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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
華宮屋敷
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自我と他我

虎雅「わかるってなにが…」


『おい。ガキ、いい加減降ろせ。』


虎雅「えっ?」


杏「えっ?」


『降ろせって言ってんだろ。男に触られたくない。』


自分が抱いている凶妖が暴れ出す。


虎雅「危ないよ!落ちちゃう。」


『だったらさっさと降ろせよ。ごつい体は居心地が悪い。』


なんだ、誰の声だ。


杏「あの一旦下ろしてもいいですよ。」


虎雅「わかりました。」


そっと地面に降ろす。


『はあ…やっと岩からの脱却。この姉ちゃんの胸が一番だ。』


その言葉が聞こえて、僕の抱いていた凶妖は杏さんに抱っこをねだる。


虎雅「え…もしかして…」


杏「もしかして?」


『何だ小僧。俺が思ってること聞こえるのか?』


虎雅「多分。」


杏「多分…?」


『俺の質問に答えろ。お前の体脂肪率はいくつだ。』


虎雅「12%。」


杏「…何の数字ですか?」


『おおう、聞こえてるのか。話せる人間はあまり見ないんだが…、今はあの女くらいか。黒髪で顔を布で隠した…』


虎雅「(かしら)ですか?」


杏「虎雅さん?」


『ああ、そういえばそうこいつらは言っていたな。あいつは他にも色々と分かっていたみたいだが、お前はどうなんだ?』


虎雅「いえ、他は何も。」


杏「…?」


『そうか。まあたまには人間と喋るのも一つの娯楽となるか。』


杏さんの手元から飛び降りる凶妖。


『まあ、たまにここ来いよ。話相手になってやる。』


凶妖の目線に近づくために座る。


虎雅「あの、なぜあなたの声だけが聞こえるのでしょうか?」


杏「声が聞こえるんですか?」


『ああ、俺は見た目よりだいぶ長いこと生きてるからな。経験値が違う。だから人間の言葉が交わせる。』


杏「みんな来てー!虎雅さん、この子の声聞こえるんだって!」


「え!」


「本当に!?」


「なんて言ってんの?」


虎雅「あの…妖力を取ったら聞こえなくなるんですか?」


『まあ多分そうだと思うがな。妖力のお陰で出来ること多くなるし、若い姿のまま長生きできる。』


虎雅「そうなんですね。お名前は?」


刹牙せつが人間に貰った名だ。』


虎雅「色々とよろしくお願いします。刹牙さん。」


杏「刹牙って名前なんだ。可愛い!」


「へぇ、名前持ってたんだね!今度から呼んであげよう!」


「でも元いた場所に返すならあまり情は入れないほうがいいんじゃない…?」


「いつも泣いて、帰してるのは誰なの?」


刹牙『俺は絶対妖力を取られない自信がある。だからここにいる女と永遠にモフモフする。』


虎雅「えっ…それがここに来た理由ですか?」


刹牙『そうだ。ここから帰ってきた仲間に聞いて、わざと捕まった。』


だいぶ人間に対してすけべなんだな。


杏「ここに来た理由なんて言ってましたか!?」


杏さんたちがキラキラした目でこっちを見てくる。


虎雅「えっと…、ただのヘマでここに来たらしいです。」


刹牙『俺の株を下げるな。』


虎雅「え、いや、でも…」


本音言ったら追い出されるんじゃないかな。

腹いせに災害起こされても困るし。


刹牙『一旦痛い目見とくか。』


虎雅「え?」


刹牙が虎雅に飛びかかり右手に噛み付く。


刹牙『俺の株をあげるまで離さん。』


虎雅「痛い痛い!分かったよ。」


杏「大丈夫ですか!刹牙くんだめだよ。」


杏が刹牙を離そうと刹牙に抱きつく。


刹牙『まあ、この女がやめろというならやめよう。』


僕の手を口から離す。

わ…、血出てる。


「虎雅さん、手当てしに行きましょう!」


近くにいた人が救護室に案内してくれる。

ガーゼと包帯を巻いてくれる。


虎雅「ありがとうございます。」


「いえいえ、でもその手にも妖力がこもっちゃいますね。」


虎雅「確かに。多く噛まれるとあまり良くないんですかね?」


「うーん、戦いに関しては強さが増して、有利になりやすいですが自我が保ちにくくなるんです。(かしら)は、もともと腕に噛まれた跡があって、任務中にあの首から頭にかけての大怪我を負ったので常人には耐えがたい他我の念が襲ってくるんですが、いつも穏やかなんです。…本当、(かしら)はすごいです。」


虎雅「そうなんですね…。」


「虎雅さんもお気をつけて。自我穿通頑張ってください。」


虎雅「ありがとうございます。」


僕は手当てをしてもらい災獣園に戻った。



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