雷乃収声
〔自然災害と妖〕は見た目がちゃんとした本ではあったが、中身は手書きでミミズがのたうち回ったような字でなにが書いてあるかわからない。
日本語であるのはなんとなく漢字やひらがなっぽい文字を見てわかるが、内容は全く分からなかった。
癖が強い人がだいぶ昔に書いたのだろうか。
しかし本の見た目は新品同様。そこが不思議だ。
中の文字だけが歴史を語っている。
ペラペラとめくっていくが同じような文字ばかりでなにも新しい情報は得られなかったけれど、挿絵には干支に出てくる動物が円になって描かれていたり、
凶悪そうな顔の動物が描かれていた。
絵も同じ時代に書かれたのか歴史の教科書の中盤に出てきそうな感じだった。
「うーん、内容はあんまわからないなぁ。」
思わず声に出る。
ペラっとめくると今の時代の字で
『一回のお勤めにつき確定で10万円、差し上げます。謝礼は出来高制です。』
と書いてあった。
これをきっかけに入る人もいるのだろう。
「「「ただいまー。」」」
3人が帰ってきた。
彩晴と翔馬がいつも通り優太を連れて帰ってきた。
虎雅「お帰り。」
彩晴「あれ?虎雅にいちゃんいるじゃん!ただいま!」
虎雅「うん、今日は早めに学校終わったんだ。」
翔馬「やったー!たいがにぃあそぼ!」
優太「あそぶ!」
虎雅「いいよー。何したい?」
翔馬「みずてっぽう!」
そろそろ寒くなってできなくなるからな。
今日で、もしかしたら遊べる時間をとってあげられないかもしれないから、リクエストに答えることにした。
4人で夕暮れまで遊んでびしょびしょになった頃、
真司がちょうど帰ってきた。
真司「ただいま…って、みんなどうやって家に上がんの?」
「「「「あ…。」」」」
遊ぶのに夢中で、僕らはタオルを用意するのを忘れていた。
真司が悪態をつきながら先に家に上がり、
タオルを持ってきてくれた。
いつもツンツンしているがなんだかんだ優しい。
3人先に風呂に入ってもらい、昼に作った餃子を焼いて夜ご飯の支度をする。
真司「今日早く学校終わったの?」
虎雅「うん。そうだよ。」
真司「嘘つくなよ。帰り道で虎雅にぃの制服の人とたくさんすれ違ったよ。どっか体調悪いんじゃないのか?」
あ、どうしようか。
…仕事増やすってことにしておくか。
虎雅「体は元気だよ!新しくまたバイト増やすことにしたんだ。だからちょっと早めに今日は帰れたんだ。」
真司「そうなの?…働きすぎで倒れないように気をつけてよ。」
虎雅「ありがとう。たまにいつもより遅くなるかもしれないけど、起きてないで寝ちゃってね。」
真司「え?高校生って22時までじゃないの?」
虎雅「そうだけど、ちょっと遠いところで時給高いところ見つけたんだ。」
真司「あーそういうことね。まあ無理しないで。」
虎雅「うん。真司もね。」
真司「はーい。」
話が終わったちょうど3人とも風呂から上がってきた。
彩晴「うはぁー、腹減ったー。」
翔馬「ぎょうざのにおいする!」
優太「ぎょっざ!」
みんなが好きなぎょうざ。
今日でしばらくはみんなと一緒にご飯できないかと思うと寂しい。
やることやって即帰宅!
それをモットーにしてやっていこう。
・
・
・
僕はそんなふうに軽々しく思っていた。
だけど明日の昼、樂に連れられていった場所で話を聞いてからこんなことを思っていたことを後悔した。
そんな生半可な心でやっていたら死ぬ。
それがわかっていなかった僕は大馬鹿ものだ。