特別稽古
[ガァン!ガァン!ガァン!]
とてつもなくうるさい鐘の音で目が覚める。
樂「なんだ?」
絢愛「目覚ましだよ!」
樂「…4:30か。なるほどな。」
少しすると鐘は鳴り止んだ。
みんな朝の支度を軽くすませて、タカさんの案内で食堂に向かい朝ごはんを食べる。
向日さんの屋敷は、団員になった人みんなが住んでいるらしく、みんな屋敷の中で役割を果たしている。
「ありがとうございます!」
食器を戻して特別稽古の準備をする。
僕は団服に着替えて、刀と銃を装備して
形見の指輪を首にかけて服の内側にしまう。
僕の封印箱はこの指輪。
父さんが母さんにプロポーズの時にあげた指輪。
濁流で母さんの手が離れた時、僕の中に残った唯一の形見。
たくさんの思い出が詰まってるほど封印箱は強化するらしい。
そこらへんの石ころでも封印はできるけど、壊れやすいとせいさんが教えてくれた。
みんなそれぞれ持ち物を持っているが、
絢愛さんは手ぶら…?のように見える。
全てポケットに収まるものなのだろうか?
タカさんにまた案内されていった場所はとても大きい体育館のような場所。
壁がなく、外の外気がそのまま僕たちの肌を刺す。
「おまたせー。」
ひらひらと手を振りながらこちらに来る向日さん。
向日さんは僕たちとはまた別の団服のようだ。
臓方は特注の団服なんだろう。
にしても丈が短い。
羽織よりスカートの丈の方が短いことってあるのだろうか。
靴は花魁が履いていたような厚底下駄に、そのまま僕たちの皮靴のように口部分が太ももまである。
歩きにくくないのかな…?
絢愛「美脚ですね!何かしてるんですか?」
向日「毎日マッサージでむくみとってるよ。」
絢愛「なるほど!」
絢愛さんはメモを取る。
向日「2人は何をいつも使ってるの?」
樂「俺はマイク。」
虎雅「僕は銃と刀です。」
向日「どう?使いやすい?」
樂「網貼るのがめんどいです。」
虎雅「持ち歩くとドキドキして心臓に悪いです。」
向日「なるほどねー。」
向日さんは倉庫のような場所に行き、なにか物をあさり始める。
しばらくして何か持ってやってきた。
向日「ぽんちゃんはこれね。」
樂に鉄のマスクのようなものを渡す。
向日「これを顔につけてそのまま声に出せば、元の30倍の音が広がるようになってるから。」
向日さんは樂の首に固そうな鉄のマスクをつけた。
樂「ありがとうございます。」
向日「でも囲んだ方がいい時は、元のマイク使った方がいいね。」
樂「はい。」
向日「とらちゃんのはね、とらちゃん自身の自我穿通が上手くいってるかどうか見てからにする。」
虎雅「はい…?」
向日「じゃあ、相手はげんちゃんね。時間はぽんちゃんが2人の行動を止めるまで。まあ…5分以内かな?」
樂「甘く見ないでください。」
向日「もうちょっと早いか。この布を傷つけられても終わりね。」
僕と絢愛さんの胸からお腹にかけて大きめの布を貼り付ける。
虎雅「持ってる武器を使うんですか?」
向日「うん。殺す気で行かないと、とらちゃんは負けるよ。」
絢愛「来い来ーい!手加減なしで頑張ろう!」
虎雅「はい!」
絢愛さんはポケットから小さい箱を取り出して
つまようじサイズの鋭そうな針を一本手に摘み、それを空高く投げた。
くるくると回りながらその針はどんどん大きくなって絢愛さんの手に触れる頃には、
絢愛さんと同じくらいの長さのある太い剣になった。
向日「あれが出来るようになったら、持ち歩き便利でしょ。勝ったご褒美であの細工と私のキスをプレゼント♡」
虎雅「…頑張ります。」
あの細工は是非してほしい。
家には危なくて持って帰れていなかった。
それを取りに行く時間が惜しい時もあった。
だから絶対、絢愛さんに勝たないと。
向日「げんちゃんには私の使ってる美容製品3ヶ月分あげちゃう。」
絢愛「よし!勝つ!」
絢愛さんの目はもう瞬きを止めている。
僕の動き一つ逃さないようにしているのか。
自分自身への怒りを高める。
刀を抜き手を指輪がある胸に手を当てる。
母さん、父さん。おじさん、おばさん。
今までの出来事で自分の不甲斐なさで出来なかったことを思い起こす。
虎雅「ふぅ…。お願いします。」
体が怒りで熱くなってお腹の奥の方が煮えたぎり震える。
向日「よーし、じゃあぽんちゃんが唱え始めたら開始ね。」
向日さんは階段に座り脚を組んで見ている。
樂はもらったマスクを早速装着し、息を吸う。
樂「…ッスゥ。」
絢愛さんとのご褒美争奪戦が始まった。




