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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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天気予報

喉が乾いて目が覚めると、とても寒く感じた。


外を見るとまだ真っ暗な外にふわふわと白い雪が舞っていた。

燐香さんが言ってた通りだ。


僕は厚着をして屋根上に行ってみることにした。


昨日の夜、大一さんが言っていた言葉を思い出す。


本当にこの屋敷は綺麗だ。

こうやって沢山の人達がいて気づかない間に汚れがついてしまうこともあるだろうに。

でも埃も蜘蛛の巣もない。

嵐さんは僕と同じように悩んでいたけれど、段階が違うな。

僕も他の人のために動けるように身の回りに気をつけよう。


いつもの窓から屋根上に登ると、燐香さんが先に座っていた。


僕は傘をさして、燐香さんを入れて座った。


虎雅「おはようございます!」


燐香「おぉ、おはよう。早いな。」


虎雅「なんか目が覚めちゃったので…。燐香さんも早いですね。いつもそうなんですか?」


燐香「まあな。ここが好きなんだ。みんなの様子が分かるし、景色はいいし、今は話相手が出来たからな。」


虎雅「…他の人はあまり来ないんですか?」


燐香「今時、屋根にわざわざ登るやつがいるか?」


僕と燐香さんは?と思ったけど聞かないでおこう。


虎雅「そう、ですね。あの…、ここにはお姉さんか妹さんと一緒に入ったんですか?」


燐香「…何でだ?」


虎雅「昨日、仏壇のところにあった写真を見たんです。燐香さんそっくりの写真があったので姉妹だったのかなって、気になってしまって。」


燐香「ははっ、虎雅は相変わらず鈍感だな。まあそういうことにしておこう。あれは妹だよ。」


虎雅「…凶妖との戦いで亡くなられたんですか?」


燐香「…そうだよ。10年前に大地震があって、その時に何とか土砂崩れを止めようとしていたんだけど、仲間と近隣の住民を守ろうと思うがばかり、自分の身の安全は考えていなかった。

バカな妹は1人でバカでかい凶妖と戦って、山に埋もれた。

苦しかったよ、な。息も出来ない、這い上がれない苦しさもあったけど、何より心半ばで人生を終わらせなければならないことが一番悔しくて胸が苦しくなった。

…謝りたい人にも謝れない。感謝を伝えたい人にも伝えられてない。

まだたくさんやりたいことあったな…。」


妹のことを自分のように語る燐香さん。

初めて僕に寂しそうな顔を見せた。



虎雅「僕の先輩の絢愛さんが、肉体は死んでも心は生き続けることが出来るって言ってたんです。だからきっと妹さんも燐香さんの近くで見守ってくれてます。

燐香さんが妹さんの生きた証を僕に伝えてくれたので、僕の心の中にも妹さんが生きています。人生やりきれなくてもその思いが伝わった僕たちが、妹さんの代わりにたくさんやりたことやってあげましょう。」


燐香「…そっか、そうだな。確かにその子とお前の言う通りだな。最近の子はいい奴が多くて楽しそうだ。」


虎雅「今度時間が合ったら会ってください!絢愛さんのそばにいると僕は元気になるので、きっと燐香さんも元気になれます!」


燐香「ま、そのうちな。」


虎雅「はい!」


燐香さんが笑顔になる。


「おーい!たーくん!」


下から嵐さんの声が聞こえる。


虎雅「あ、嵐さん!」


僕は下に向かって手を振る。


嵐「またそんなとこいて…。鼻の調子はどう?」


虎雅「いい感じです!雪と朝の匂いがわかる気がします!」


嵐「おー!よかったよかった。味噌汁飲むー?」


虎雅「はい!」


嵐「じゃあ、そんなとこに一人でいないで降りてこーい!」


虎雅「え?りん…」


僕は燐香さんがいた隣を見たが、そこには燐香さんは居なかった。

音もなく、足跡もなく消えてしまった?

すごいなぁ…。戦ったら絶対強い人なんだろうな。


僕は下に降りて、嵐さんに連れられて食事処に行くと

みんながご飯を食べていた。


虎雅「…あぁ、美味しそう…。」


いい匂いの朝食が僕のお腹を鳴らす。


嵐「ほら、味噌汁ならたらふく飲んでいいよ。」


虎雅「ありがとうございます!」


久しぶりのまともな食事に感動し、味わう。


そして今日も稽古。

匂いの嗅ぎ分けが出来るようになる。

花の香りが菓子細工で作られた花につけられていても分かるようになった。


そしてかくれんぼ。


今日は、嵐さん、大一さん、刹牙が隠れる。


なので担当分けをすることになった。


一番匂いがありそうな刹牙を僕。

大一さんを絢愛さん。

嵐さんを樂が探すことになった。


『なんかスッキリした顔になったな。』


匂いを嗅がれながら刹牙が話しかけてくる。


虎雅「ま、2日ご飯抜いてるからさ。」


『まあ、人間は食べ過ぎな所があるからそのくらいでちょうどいいだろう。』


虎雅「でもさぁ…」


大一「おい。まだか。」


虎雅「すみません。大丈夫です。」


最後に刹牙の足の匂いを覚えて、立ち上がる。


嵐「じゃあ30秒後に探してねー。」


と言って、3人は部屋を出て行く。


僕はハンデ付きで、刹牙がいたるところに匂いをつけてくれるらしい。

絶対一番に見つけ出さないと。


一斉に僕たちは部屋を出て、匂いをたどる。

僕は四つん這いになって刹牙の匂いをたどる。


畳にさっき嗅いだ刹牙の匂いが残っていることに気づく。


微かだったものがだんだんと強くなる。

きっと近づいているはず。

僕は団員さんが行き交う中、そのまま刹牙を探すとある押入れの前で匂いが止まった。


パッと開けると刹牙が中の布団に包まって寝ていた。


虎雅「おーい、見つけたぞ。」


つんつんお腹を触ると寝ぼけた顔で起き上がる。


『早いな、足の匂いだけで見つけたのか?』


虎雅「あ、そういえばそうかも。」


『俺が他の匂いつけるの忘れてたからな。まあみんな平等に試合をした方がいいだろう。』


話が違うけど、まあいいか。

一番実践的な匂いを嗅げるようになったことはいいことだ。


稽古場に戻ると、嵐さんと樂がもういた。


虎雅「早いねー。」


樂「グズでも見つけられるようになったんだな。」


虎雅「まあねー。」


しばらく話しているとのんびり絢愛さんと大一さんが楽しそうに帰ってきた。


絢愛「ごめーん!せんべい食べてた!」


嵐「なんで!?」


大一「言うなって!」


孫びいきの大一さんが嵐さんに謝り終える頃、

日は暮れ始めた。


大一「虎雅、お前今日から食事とっていいぞ。」


虎雅「ありがとうございます!」


絢愛「おめでとー!」


久しぶりの食事は蒸し野菜に漬物といったシンプルなものだったけど、野菜の甘みを感じ取ることができた。


嵐「今日はここでゆっくりして、明日豪ごうのところに行くといいよ!」


絢愛「ありがとうございます!」


虎雅「豪さんってどんな人なんですか?」


嵐「見た目によらず、堅物って感じ。お父さんと私を掛けた感じ!」


虎雅「足して割らないんですか?」


嵐「うん!掛け算!2つ子ちゃんと3つ子ちゃんがいるから相手してあげてね!」


絢愛「あー!楽しみ!」


初めてイブの人の子どもに会うな。

一気に5人もの名前が覚えられるか少し不安になったけれど嵐さんが特徴を教えてくれた。


ご飯を食べ終えて、燐香さんに明日ここを出ることを伝えにまたあの屋根上に行くことにした。


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