積羽沈舟
朝お腹が空き過ぎて目が覚めると、
樂と絢愛さんも起きていた。
「おはようございます。」
体を起こしながら声をかける。
絢愛「おはよ! みんな早いね!」
樂「まあ、腹減ってるからな。」
窓を見るとまだ朝が明けきっていない。
昨日の燐香さんとの話を思い出す。
虎雅「あ、みんなで屋根上行きませんか?」
絢愛「なんで?」
虎雅「朝の匂いを嗅ぎに行こうかなって。」
絢愛「いいね!じゃあ歯磨きしたら行こー!」
樂「寒いだろ。」
虎雅「嗅鋭敏通は腹ぺこの時に感じやすくなるんだって。だから試しに朝の匂い嗅ぎたいんだ。」
樂「朝の匂いなんかいつもしてるだろ。」
虎雅「じゃあ、朝日の匂い嗅ぎに行こう?」
樂「…はぁ。わかったよ。」
重い腰をあげてくれる樂。
みんなで歯磨きして、空腹を水で満たして燐香さんといつも話している屋根上に行く。
絢愛「おー!ここ屋敷全体が見えていいね!」
まだ誰も起きていないのか、屋敷の中の動きはない。
樂「さみぃ…。」
匂いを嗅いでみる。
庭の石庭の下の土の匂いが微かに感じる気がする。
これは朝露の匂いだろうか、葉と湿り気がふわっと冷たい風と一緒に舞っている。
虎雅「これが朝の匂い…?」
樂「まだ、朝日が出てないだろ。」
絢愛「なんか爽やかぁ!って感じ!」
ゆっくりと朝日が顔を出す。
絢愛「じわぁっとあったかいね!」
虎雅「そうですね!」
樂「いつもより青々しい感じかもな。」
虎雅「…?」
絢愛「…?」
樂「鈍感2人には分からないだろうよ。」
3人で朝日をしばらく見ながら朝の匂いを堪能していると下から声をかけられる。
嵐「おー!いたいた!」
絢愛「あ、おはようございまーす!」
嵐「朝の匂い嗅がせようかと思って部屋に行ったら、もういなくてびっくりしたよー!」
絢愛「今ここでみんなと朝の匂い嗅いでいました!」
嵐「そうだったんだ!どう?」
絢愛「爽やかー!って感じです!」
虎雅「同じく!いい匂いですね!」
樂「世永ん家より、葉の匂いが強い。」
嵐「おお!みんな急成長!これで2人は夜ご飯食べれるね!たーくんはお父さんの許しが出たらね!」
虎雅「…はい。」
急成長しても3日は食事抜かないといけないのか。
僕たちはしばらくして、部屋に戻る。
少し待っていたら燐香さんも屋根上に来るかと思っていたけど来なかった。
昨日はあの後、夜更かししたのかな…?
みんなでご飯の匂いや、庭にある木や花の匂いをいろいろ嗅いで稽古の時間まで時間を潰す。
いろんな団員さんとすれ違うけれど燐香さんとは会えなかった。
夜また1人で屋根上に行ってみよう。
稽古はまたかくれんぼ。
今回は刹牙はいなく、3人だけだった。
すると樂が大一さんを見つけた。
なんか分かんないけどチクッと男臭いんだって、だから匂いを追えたらしい。
けど、嵐さんは中々見つからなかった。
僕も頑張るが、全くだ。
昨日のように匂いを覚える時間があったけど、まだ嵐さん自身の匂いが分からなかった。
でも、屋敷の中を探していると一つ一つ部屋の匂いが違うことに気づく。
昨日は全然気づかなかったので心の中で驚く。
探している最中、嵐さんの服に付いたお香の匂いと同じ部屋を見つける。
開けるとそこには嵐さんたちの御先祖様と思われるの写真がずらっと並んであり、最近の写真もあった。
新しい写真には、若い男女が4人。
この人たちは、凶妖たちの戦いで亡くなってしまったんだろうか。
すると気になる写真があった。
燐香さんにとても似てる。
燐香さんはショートヘアで、この人はロングヘア。
双子のように瓜二つ。
燐香さんの姉妹だった人だろうか。
もしかして御先祖様以外にもここには並んでいるのかもしれない。
僕は手を合わせて、声をかける。
『貴方達の思いを無駄にしないよう、1日1日大切にします。今この世にいる僕たちがなんとか貴方達の思い描いた未来が訪れるよう頑張ります。』
一礼をして部屋を出る。
夕方頃、嵐さんから出てくる。
大一「虎雅が見つけたら、晩御飯食えたのにな。」
虎雅「そうだったんですか!?」
大一「まあ、また明日に期待だな。」
虎雅「…はい。」
嵐「残念、無念!って事でたーくんはこのスムージーで栄養とってね。」
と、嵐さんからスムージーが入ったボトルを渡される。
嵐「たーくんも食事処に一緒に行く?」
虎雅「いや、もっとお腹空きそうなので、先に部屋に帰っときます。」
絢愛「私、食べていいのかな…。」
大一「絢愛は昨日サボってなかったからいいんだ。」
虎雅「僕もサボってた訳じゃ…」
大一「言い訳するな。まだ2人より感覚が鈍いんだ。少し食べなくても生きてられる。」
絢愛さんには相変わらず甘いなぁ。
僕は4人と別れて、屋根上に行くことにした。




