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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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嗅鋭敏通

稽古場に行くと、大一さんと嵐さんが待っていた。

そして災獣園にいるはずの刹牙も一緒にいた。


絢愛「お待たせしました!」


嵐「はーい!大丈夫!みんな風邪ひいてない?大丈夫?」


「「「はい!」」」


嵐「じゃあ、特別稽古の嗅鋭敏通きゅうえいびんつう始めるね!」


嵐さんが大一さんを僕たちの前に立たせる。


嵐「お父さんと私の匂いを覚えて見つけた人は温泉連れていっちゃう!」


絢愛「温泉!?わー!行きたい行きたい!」


虎雅「うぉー!温泉だって!久しぶりだなー!」


樂「対してどこも変わらないだろ。」


嵐「見つけられない2人は、1日ご飯抜き!」


樂「2人?」


嵐「刹牙と君たち4人で探してもらうよ!もちろん別行動だけどね!」


絢愛「わぁ!刹牙いるのか!頑張らないと!」


嵐「はい!じゃあみんな覚えて!」


みんなで思い思い匂いを嗅ぐ。


大一さんはまだ酒臭いけど、一緒に食べて味噌鍋の匂いもついてる。

服の匂いなのかどことなく畳の匂いもついてるような…。


嵐さんは髪の毛からいい匂いがする。

花とは違う…お菓子っぽい甘い匂いがする。

服はお香の匂いっぽい、全体的にまろやかなイメージの匂いだ。


嵐「みんな大丈夫そう?」


「「「はい!」」」


大一「じゃあ30秒したら探しに来い。」


2人はヒュっと消えてしまった。


絢愛さんが数を数え始める。


『ねーちゃんと、風呂。ねーちゃんと、風呂。』


樂「食事抜き…。」


各々の過ごし方をして30秒が数え終わる。


みんなバラバラに向かう。


僕は大一さんを見つけよう。

あの人は嵐さんより匂いが強かった。


廊下を歩くととき、たまに味噌鍋の匂いがする。


確認しながら廊下を進んでいくと団員さんが複数人庭に集まり、みんなで鍛錬していた。


味噌鍋の匂いが強いけど…、大一さんはいない。

あ、もしかして…


虎雅「こんにちは!すみません!皆さん味噌鍋食べましたか!?」


一斉にこちらを見る団員。


「そうだよー。ここでは、怪我人以外みんな同じ物を食べてる。」


虎雅「ありがとうございます!」


「稽古頑張れー。」


虎雅「はい!」


僕は急いで部屋に戻った。

だから味噌鍋の匂いがこっちまで漂ってたんだ。


味噌鍋がダメなら、お酒の匂いで…。


うーん…なかなか見つからないな。

焦りながら、足早に廊下を駆け巡る。


ふわっと匂いが僕を横切る。

まろやかな匂い。


すぐさま角を見ると小さい影が横切るのが見えた。


嵐さんかもしれない。

僕は急いでそっち向かったが、姿も匂いも無くなってしまった。


…急に匂いが途切れるとしたら、上か?


僕は窓から身を乗り出して屋根の上を見る。

姿はないが風が甘い匂いを運ぶ。


この上に蘭さんがいるはず。


僕は屋根に登り、あたりを見渡す。

するとポツンと1人座っている。


虎雅「嵐さん?」


その人が振り返る。

僕たちがあげたひよ子を食べながらのんびりしていた小柄の団員さんだった。


虎雅「休憩中邪魔してすみません!」


「ん、特別稽古中?」


虎雅「はい!」


「ちょっとこっちきて。」


ポンポンと瓦を叩き、座るように促してくる。

いち早く見つけないとご飯抜きになっちゃうんだけどな。


僕はとりあえず座りながら目視でも2人を探した。


「目で見えたらかくれんぼの意味がないだろ?」


虎雅「あ、確かに。」


「私は、燐香りんかよろしく。」


前髪なしのショートボブで、耳に髪の毛をかけていて、その耳はぷくっとした福耳だった。


虎雅「佐伽羅虎雅です。よろしくお願いします。」


燐香「嗅鋭敏通やってるんでしょ?匂いは何覚えたの?」


虎雅「大一さんは味噌鍋とお酒と服に付いてる畳の匂い。嵐さんは髪の毛のお菓子っぽい匂いと服のお香の匂いです。」


燐香「おー。負けたな。」


虎雅「え…。」


燐香「そんな上っ面の匂いだけで見つかるなら、もうとっくに2人とも見つかってるだろうよ。」


虎雅「でも…、それくらいしか匂いが分からなかったんです。」


燐香「まあ、常人であればそうだろうさ。」


ひよ子を片手で持ちながらお茶をすする。


燐香「今日は潔く負けて食事を抜いた方がいい。その方がお前の為になる。」


虎雅「…なんでですか?」


燐香「匂いがない場所なんてこの世にはないだろう?どんな所にもここの寒空の下でも匂いはあるんだ。分かるか?」


僕は匂いを嗅いでみる。

でも鼻が冷たくなるだけで分からない。


虎雅「分かりません。」


燐香「冬独特の匂いがあるんだよ。土の湿りが乾ききったような感じの匂い。これが今分からなければ今日は見つからない。」


虎雅「どうしたら、嗅覚が上がりますか?」


燐香「手っ取り早いのが腹を空かせること。すると鈍っていた本能が活性化して色々鋭くなるんだよ。嗅覚はもちろん視覚、聴覚、味覚、触覚全てな。生き物は生存が危ういと感じている時に能力を発揮しやすくなる。」


そういえば、せいさんもご飯抜いてる時があったな。


燐香「その時の感覚を忘れないように日常で匂いを嗅ぐ癖をつける。

庭の匂いは石の匂いと木が擦れている匂い。

廊下は沢山の人の匂い。

食事処では食材の匂い。

稽古場では使ってる物の匂い。

その場で動かずとも一つ一つの匂いが分かるようになってきたら一つ先の人や生き物の匂いも分かるようになってくる。どんなものでもわずかに匂いは放っているんだよ。」


虎雅「なるほど…。燐香さんは僕の匂いわかりますか?」


燐香「もちろん。味噌鍋とひよ子。少し…酒臭いのとその奥に香ばしい匂いがする。香ばしい匂いはお前の元から出てる。」


虎雅「僕、香ばしいんですか?」


燐香「うん。食べ物で少しずつ匂いは変わっていくから意識して食べ物を選ぶといい。」


よっこいしょと燐香さんは皿と湯のみを重ねながら立ち上がる。


燐香「じゃあ明日まで飯抜き頑張れよ。」


と言って、スッと消えてしまった。

燐香さんも臓方や腹方に近い存在なのだろうか。


僕も立ち上がり、屋敷の中に戻ろうとすると、


絢愛「いたいた!もうかくれんぼ終わったよー!」


絢愛さんが刹牙を抱きかかえて僕に手を振る。


虎雅「誰が見つけたんですか?」


絢愛「刹牙が2人とも見つけちゃったみたい!」


そういうこともあるのか。

僕は庭に降りて絢愛さんたちの元へ駆け寄る。


『俺が2人見つけたから、もう1人のご褒美の人は選べるよな。』


虎雅「それは分かんない。」


『そうじゃなかったら、俺がいる意味ないだろう。』


虎雅「とりあえず、嵐さんに聞いてみよう。」


みんなで一緒に稽古場に戻った。


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