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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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お手伝い

この間の事はせいさんが数珠丸さんが率いる来願組(きがんぐみ)の人たちにも伝えて、琥崙・嘉蘭さんたちと協力することになった。


主に街での聞き込みは琥崙・嘉蘭さんがして、来願組の人たちは咲さんの仲間として動いているナンパ男の2人を見つける事になった。


咲さん、凌太さんは僕たちに姿を見せてくれないのでその周りにいる人たちの後を追って探すという事になった。


憲治さんがその2人の顔の特徴を大まかに描いて、それを見た犬太さんが写真のような絵で2人の似顔絵を描き、僕たちの意見を聞いては直してを繰り返して出来た絵はその本人そのものだった。


これで誰かしらの尻尾を掴めればいいと思っていたけれど、そう簡単にも行かなかった。

あれから数週間経ち、もう少しで夏休みが終わろうとしている。


虎雅「忙しすぎて、あっという間に夏休み終わっちゃうねー。」


樂「そんなもんだろ。」


樂と一緒にせいさんの屋敷で屋台の看板に色ぬりしていると、真司と清くんが部活を終えてやって来た。

2人は同じ野球部に入ってる。


虎雅「お疲れ様ー。試合、どうだった?」


真司「惨敗!」


虎雅「そっかー。残念だったね。」


真司「まあ、みんな本気で部活やってないから当たり前なんだけど。」


真司が少し悲しそうに苦笑いをして、向こうにいる絢愛さんに何の作業をすればいいか聞きに行く。

清くんは、樂の隣にしゃがんで僕たちの作業を眺めている。


樂「…いいのか?最後の夏の試合だったかもしれないんだぞ。」


清「僕は僕なりに真司のために動きました。けどチーム戦なので、2人だけの力ではどうにも出来ませんでした。」


樂「そうか。」


樂は無表情のまま手を動かす。


清「みんな勝手に未来があると思って、物事を全て先延ばしするのってどうにかならないんですか?」


樂「人は終わりが見えたら本気を出しやすいが、見えずに模索する人は一握り。

俺らもそうだろ。後半年でこの日本が無くなると思ったからこそ、今までやってこなかった事をしている。

人の根本はそんなもんだ。」


清「…そうですか。」


清くんが口を尖らせながら、しょんぼりした顔をしてる。


世永「おーい、みんなぁー!」


せいさんが屋敷からこっちに向かって走ってくる。


絢愛「どうしたんですか?」


世永「あとどのくらいで今日分の作業終わる?」


絢愛「今は明後日分のをやってます!」


世永「え!?そんなに進んでるんだ!みんな、凄いね。じゃあキリの良いところで片付けちゃって。連れて行きたい所あるんだ。」


せいさんがウキウキしながら、話している。


絢愛「だって!みんな今から片付けよ!」


真司「俺、来たばっかりなのに何もしてない。」


世永「良いの良いの。そんな日もある。」


真司「…。」


真司が不服そうにしていると、せいさんはぽんぽんと真司の頭を撫でた。

じゃあ終わったら声かけてーと言って、せいさんは屋敷に戻っていった。


虎雅「どこに行くんだろ?」


樂「知らねぇ。ジジくさい所だろ。」


虎雅「どこだよ、それ。」


樂「知らねぇって言ってるだろが。」


清「僕、新しい水に変えて来ますね。」


清くんが絵の具を洗い落とす水が入ったバケツを持っていく。


虎雅「ありがとう!」


清くんは振り向かずに行ってしまった。

うーん、どうしても距離があるなぁ。

どうしたら良いんだろ。


樂「お前、清のツボに入りきれてないな。」


虎雅「っぽいね。どうしたら良いんだろ。」


樂「あいつなりの事情があるんだろ。無理する必要はない。」


虎雅「そっかぁ。でも、もう少し話してくれても良いのにな。」


真司の小指を噛ませた時くらいしか、まともに会話した事ないんだよなぁっと思い返す。


樂「あいつは俺らみたいに災害で親を失った訳じゃなく、人絡みらしい。それで一定の距離感が生まれてる。だからあいつから頼られるのを待ってればいい。」


虎雅「詳しくは聞いてないんだ?」


樂「俺にも全ては話してないだろう。言いたくない事は言わなくていい。」


虎雅「…そうだね。」


樂が別の筆に持ち替えて、また色ぬりをし始める。


一定の距離感と言われたけど、清くんは他の団員さんとは普通にやり取りしてるんだよなぁ。

なんで、僕だけ無視と無言が多いんだろ?

みんながいると会話に参加するけど、僕との絡みはないんだよな。


なんか寂しい。


少し落ち込んでいると、清くんが新しく綺麗な水を持ってやって来た。


樂「ありがとう。」

虎雅「ありがとうね。」


清「いえ。」


そのまま、また樂の隣にしゃがんで樂の作業を見ている。


樂の横顔からちらっと見える清くんは僕の何が嫌なんだろ?

聞く勇気はあるけど、ただのお節介だよなぁと思い、僕はキリがいい所まで色ぬりを仕上げて、片付けを始める。


樂「清。虎雅の使った道具、片付けるの手伝え。」


清「はい。」


虎雅「ありがとう。」


清「…。」


うっ…、辛いなぁ。

僕は独り言のように清くんに持ってもらいたい道具を伝えていく。

そして、一緒に道具置き場に向かった。



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