慰撫団
朝になってみんなを見送ったあと、
せいさんの屋敷に行き、寝ることにした。
すると、玄関には沢山の団服の靴が転がっていた。
「珍しいな。大体の人間が集まってるんじゃないか?」
樂はポポンと靴を脱ぎ散らかして中へ走っていってしまった。
僕もお土産のたい焼きを持ちながらついていく。
人の声が大きくなってきた。
なんだ?言い合いしてるのか?
樂はなんのためらいもなく襖を開けると、
100人以上の団服を来た人間がせいさんと刹牙を囲んでなにか話してる様子。
世永「うわぁーん、虎雅遅いよー。」
せいさんが嘘泣きしながら僕に助けを求める。
たくさんの人の中を縫って通る。
樂「お前、臓方のツラじゃねーぞ。」
世永「だって、頭も刹牙の話を聞いて血相変えたと思ったら途中で話終わるし、みんなは質問責めで俺が思ってることも質問してくるし訳分かんないよ!」
泣き顔で怒るせいさん。
多分みんな慣れすぎてそれに無関心だ。
「だから!睡蓮の花を使った軍隊がいるってなんなんだよ!」
「人間を滅亡させるってどういう意味なんだ!」
ワーワーとみんながみんな思ってることを口に出し、早く質問に答えろ!と責め立てる。
虎雅「どういうことですか?」
世永「俺も刹牙→姉ちゃんて感じで聞いたからちゃんと分かってないんだよ。もう刹牙に聞いて!」
刹牙を僕の胸に押し付けられたので、抱き上げる。
虎雅「刹牙、僕にもう一回話してくれない?」
『話すが…、それよりこの喚き散らしてるこいつらを黙らせろ。うるさすぎて頭痛がさっきから止まらないんだ…。』
だからさっきまで黙って元気なさそうにしてたのか。
刹牙の両耳を一旦押さえる。
虎雅「みなさん!一旦黙ってください!情報源の刹牙があなたたちの声がうるさくて、頭痛がさっきから止まらないそうです!
僕が全て包み隠さず伝達するので黙ってください!」
「凶妖なんか、ただの死に損ないだろ!そんな奴の話を鵜呑みにして俺たちを呼んだのか!」
「その凶妖が人を騙すために、嘘をついていたらどうしてくれるの!?」
「私たちの大切な人を殺した仲間のことなんか信用しない!」
そうだ、そうだとみんながさらに大声で反論する。
刹牙が苦しんでる声も聞こえてくる。
刹牙はいたずら好きで、女好きだけど…、
ジャーキー目的のためだったかもしれないけど
優太を助けるために一緒に頑張ってくれたんだ。
僕は仲間として人助けをしてくれたって勝手に思ってるけど合ってるよね?
人間が使う道具をなんとか頑張って使って、
せいさんに注意されたときも素直にごめんって言ってたんだよ。
みんな凶妖と言ってるけどこの子の名前は刹牙だ。
人間にもらった名前を今も大切使っている。
刹牙の過去は知らないけれど、きっと人間が好きな子なんだ。
言葉だって理解してる。
だから、凶妖という大きなくくりで見るな。
刹牙はわざわざ嘘をつくためにこんなところに潜入したりしない。
あの大猫との関わりはないと言ってたんだ。
樂「お前ら!黙れ!何言ってっか…」
「腹方も凶妖に洗脳されたのか!?」
「上の者が凶妖に染められたらこの慰撫団は終わりだ。」
「そもそも頭が凶妖を殺さず生かせと言ってる所からおかしいんじゃないか?」
「俺もそれは疑問に思ってた!」
「だよな!」
樂「こいつら…、頭腐ってるな。」
世永「姉ちゃんを侮辱するなよ…。これでも俺たち一生懸命、命張って戦ってるの知ってるだろ…。」
2人ともこの人たちに呆れ、悲しんでいる。
僕は最近入ってきたばかりで何にも知らない新参者だけどこの人たちは僕たちと考えが違うんだ。
ただの復讐として、恨み辛みを晴らすために戦っているんだろう。
僕も始めは死に際を選べるなら、抗う方と思ってここに入ったけど、ここの屋敷で出会った人たちや頭のお陰で価値観が変わったんだ。
これは復讐だけで晴らせる問題じゃないんだ。
この人たちはそこから目をそらして、復讐にしか目がいっていない。
それは、誰だって大切な人を殺されたなら涙を流すだろう。
自分の体も傷つけられて、命張って見ず知らずの命を助けるために働いて、体ボロボロにして戦っても
その大切な人は戻ってこないんだ。
確かに…辛いよな。
でも、僕たちは今と未来を生きなきゃいけないんだ。
過去は捨てるんじゃなくてちゃんと棚に閉まって大切に取っておくものなんだよ。
執着するために過去があるわけじゃないんだ。
過去は今の自分を作ってくれていて
今は未来の自分のために使っていかないといけないんだ。
だからみんなちゃんと今を生きてくれ。
虎雅「みんな!刹牙は人間のために戦ってくれた仲間なんだ!今まで見てきた凶妖と一緒にするな!
刹牙は素直な子だ!せいさんに注意されたことを素直に謝ったり出来るいい子なんだよ。
ちゃんと中身を知らずに物を発言するな!
樂もせいさんも頭も洗脳なんかされてない。
みんなのためを思って、招集をかけてくれたんだ。
命が消えればその個体は消えて煩わしさはなくなるけど、生かして共存する難しい道を頭は選んだんだ。
そのことも理解出来ていない人が頭を侮辱するな!
今の話を理解出来ない奴はイブをやめろ!」
「「「…。」」」
あれだけ騒いでいたみんなが一斉に黙る。
スクッと立って出て行く、僕より歳上と思われる人たち。
そうだよな、そんなすぐに価値観が変わるなら過去に囚われたりしないだろうに。
少しして、部屋に残ったのは30人くらい。
虎雅「す、すみません!やっぱり、みんな呼び…」
世永「いいんだ。今の話を理解出来ないものは頭と会っても凶妖を今まで通り殺すんだろう。」
虎雅「え?でもだめなんじゃ…?」
樂「殺すやつの方が多い。だけどその魂は永遠に何も無い暗闇に彷徨い続ける。」
世永「そのことを知ってるから憂さ晴らしとして殺すんだよ。だから今まで災獣園はあそこで収まってたんだ。」
100人近くいて、あの頭数はなぜか不釣り合いだと思っていたけどそういう事だったのか。
世永「残ってくれた人たちは頭の意思を尊重してくれるんだね?」
「「「はい。」」」
こくっと頷くみんな。
世永「ありがとう。だいぶ減ってしまったけど、心機一転みんなで頑張ろうね。」
「「「はい!」」」
すごい…。
さっきまで罵詈雑言の嵐でこの人たちに気づかなかった。
ちゃんと聞いてくれる人は居たんだな。
世永「じゃあみんな丸まって話をしよう。」
そう言って、みんなに指示を出し座布団やなんやらを片付けて、話す体制を整える。
虎雅「刹牙、頭痛どう?」
『だいぶ楽になった。話せる。』
虎雅「よかった。」
『さっきは庇ってくれてありがとう。こんな事あいつ以来だよ。』
虎雅「あいつ?」
『名前をくれた人だ。』
虎雅「そっか。嬉しいな。」
『お前の名前は?』
虎雅「虎雅だよ。」
『じゃ、ドラって今度から呼ぼう。』
虎雅「えー?タイガじゃないの?」
『いや、ドラだ。』
まあいいか、あだ名呼んでくれるだけで。
世永「虎雅ー、話せそう?」
虎雅「はい!」
せいさんたちが準備してくれた場所に僕たちは座り、刹牙から話を聞き始めた。




