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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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秩序

黒づくめの1人に僕は銃口を向ける。


虎雅「貴方たち、誰なんですか!?」


僕が声をかけても、口を動かす気すらないらしい。

でも…、なんでこの廃村だった場所に来たんだ?


樂「ハアァッ…、そいつらを殺すな。生け捕りだ。」


樂の息切れした声が聞こえる。


虎雅「当たり前だ!」


僕は片手でそのまま狙いを定めながら、ポケットから小さくなっている刀を取り出す。


虎雅「おい、これ以上近づいたら撃つ。」


そう言っても聞いていないのか

僕の目の前でナイフを振り上げる1人の男と、その横から僕の横腹を刺そうとする男。


2人とも香水がとてもきつい。

この匂いで樂はここに来たんだろう。


僕は瞬きを止め、お腹の自我穿通で2人の動きを遅くさせる。

その間に力づくで体を動かし、横の男の脚に狙いを定める。


僕が男の脚に引き金を撃とうとした瞬間、

ナイフを振り上げていた男の脇腹をふと見ると、少し大きめのブーメランが力強く当たっている。


[パァキ…]


その男の脇腹から何かが折れる音がする。


僕は引き金を引くのを止めて、重い体をその場から遠ざけ瞬きをする。


すると、そのブーメランは2人の男を巻き込んで近くの木に投げつけた。

その後、ブーメランは人に当たったにもかかわらず、来た方向に戻っていく。


その先はひまわり畑の向こう側。

そこから人の手が見え、ブーメランを止めた。


何が起こってるんだ?


男2人の様子を見ると気絶してるっぼい。


虎雅「樂!どこにいる?」


僕はそのままひまわり畑に入って、息切れして4つんばいになっている樂を見つける。


虎雅「大丈夫!?なんで1人で来たんだよ。」


樂「そんな事より…、2人は?」


虎雅「ブーメランが2人をぶっ飛ばしてくれた。」


樂「…!おい、2人の元まで俺をおぶれ。」


虎雅「え?な…」


樂「早く!」


樂は何かに焦っている。

僕は言われたまま、樂をおぶって2人の元に連れて行くと、黒づくめのスーツで革靴を履いている凌太さんがタバコを咥えながら立っていた。


樂「…凌太さん。」


樂が弱々しく凌太さんを呼ぶ。


凌太「なんだ?腹方はお熱か?」


凌太さんは樂の様子を見て嘲笑う。


虎雅「…凌太さん、どうしてここにいるんですか?」


僕が話しかけると、凌太さんは明らかに嫌そうな顔をした。


そしてタバコを肺いっぱいに吸い、ため息をつくように煙を吐く。

小さくなったタバコは、持っていた缶の吸い殻入れに入れて胸ポケットにしまった。


凌太「地慣(じな)れするためだ。」


樂「…りょ…たさん。帰って来てください…。」


背中にいる樂の体温が熱い。

この炎天下でさらに樂の体が危ない。

けど、凌太さんが目の前にいる。

こんなチャンス、今後無いかもしれない。


凌太「慰撫団に帰るつもりはない。俺はそこいらにいる人とは違う。力があるなら人を守るために動く。お前らみたいにチャラつきあってる場合じゃない。」


虎雅「…チャラつきあってるってなんですか。僕たちがふざけてるとでも言いたいんですか?」


凌太「そうにしか見えない。お前たちが“保護”と言ってるものは時間がかかりすぎで不確実。悪は罰するのが筋だろ。」


凌太さんが気を失っている男たちのアイマスクを剥ぎ取る。

その人たちは、あのパーティで絢愛さんをナンパしてきた2人だった。


虎雅「本当に凶妖の事を悪と言い切れますか?全ての人間が犯罪を犯していますか?違いますよね。凶妖だって暴れずに静かに暮らしている子だっているんです。」


凌太「あ?どんな人間もやろうと思えば犯罪が犯せるだろ。全ての人間が犯罪者予備軍のように、凶妖も災害予備軍に変わりがない。秩序に理解がない者はこの世からいなくなればいい。」


虎雅「…大体、人が凶妖を生み出したんです。その魂をまた人が殺し、また怨みを持った生き物が生まれるんです。いい加減、理解してください。

人を守る事も大切ですが、この世に産み落とされた全ての生き物の悲鳴も聞いてください。

その悲鳴の原因は、人が私利私欲のために生み出してきた物全てに原因があります。

今、見直さないと来年僕たちは生きていません。」


凌太「何言ってんだ。人は文明を築くために生まれてきた生き物だ。人としての仕事を全うしている者たちを侮辱するな。」


虎雅「していないです。僕は…」


凌太「お前は話にならない。小学校から歴史を学んでこい。」


凌太さんは気絶している2人を担ぎ上げる。


虎雅「行かないでください!…慰撫団に戻らなくていいので、咲さんからは離れてください!」


凌太「無理だ。俺の理解者は、咲さんただ1人。咲さんを理解しているのも、この俺しかいない。」


虎雅「凌太さん!」


ブワン!っと今までにない突風で凌太さんは飛んで行ってしまい、僕は風に煽られ倒れてしまう。


虎雅「…痛ぁ。…樂、大丈夫?」


樂の頭を守るために僕は寸前でうつ伏せに倒れた。

体を起こしながら樂の顔を見る。


樂の額から大量の汗、そして苦しそうな息遣い。

樂は体力の限界だったのか、僕の質問には答えてくれなかった。


虎雅「…ごめん。僕は飛べないから走るね。」


僕は樂を抱え直して、村の家に急いで戻った。


家に帰り、樂はせいさんの屋敷で休養する事になった。

僕はせいさんに凌太さんと会ったこと、2人が僕たちの見えないところで動いている事を話した。


せいさんは涙をこらえながら少し考えた後、

俺に伝えてくれてありがとうとお礼を言ってくれた。

きっといつものせいさんなら、樂を心配して大泣きしているのに樂を看病している時でさえ、涙をこらえていた。


せいさんが感情に蓋をしてしまったように感じた僕だったけれど、何もしてあげられない。


…ただの子供だから、大人の考えている事を理解出来ない。


けど、明後日は休みだからせいさんが好きないちごが乗ったケーキを買って一緒に食べようと思う。


美味しいものは人を笑顔にしてくれるから、その力を借りよう。


…僕がもっと頼りになる人間だったら良かったのですが、まだまだ仲間を助けられる人間にはなれてないようです。

ごめんなさい、せいさん。


どうしても思ったようには成長出来なくて、

どんなに努力しても人に伝わるのは極少数。


キキさんに人の気持ちを動かす才能があると言われたけれど、全く凌太さんたちには響かない。

あの時、本当に才能があれば凌太さんは僕の話を聞いてくれたかもしれない。


僕の力の無さがみんなといると目立って嫌になる。

この不出来な自分に怒りを感じるからこそ、発揮出来るものはあるけど…、やっぱり出来る事が多い人は羨ましい。

僕はみんなの足元にも及ばない。


ごめんね、みんな。

僕、もっともっと頑張るよ。

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