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選ばれた者たち

樂は、相変わらず前髪つんつん。

首元には歯型のような傷跡がある。


虎雅「おはよー。」


樂に声をかける。


…あ、イヤフォンつけてる。

これじゃ聞こえないか。


樂「…はよ。」


樂が返事をしてくれた。

びっくりしたがとても嬉しかった。


虎雅「最近家に居ないね、ちゃんとご飯食べてる?」


樂「…。」


えー…もう無視か。


虎雅「じゃあまた学校でね!」


僕は自転車を漕ぎだす。


[ガンッ!]


漕いでた自転車が急に止まり、バランスを崩しそうになる。

一瞬の出来事で心臓がドクッと強く脈打ったのか少し痛い。


虎雅「え!」


パッと後ろを振り向く。


樂「乗せろ。」


樂が後ろの荷物置き部分を掴んでいる。

どうしたんだろう。急に友達欲しくなったのかな。


虎雅「乗って良いよ!」


と言うと、樂はドサッと僕の自転車に乗る。


虎雅「じゃあ動くよー。」


僕は自転車を漕ぎ始めた。

普段から立ち漕ぎして脚を鍛えておいてよかったー。


しかし樂はなぜ急に乗りたいと言ってきたんだろう。

未だに無言だし、何を考えているのだろうか。


樂「お前、キョウノケって知ってるか。」


虎雅「え?」


唐突な質問に聞いたことないワード。

なんだ?キョウノケって。


樂「聞いたことあるか。」


虎雅「いや、ないよ。そのキョウノケって何なの?」


あっという間に長い坂を登って、学校の校門に着く。

すると自転車が止まらないうちに樂は飛び降りた。


虎雅「おい!大丈夫か?」


飛び降りた場所からこちらに向かって樂は歩いてきて、


樂「あとで屋上に来い。」


と周りに聞こえない声で僕にそう呟いた。

僕たちの学校の屋上、開放されてないんだけどな。


樂の足は速く、返事もしないうちに校内に入っていってしまった。


僕は自転車を停めて校内に向かう。


そう言えば『あとで』と言われたが、今すぐ向かった方がいいのだろうか。

あやふやだったのでとりあえずHRに出て、先生に体調が悪いと言って今日は出席日数だけもらった。


初めて授業をサボった。

授業のノート、後で見せてもらわないとな。


屋上に続く階段を上っていく。


ちらっと見える屋上の扉はしっかりと鍵がかけられている。


やっぱり開いてないじゃん。


とりあえず上の踊り場で隠れて、時間を過ごそうと最後階段を上ると屋上の踊り場に座っている樂がいた。


樂「遅い。」


虎雅「ごめん!HR出てた。」


樂「あっそ。」


ご機嫌斜めなのか黙り込んでしまった。

遅かったのは悪いけど、気分で話さなくなるのやめてほしい。


虎雅「えっと…さっきの話の続きをするんだよね?」


一応確認してみる。


樂「ああ、おみくじの凶に妖怪の妖で凶妖きょうのけと言う。」


虎雅「え?うん…?」


どうした?何の話をし始めた?


樂「凶妖が俺らの家族を殺した。」


虎雅「え?」


どうした、遊びすぎてイかれたのか?


樂は、ごそごそと近くにあった鞄から何かを出す。


〔自然災害と妖〕の本だった。


虎雅「これ僕も持ってるよ。」


樂「知ってる、まだ読んでないんだろ?」


虎雅「うん、今日家帰ったら読もうかと思ってた。」


今流行っている本なのだろうか。

この本のことを共有したいだけなのか?

僕は樂の隣に座った。


樂「これは選ばれたものにしか手に入れられない本なんだ。」


パラパラパラとページをめくり、本の最後の方のページを開く。


樂「ここを見てみろ。」


樂が指さしたページを見ると、


佐伽羅さがら 虎雅たいが・16才・優善一宅 居住』


と書いてある。


虎雅「なにこれ!こんな本に個人情報出した覚えないよ!」


樂「当たり前だ。これはこの本を手に入れたもの同士、会えるようにこうやって浮き出てくるんだ。」


虎雅「ちょっと見せて。」


と言って、樂から本を貰い、隣のページや後ろのページを見る。

他にも個人情報が書かれているものがいて、樂もその中の1人だった。


梵唄ぼんばい がく・16才・優善一宅 居住』


樂「ここのページは増えたり消えたりする。」


虎雅「その条件はあるの?」


樂「ああ、増えるときはこの本に出会ったとき、消えるときは持ち主がこの世からいなくなるときだ。」


虎雅「なんで、これを教えたんだ?」


樂「お前を仲間に入れるためだ。」


家族の死、この本と他の持ち主の繋がり、

僕がなぜ、この本に選ばれたんだ?


樂の言う凶妖が本当に家族を殺したのなら、

こんなことやめさせないといけない。


僕はそのまま樂の話を真面目に聞くことにした。


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