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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
道府県参り
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絢愛のノート

3人とも目を閉じ数秒で数人の気配を分かるようになった。


向日「今年の子は吸収が早いねー。若いって素晴らしいね!」


絢愛「ありがとうございます!」


虎雅「ありがとうございます!」


樂「これで向日さんの特別稽古は終わり?」


向日「うん!そうだよ。あーん、みんなとお別れ寂しいよー!」


3人を一斉に抱きつく向日さん。

短い時間ではあったけどずっと一緒にいたのですごく長い知り合いのような感じがする。


絢愛「私も寂しいです!」


向日「また来年も来てね!」


絢愛「はい!ぜひ!」


特別稽古を終えて部屋で荷造りをして、

早く終わった樂は刹牙を引き取りに行った。


絢愛さんは何かノートに書いている。


虎雅「なに書いてるんですか?」


絢愛「向日さん、タカさん、ここの団員の皆さんの名前とやりとりを今日分まとめてるの。」


虎雅「稽古のこととかですか?」


絢愛「ううん。向日さんがさっき来年も来てねって言ってくれたことや、タカさんとお昼ご飯食べた時に来年持ってくお土産について話したこととか書いてるの。」


虎雅「…。なんでそんなに細かく書くんですか?」


絢愛「覚えてられないの。」


覚えてられない…?

元から忘れっぽい感じだったけど結構重症なのかな?


絢愛「本当は道府県参りって、新人の人や腹方が行って特別稽古を学んでさらにレベルアップすためにあるんだけど、どんどん忘れちゃうんだ。」


虎雅「稽古のことはなんで書かないんですか?」


絢愛「こうやって紙に書いて残すこと自体禁止されてるの。直に教わって体で習う決まりなの。」


そうだったんだ。

もともと日記やメモをとる習慣がなかったので

半年近く知らないまま過ごしてた。


虎雅「絢愛さんは忘れっぽいからメモをとるようにしてたんですね。」


絢愛「…忘れっぽくなったが正解かな。虎雅たちの自我穿通は感情でしょ?私みたいにお腹を噛まれた人は体のどこかの部分の動きを止めることで自我穿通が出来るの。私は瞬きと呼吸なんだ。」


だからあの時ずっと目が開きっぱなしだったのか。


絢愛「でも虎雅たちみたいに心を傷つける代償があるように、私たちにも代償があってそれが記憶の欠如なんだよね。」


虎雅「だから…」


絢愛「うん。だからこうやって今の記憶を書き留めて置くの。力を使う分記憶がなくなるけど…。」


虎雅「僕の時は…?」


絢愛「あのくらいだったら、あの日の虎雅のパンツの色を忘れるくらい。でも凶妖だともっと力を使うからこうやって虎雅に話していた時間さえ忘れるの。」


絢愛さんはカバンから違う分厚いノートを出して中を見せてくれる。

せいさんや樂、刹牙、(かしら)、団員の写真と名前や特徴とやりとりがびっしり書いてある。


絢愛「絶対忘れたくない人たちをここに記してるの。ほら虎雅もこの間いれたんだ。」


僕の写真と名前、やりとりが少し書かれている。


絢愛「これを戦闘後見て、誰か忘れた人がいないか確認するの。もし忘れていたら他のノートも読み込むの。」


パラっとめくると男性と女性。

お父さんとお母さんと書いてある。


絢愛「もうね、この2人との記憶はないの。このノートをとり始める前に名前忘れちゃったから名前が書けてないんだ。」


いつも元気で目を光らせている絢愛さんだったが

今は声量が落ち、元気がない様子。


絢愛「胴体を噛まれた人は、大体の人が災獣園か救護班になるんだけど、私はどうしても自分の手でなんとかしたいと思ったから今こうして戦ってる。思い出を大切にしたい人たちのためにも私は剣を奮う。私の一振りがこの災いを止めることが出来るならやるしかないって思うの。」


絢愛さんは少し俯いていた顔を勢いよくあげる。


絢愛「早くこの悪循環を止めて、みんなが何もしなくても笑顔で過ごせる平和な未来を手に入れるんだ!私の過去はどんどんなくなってしまうけど、未来があるから私は戦える!だからこの災いが収まったらたくさん思い出作るんだ!虎雅ともたくさん思い出作りたい!」


虎雅「…はい!みんなのためにも、絢愛さんのためにも僕が今以上に強くなってこの悪循環を止められるように頑張ります!その時は絢愛さん、たくさん遊んでください!」


絢愛「ありがとう!未来がさらに楽しみになったよ!」


虎雅「僕もです!」


絢愛さんはとても明るい笑顔で僕に笑いかける。


強くなってもこの災いの悪循環がなくならない限り、戦い続けなきゃいけない。

僕たちが一丸となってこの世を変えるんだ。


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