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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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気遣い

久しぶりに朝が明けた後に起きた。

時計をみると9時、もう昼になりかけだ。


みんなの肩を揺すり起こす。


樂も絢愛さんもあまり慣れない旅行に疲れていたのか目覚めがいつもより悪かった。


絢愛「んー!よく寝た!おはよう!」


樂「…加齢臭、大丈夫か?」


僕に服を嗅がせてくる。


虎雅「おはようございます!…大丈夫だよ、大一さん酒臭いだけで加齢臭しないよ。」


樂「ならいいけど…。」


と言い、樂は服を着替え始めた。


大一「…あだま、いでぇ。」


大一さんが頭を抱えながら起き上がる。


絢愛「おはようございます!脚借りました!」


大一「おう、よく寝れたみたいで良かった。」


絢愛「はい!」


布団を畳んで大一さんに食事処に連れて行ってもらう。


北海道にいる向日さんの屋敷よりは小さいが、廊下には骨董品や絵画が色んな所に飾られていて見ていて楽しい屋敷だ。


「お早う御座います。ただ今お持ちするのであちらの席でお待ちください。」


と、ご飯を作ってる人に促されて掘り炬燵の席に座る。


絢愛「暖かいね!」


虎雅「そうですね!掘り炬燵、久しぶりに入りました。」


大一「最近は掘り炬燵の家はあまりないのか。」


炬燵の話で盛り上がっていると食事を持ってきてくれた。


「「「「いただきます。」」」」


味噌煮込みの鍋が出される。

野菜がたっぷりで食べ応えがあり、体がポカポカになる。


嵐「おはよー!」


嵐さんが来た。


絢愛・虎雅「おはようございます!」


大一「おはよう。」


樂「…(ペコッ)」


嵐「部屋準備してたらみんなで寝てたから驚いたよー!可愛くて写真撮っちゃった!」


嵐さんが写真を見せてくれる。


絢愛「わー!寝顔恥ずかしいです!」


嵐「絢愛ちゃんが一番可愛いよ!お父さんさんの脚にしがみついてるとこなんか100万点!」


ガールズトークが始まる。


僕たちはその様子を横目で見ながら黙々とご飯を食べ進めた。


絢愛「あ!そうだ!お土産持ってきますね!」


絢愛さんはさっきいた部屋に走って行った。


嵐「お父さん、絢愛ちゃんどう?」


大一「今年少し遅いと思ったら、向日の所に行ったらしい。…また忘れてるみたいだな。」


嵐「そっかぁ…。ちょっと寂しいね。」


虎雅「でもちゃんとノートに思い出録ってますよ。」


僕は思わず口を出してしまう。


嵐「そうなの?」


虎雅「はい。だから大丈夫です。またいつか見返して思い出します。」


嵐「そっか!良かった!」


嵐さんが僕の隣に座る。


樂「忘れることは誰にだってあるんだから、腫れ物みたいに扱うなよ。」


和んだ空気がピシッと固まる。


樂「絢愛もどこか気ぃ使われてるのが分かってんだ。だからあのカラ元気で笑顔作ってんだろ。あいつが何か忘れたとしても人間として当たり前だ。変な間、入れて喋んな。その時、絢愛の表情が固まってるの分からないのか?」


樂はそれを言い終わると鍋を食べ始めた。


嵐「しゅん…。がっくんは気づいてたんだ。私は気づけなかったな…。」


机に顔を突っ伏して落ち込む嵐さん。

大一さんは俯いて体は微動だにせず固まっている。


樂は気づいてたから、普段通りのありのままの樂で絢愛さんと接してきたのか。

僕はノートのことを聞いてから、絢愛さんに変に気を使ったりしていたのかもしれないな。

それで絢愛さんを傷つけているんだとしたら、この気遣いは余計なものなんだろうな。


絢愛「はぁー!お待たせしました!」


3人で絢愛さんを見る。

絢愛さんはいつも通り笑顔で、嵐さんのお土産を持ってきた。


嵐「ありがとう!鍋食べ終わったらみんなで一つずつ食べよっか!」


絢愛「えー!いいんですか!ありがとうございます


大一「俺もいいのか?団員たちの分、無くならないか?」


嵐「大丈夫。お父さんには黙ってたけど団員少し減ったんだよね。」


大一「あ?」


嵐「たーくんがあの日、団員ほとんど辞めさせたことを聞いてうちも思い切って辞めさせたの。

保護率も関東に続いて悪かったから、やるしかないと思って…。」


大一「…まあ、今は嵐がここの臓方だからお前がそう思うならやっていいと思う。

だが、その分力が衰えるから更に厳しいことになるぞ。」


嵐「うん。今残ってるみんな傷まみれの泥まみれでも頑張ってくれてる。仕事後も稽古してほしいって来るんだ。だけど…、んー…やっぱり…」


嵐さんが口籠もる。


大一「新人の虎雅の一言で辞めるような軟弱な人材は居てもこの世を変える力はないだろう。

今はここに残ってくれている人たちの思いを一つにまとめてから、また人を集めて思いが伝染していけばいい。

その思いは前向きなものだから伝染しにくいが、した時は多くの人を動かしてくれる。

だから今はその短い脚で踏ん張って耐えろ。辛いなら人の力を貸してもらえ。

この今の災いは1人の力ではどうにもならないんだ。だから先祖様がこの団を作ってくださった。

それを忘れるな。」


嵐「…はい。」


絢愛「私達は仲間です!辛くてもこの世を変えるためにここで働いてます!

最近辞めてしまった人も少し時間を置けば理解して戻ってきてくれるかもしれません!

心が死ななければ肉体は死んでも生き続けます!

悪い例ですが凶妖がその証拠です!

だから心を殺さないでください!」


嵐「…うん、死なない。殺さない。」


嵐さんの目が潤む。


虎雅「人が足りないなら他の所から呼べばいいですよ。僕も樂と飛んでいきます。」


樂「なんで俺?」


虎雅「まだ飛ぶの習得出来てないんだもん。」


樂「さっさと出来るようになれ。」


嵐「確かに…そうする!ごうに相談してみる!」


ありがとう!と声を張り上げて、嵐さんはどこかに走って行った。


絢愛「豪さんと大一さんは今年会いましたか?」


大一「いいや、まあ華宮家の正月の集まりの時に一度会ってるか。」


絢愛「え!そうですか…。」


虎雅「豪さんはどちらの臓方ですか?」


絢愛「福岡だよ!豪さんと嵐さんは姉弟なんだ!」


虎雅「あー、だから相談しやすいんですね。」


大一「まあ、あの2人は仲良いからな。」


虎雅「大一さんとはあまり仲が良くないんですか…?」


大一さんの顔が曇り始める。


大一「まあな、嫌われるようなことを生まれる前にしてしまったから仕方がない。」


虎雅「…?」


絢愛「…?」


大一「まあ、そういう仲ってことだ。」


絢愛「せっかく家族が生きてるのに会わないなんてもったいないなぁ…。」


ボソっと絢愛さんが言う。


大一「あいつは俺のことを父親とは認識してないからいいんだ。豪の生き方をあまり否定しないでやってくれ。」


絢愛「いえ!すみません!勝手なこと言ってしまって!」


大一「それでいい。絢愛はそのままでいてほしい、自分自身を忘れるなよ。」


絢愛「はい!」


絢愛さんの頭を撫でる大一さん。


しばらくして嵐さんが嬉しそうに帰ってきて、

一緒にひよ子を口に咥えてみんなで写真を撮った。


樂の一言で絢愛さんに対してのシコリが取れたのかみんなが自然体のような感じがする。


ご飯を食べ終わって、稽古場に向かう準備を始めた。


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