嫌いな匂い
『これはやめろ!』
刹牙がリードを噛みちぎろうとする。
虎雅「ごめんって! これないと犬は道路歩けないんだ。」
『俺は犬じゃない。狼だ。』
虎雅「あ、そうなんだ。ごめん。」
『分かればいい。だからこれを外せ。』
虎雅「だから、ダメなんだって!」
とこの話を延々と話していると、せいさんと樂が来た。
世永「一旦、優善一宅で情報集めかな。」
せいさんの目が赤くなってる。また泣いたのかな。
僕は刹牙を抱っこして樂の手を握り、風が来るのを待つ。
ふわっといつもの風の中に、鉄のような匂いが混じっていた。
何でだろう。
世永「優太は何才くらいなの?」
虎雅「4才です。」
世永「かくれんぼは敷地内でしていたけど、いなくなっちゃったんだよね?」
虎雅「はい。」
世永「優太の匂いがついてるもの何かある?」
虎雅「家になら。」
世永「じゃあ取ってきて。」
虎雅「はい!」
僕は家の玄関にある優太の靴をこっそり取りに行き、せいさんに渡す。
世永「じゃあ刹牙くんの出番、頑張って。」
『はぁ?タダ働きはごめんだね。』
プイっと鼻先をそっぽ向ける。
虎雅「そんなこと言うなよ。ジャーキー今度持ってくから。」
『ジャーキーってなんだ。』
虎雅「干した肉だよ。好きでしょ?」
『いくつだ。』
虎雅「5つ…?」
『8つだ。』
虎雅「何でもいいから早くしてよ!」
樂「…慣れないな。」
世永「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!刹牙は早く帰ってモフモフしないの?」
『それもそうだな。』
と言って、刹牙は優太の靴の匂いを嗅いで
地面についた匂いを探す。
いつも優太が隠れていた階段の踊り場の下に刹牙が向かっていく。
そしてその下で止まった。
『ここで匂いが止まってる。』
虎雅「ここで匂いが止まってるそうです。」
世永「匂いが止まってる?ここからどこかに行ってないってこと?」
『動いていないと言うか…消えたが近いな。」
虎雅「消えたが近い例えだそうです。」
世永「消えたか…。」
樂「どうなんだ?」
世永「刹牙は他に匂い感じる?」
『ああ、俺の嫌いな匂いが混じってる。』
虎雅「嫌いな匂いって?」
『猫に決まってるだろ。だが普通の猫で、俺と同じように妖力を持っていない。』
虎雅「猫らしいです。でも凶妖ではないそう…。」
世永「野良猫の匂いが優太の匂いと混じって消えてる…か…。」
樂「普通の猫って人間拐えなくねぇか?」
『大元が野良猫使ってるんじゃねーの?』
虎雅「そんなこと出来るの?」
『まあ、ボスの言うことは絶対だからな。』
虎雅「あー…確かにネズミもボスの事待ってたな。」
樂「ボス?」
虎雅「凶妖のボスが野良猫を操れるらしい。それで優太が誘拐されたんじゃないかな。」
世永「そう言うことね。」
せいさんが前僕にくれたお守りのガラス細工を、匂いが途切れたとされる地面に突き刺す。
世永「決痕追跡。」
いつもより低い声で目を見開いて言葉を発するせいさん。
刹牙の口に手を放り込んだ時と一緒だ。
ドックン…っと地面が波打つと、
じわっと優太くらいの小さい足跡と猫の足跡が赤色でにじみ出てきて、
消えたとされる場所から赤い霧がすぅーっとどこかに向かっている。
世永「よし、これを辿って行こう。」
せいさんと樂が歩き始める。
僕は何が何だかわからなくて呆然としてしまっていた。
『おい、いくぞ。』
と、刹牙に引っ張られて僕は2人についていった。




