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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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永永無窮

ジューっとソースと出汁が焼ける、いい匂いが部屋中に広まる。


絢愛「チーズドバドバにしますか!?」


大一「ああ、でももう少し…っておい!」


絢愛さんがチーズを入れ始める。


絢愛「え!?」


大一「まあ、絢愛はせっかちだからな。」


大一さんは、孫のように絢愛さんの頭を撫でる。


大一「今年は関東大解体したんだってな。世永の泣き顔が見たかったなぁ。」


と、真顔で大一さんは話し始めた。


虎雅「僕のせいです。すみません。」


大一「お前か、名前は?」


虎雅「佐伽羅 虎雅です。」


大一「虎雅か。これから忙しくなる、気ぃ引きしめろ。そこのむっすりの助の名前は?」


樂「梵唄 樂です。」


大一「…ああ、世永から聞いた事ある名だな。話を聞かねぇって相談受けたな。」


樂「俺、話聞けますよ。」


大一「耳から耳に通り抜けてるんだろ。ちゃんと人と対話できるようにならないと、数珠丸みたいに晩婚だぞ。」


樂「…?」


話が急に数珠丸さんに飛び、頭が少しパニックになる。


しかし、大一さんは今まで見てきた臓方の中で

ドシッとしてる感が強い。

元ではあるけど、きっとたくさん活躍していたんだろうな。


絢愛「あー、お腹鳴りますね!」


大一「もう少し待て。カリカリになると美味いんだ。」


絢愛「わかりました!」


大一さんは火を調節しながら生地を弄る。


大一「今年は少し遅かったな。どうしたんだ?」


絢愛「先に向日さんのとこに行ってきたんです!」


大一「…なるほどな。見透極通は出来るようになったか?」


絢愛「ちょこっとです!」


大一「一気になんでも出来たら、俺らのこの仕事もこの世の中も時間をかけないで変われるはずだからな。どんなことでも地道に…、こうやってもんじゃが美味しく出来上がるまでの時間のように少し苦労しねぇといけねぇんだよな。」


大一さんがもんじゃの裏を確かめてひっくり返す。

パリパリだ。


絢愛「パリパリだぁ…!」


大一「今ひっくり返した側もパリパリするから待ってろ。」


絢愛「はい!」


大一さんはパリパリ派なんだな。

きっとせんべいもガリガリ言う奴食べてるんだろうな。


大一「お前たちは、いつもなにをして過ごしてる?」


急な話の路線変更。


絢愛「私は、稽古とノートとご飯ですかね!」


虎雅「僕は、稽古と仕事と…本です。」


最近は家に帰ってもみんな寝ているから、朝しか起きてるみんなに会えてないんだよなー。


樂「俺は、稽古、仕事、睡眠。」


大一「稽古…か。お前らにとって人生ってなんだ?」


まさかの哲学な質問に困惑する。

みんな黙りこんで答えられない。


大一「刻々と進む時計の針を見ろ。あいつらはなにも感情がなく時を進めることしか出来ない。永永無窮(えいえいむきゅう)って奴だ。

だけど、俺たちには死が確実に待ってるだろ?

だから、神はその枷を生き物につける代わり、感情という不思議なものを与えてくれた。」


大一さんはパリパリになったもんじゃを僕たちの皿に盛り付けてくれる。


大一「だから、このもんじゃが美味しいと感じられるし、こうやって毎年、新人や腹方、絢愛に会えて嬉しいと思える。」


絢愛「私も大一さんに会えて嬉しいです!」


大一「おう、よかったよかった。」


絢愛さんの頭を撫でながら少し笑みが溢れる大一さん。


大一「自我穿通をした時、終わった後、きっと心が疲れることがこの先もっと多くなるだろう。けどな、感情は捨てられないんだ。生き物だからな。」


大一さんは熱燗を呑み喉を潤す。


大一「だからこそ、今こうして親しい人間と親しい生き物と過ごせる時間を大切にするんだ。喧嘩しても仲直りしなくてもいい。一緒に傍にいることが大事だ。

時間は巻き戻れない。だから時間を無駄にするな。

稽古も仕事もお前たちにしか出来ない事ではあるが、自分自身の人生を見失うな。

1人でいると見失いやすい、だから親しい仲間と一緒にいることが大事だ。わかったか、ボンの助。」


樂「…はい。」


ちょっと嫌そうな顔をしていたが、

樂はしっかり大一さんの目を見て話を聞いていた。


大一「2人も大事な人がいるなら傍にいろ。守りたいなら、そいつを1人にするな。」


虎雅「はい!」


絢愛「大好きなみんなを1人にはさせないです!」


大一「…話がちゃんと聞ける新人でよかったよかった。」


大一さんが満面の笑みになる。

大一さんは次のもんじゃを作り始めた。


大一「お前ら次はどこ行くんだ?」


絢愛「えーと…、お菓子のひよ子を先に渡したいのでらんさんのところです!」


大一「嵐の屋敷か。高知くらいなら俺が連れて行こう。」


虎雅「いいんですか!」


大一「ああ、あいつは俺の娘だからな。時々会いに行くんだ。」


樂「…結婚してたんですね。」


大一「あ?俺が独身に見えたか?」


樂「まあ…。」


大一「ボンの助。そういう世永みたいなところは似なくていいんだぞ。」


樂「これが俺なんで。」


大一「2世が誕生したな。ボンの助は静かだからまだ話していても頭が痛くならない。」


樂「そのボンの助ってやつなんとかなりませんか?」


樂が大一さんと言い合いになる。

最終的に腕相撲で樂が負けてボンの助のままになった。


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