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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
各々の思惑
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鈍感のドン

あの刹雅との話から数ヶ月立つ。


30人近く残った団員は、この仕事が忙しくなって屋敷に住むようになった。

そのほうが効率いいからな。


樂は僕たちの家に泊まっている。


(かしら)の稽古のお陰で僕たちはあの時より俊敏に動けるようになって、

動物たちの保護率も格段に上がっている。


もちろん殺す人がいなくなったことも関係してるだろう。


僕は樂と指令に向かうことが多くなった。

樂が動物たちの足止めをして、僕が出来るだけ早く封印する。

出来なければ樂の唄で封印してもらう。


自分の命を守るための銃と刀は持っているけど

なるべく使わない戦闘の仕方を考える。


それでもまだ僕は弱いから、たまに凶妖の体を傷つけてしまうことがある。

申し訳ない。もっと強くならないと。


凶妖の動きが見えたら、鐘が鳴るのでそれに応じて向かう。

けどあの大猫以来、睡蓮の絵を使っている凶妖を見ていない。


そういえばあの大猫の時はせいさんも動いていなかったし、鐘も鳴っていなかった。

それはどういうことなんだろう。


虎雅「ねぇ、樂。」


樂「なんだ?」


虎雅「鐘を鳴らしてくれる人って、どうやって凶妖の存在を知るの?」


樂「鐘を鳴らしてくれる人たちは、凶妖に目を潰された人たちだ。俺たちのように目が見えなくても凶妖の妖気みたいなものが見えるらしい。それで大体の位置を把握して動けてる。」


虎雅「そっか。」


見えるのが妖気だけって…、とても切なくなった。


あれから関東の凶妖のいたずらは最小限に抑えられていて、大きいものがない。

あの大猫のようにうまく姿を隠しているものがいるのならまだ多くの凶妖がいることになる。

それだけ人間は敵を作ってるんだな。


樂「今日は磨馬家に行って道具の整備するんだろ?」


虎雅「うん。久し振りに数珠丸さんに会いにいく。」


樂「俺は(かしら)たちとまた稽古してるから戻ったら教えろ。」


虎雅「わかった。」


と言って、僕はせいさんに教わった数珠丸さんの家に向かう。

樂は屋敷に戻った。

近くまで移動してきてもらったけど…んー?


「出てけ!」


大声が聞こえる。

この酒灼け声は数珠丸さんだ!

僕は声がする方に走った。


すると、玄関から人が投げ出される。


僕は思わず隠れる。


「なんでだ!お前が元々作ってくれただろう!?」


数珠丸「俺は世永たちの仲間だ。お前はあそこから出たんだろう?なぜ刀が必要なんだ。」


「自分たちで…いやもういい。帰る。」


と言って、投げ出された人はそそくさと帰っていった。


僕は数珠丸さんに駆け寄る。


虎雅「数珠丸さん、あの人って…。」


数珠丸「あいつはお前が追い出した団員の1人だ。…ったく、どいつも頭がいかれてやがる。」


数珠丸さんはブツブツと小言を言いながら中に入っていった。

僕はそのまま部屋に入り数珠丸さんの部屋に行くと刀が数本、畳に刺さっていた。


虎雅「大丈夫ですか!?」


数珠丸「あ?これはあいつから回収した。俺の刀で悪さするのは許さん。」


虎雅「なんで、あの人ここに来たんですか?」


数珠丸「何度か他の奴も来たんだ。また武器を作って欲しいってな。でもまともに理由を話さないから断ってる。何がしたいのか分からんな。」


虎雅「あの、それってせいさんに言いましたか?」


数珠丸「文通は苦手だから今度の年賀ハガキでも書いとこうかと思ってる。」


虎雅「今!今言わないと!なんか変だと思わないんですか!?」


数珠丸「変?俺は、まともな話が出来ない奴がここに来ることが苛立ってしょうがない。そのことを書くんだ。」


虎雅「…だから、奥さんが何度も愛想つかすんです。ちょっと屋敷来てください!」


数珠丸さんの太い腕を掴み立ち上がらせようとする。


数珠丸「なんのことだ。俺のマキとこれは何も関係ないだろうが。」


数珠丸さんは声を荒げて僕の腕を振り払おうとするが僕は力づくて屋敷に連れて行こうとする。

2人で正反対の方向に引っ張っていると、

障子が開いて奥さんのマキさんがお茶を持って入ってきた。


マキ「あれ!さっきとまた別の…虎雅くん!お久しぶり!」


虎雅「おひ…さしぶりです!」


僕は数珠丸さんを引っ張りながら挨拶する。


マキ「なになに?新しい腕相撲か何か?2人とも頑張れー!」


数珠丸「違う!こいつがあの獣臭い屋敷に連れてこうとするんだ。」


マキ「あらら、虎雅くんなにか急ぎの用事?」


虎雅「激急ぎ案件です!数珠丸さんがこの刀の持ち主のこと、まだせいさんに伝えてないんです!」


マキ「あ、さっきのイブ辞めた人?」


虎雅「そうです!嫌な感じしませんか!?」


数珠丸「しねぇよな?」


マキ「まるちゃん!そんな大事なこと永ちゃんに黙ってたの!?さっさと行きなさい!」


マキさんは僕と数珠丸さんの腕を掴み、

せいさんが移動するときに使う言葉を唱える。

マキさんも出来たのか。


数珠丸「やめろ!」


ぐるっと風景がねじり曲がり、ズシャ…といつもの石庭の上につく。


数珠丸「う…ウェ…。」


虎雅「大丈夫ですか!?」


数珠丸がゲロってしまった。

精度は樂並のものだったらしい。


マキ「イブのこと大切に思ってるんならなんでそれ早く言わないの!ほんと鈍感すぎる!私、バケツに水持ってくる!」


マキさんは怒りながら井戸の方に向かっていった。


数珠丸「お前のせいで…、また…ケンカだ。」


虎雅「…。すみません!でも重要だと思うんで!せいさんに伝えてください!」


「ぇ…ちょっと、ちょっと、ちょっと!」


せいさんが屋敷の縁側からこちらを見て声を上げる。


世永「虎雅の声聞こえると思ったら…、まるちゃん俺の石庭でなんで吐いてるの!?」


虎雅「すみません!僕掃除するんで、数珠丸さんとお話ししてください!」


世永「え?なんで?またケンカ?」


虎雅「それもそうなんですけど。また別件の多分重要案件です。」


世永「…?わかった。じゃあまるちゃん行こー。」


そう言って、せいさんは数珠丸の体を引っ張って屋敷に連れ込んで行った。


マキ「あ、まるちゃんは?」


虎雅「中の屋敷にせいさんと入りました。マキさんも何かこの事で知ってることがあれば、世永さんに伝えてもらってもいいですか?多分、数珠丸さんの言葉だけだと足らないと思うので…。」


マキ「わかった!あ。」


虎雅「ここは僕がやっときます!」


マキ「ごめんね!今度おかきあげるね!よろしく!」


と言って、マキさんは屋敷の中に入っていった。


僕が今日行ってなかったら正月まであのこと言わなかったのかな。

本当鈍感すぎて大変な人だ。


後で僕も話に入れてもらおう。


僕はその場の掃除を急いでやり終え屋敷に向かった。


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