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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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本能

稽古場に戻ると色々物が置いてある。

また何か始まるのだろうか。


虎雅「お待たせしました!」


嵐「どこいたのー?」


絢愛「屋根の上です!」


嵐「そんなとこに誰もいないよー。」


と笑いながら嵐さんは答える。


虎雅「でも…」


大一「サボってたのか?」


虎雅「いえ!団員の方と少し話を…」


大一「何やってるんだ。話なんかしてる場合じゃないだろ。お前は3日食事抜きだ。」


虎雅「えー!そんなぁ…。」


『そんなことより、風呂は?』


刹牙が僕に話しかけてきたけど、ショックで話せなかった。


嵐「残念、無念ってね!みんな刹牙に負けたって事は常人の鼻ってことだから今から鍛えていくよ。」


嵐さんは瓶に入った同じような形の花を5つ見せてくる。


嵐「この中に二つ、お菓子で作られて花が入ってるからそれを当ててみて。」


ずいっと僕たちの目の前に出される。


それぞれ嗅いでみるがみんな甘い匂いだ。


樂「これと、これは砂糖っぽい。」


樂が二つの瓶を退ける。


嵐「おっ!すごーい!正解!夜はスムージーあげちゃう!」


絢愛「わぁー!なんで分かったの?」


樂「お菓子って言ってたからな。」


虎雅「んーでも分かんなかったなぁ。」


絢愛「私も分からなかった…。」


樂「…2人とも季節の匂いは分かんないのか?」


虎雅「たまによく晴れた時とかいい空気だなって思うけど…。」


絢愛「雨の日はわかる…けど…?」


樂が呆れ顔をする。


嵐「でもたまに匂いを感じれるってことは、その時は鼻がよく利く日だったんだよ。

鼻がよく利く日をだんだんと増やしていくの。自分の体のコンディションを整えると利きやすくなったりするよ。」


大一「あとは、食べ物だな。今後一切乳製品は食べるな、みんな鼻が利きにくくなったからな。

嗅覚には、牡蠣や高野豆腐、レバーが良いという。

食事が出来るようになったらそれを出してもらうようにするからな。」


僕は3日後だからあまり食事のこと話さないでほしいなぁ…。


嵐「今日はここまでにして、みんなそれぞれ色んな匂いを嗅いで嗅覚を鍛えて、嗅鋭敏通出来るようになろう。

出来るようになると、凶妖の匂いの流れがわかるようになるからね。」


絢愛「分かりました!」


虎雅「はい!」


嵐「じゃあ、みんなとりあえず水分はちゃんと取って寝てね。お父さんと私は仕事の話をするからこれで!」


嵐さんは僕たちに手を振りながら大一さんを引っ張っていく。


みんなで部屋に戻り寝る支度をする。


だけど、僕はみんなより遅れをとってる気がする。

絢愛さんは雨の匂いがわかるって言っていたけど、僕は感じたことがない。


僕はこっそり部屋を抜け出してあの屋根の上に向かった。


「お、やってるな。」


後ろから声をかけられる。

燐香さんだ。


虎雅「はい。でも…お腹が減りすぎて匂いどころじゃないです。」


燐香「まあそうだろうよ。一食だとまだ体が空腹に慣れてないからな。」


燐香さんは僕の隣に座った。


虎雅「そうなんですね。でも何か感じてから1日を終わらせたいんです。」


燐香「…、お前は記憶をどう思い出す?」


虎雅「どうって…、頭でこの前の事を思い出して戸棚を開けてくイメージですかね?」


燐香「たまにふと考えずに、記憶を思い出す時ってないか?」


虎雅「…ありますね。あの時は…」


考えながら話す。

ふと思い出す時、何がきっかけで記憶が呼び起こされるのだろうか。


燐香「ふと思い出す時は、どこかしら自分の五感が働いているんだよ。

全ての情報が五感で記憶されてるんだ。だからたまにふと記憶が呼び起こされる。」


虎雅「なる、ほど…。」


燐香「その中でも匂いは、目に見えず、触れないし、音もない。若干味はあるが大体のものは味わうものではない。

どこからともなくやってくるんだ。

だから人は匂いの記憶は濃く残るが印象が全くないから忘れやすい。そして同じ匂いを作り出すのはなかなか難しいものなんだ。

たまたま匂いを嗅いでなぜか懐かしく感じたりすることもあるだろう?」


虎雅「あー…、畳の匂いとか?」


燐香「まあそんなとこだ。畳は昔から日本で親しまれてきた物だから、祖先の記憶で擦り付けられているんだろう。」


虎雅「そんなことあるんですか?」


燐香「ある。類魂るいこんって知ってるか?」


虎雅「るいこん?」


燐香「類魂は過去世から繋がりがある魂たちの事。それらにも匂いがあるんだよ。」


虎雅「魂なのにですか?」


燐香「そうだ。人に会った時良い匂い悪い匂いしたことがないか?」


虎雅「んー、匂いかわからないけど、少し距離置きたいはありますね。なんとなくですが…。」


燐香「そうか…。鈍いやつなんだな。でもあの2人と一緒にいて苦ではないんだろう?」


虎雅「樂と絢愛さんですか?」


燐香「そうだ。」


虎雅「そうですね、一緒にいてあんまり疲れないし、安心出来る2人ですね。」


燐香「そうかそうか。きっとお前が無意識で匂いを嗅ぎ分けてるんだよ。」


虎雅「そうなんですか?」


燐香「ああ、人は本能で人間の良し悪しを嗅ぎ分けるんだよ。自分に近い匂いとそうでない者たち。だから類は友を呼ぶんだ。自然と同じような者たちが集まる。今のイブだってそうだろう?元から凶妖を殺す奴、保護する奴で真っ二つで別れてたからな。」


虎雅「そうだったんですか…。」


燐香「無意識にみんな昔の記憶で嗅ぎ分けてるんだよ。自分の仲間かどうかを。だから匂いを嗅ぎ分けられることはこれから重要なんだよ。昔の仲間が自分のそばにいてくれているのかを見極めるために。」


虎雅「自分がいい匂いだなって思った人は傍にいてもらうってことですか?」


燐香「単純に言うとそうだな。」


虎雅「なるほど…。僕は燐香さんにとっていい匂いですか?」


燐香「…。まあ食べたくなるな。」


虎雅「そんな香ばしい匂いしてますか?」


燐香「まあな。嫌な匂いはしないよ。」


虎雅「良かったです!」


燐香「今日は早く寝て、朝早くまたここに来い。きっと朝の匂いがわかるようになってるはずだ。」


虎雅「本当ですか!?」


燐香「水しか飲んでいないならな。明日の夜は何か食べるのか?」


虎雅「…それが3日ご飯抜きなんです。」


燐香「じゃあ、すぐに匂いがわかるようになる。楽しみに寝て待て。」


虎雅「わかりました!寝ます!」


僕は立ち上がりお尻を叩く。


燐香「おやすみ。」


虎雅「はい!おやすみなさい!燐香さん風邪引かないように気をつけてくださいね!」


燐香「…ありがとう。」


燐香さんに手を振り、自分の部屋に戻って眠りについた。


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