを屋根上で待ったが来なかった。

だけどどこからか、ずっと白あんと緑茶の匂いがしていた。


2人は僕より鼻が利くはずなのに分からないって言っていた。


また朝出直すことにして僕たちは部屋に戻り、眠りについた。


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