四話
「知らない………訳でもないな。………保健室?」
上体を起こして周りを確認する。起き上がる途中に腹にズキリと痛みが走る。あいつのスパイクまじ痛てぇ。よく吐かなかったな俺。
「起きた?」
シャアアとカーテンが開き、保健室の先生が顔を覗かせる。よく学校の保健室にいる先生は美人で胸が大きくて………なんてジンクスがあるが、別にフツーである。
「はい。もう大丈夫です」
ベッドから出て軽く体を伸ばす。痛みは腹にバレーボールが当たったところくらいだし、特に支障が出る訳では無い。
「先生、ご迷惑をおかけしました」
「気にしないでいつでも来てね」
丁度チャイムがなる。時計を見ると今から昼休みだ。
…………俺、授業三時間分寝てたのか。あいつのスパイク強すぎだろ。
「緑!?」「みーくん!!」
「おう、2人とも………っとと」
教室にはいると翔太といろはが駆け寄ってきて、いろはは俺にだきついてきた。
「「「「「!?ろ??!?」」」」」、
その時、何故かクラス(主に男子)がガタガタとうるさくなった。
ぎゅーっと抱きついてくるので、片方は背中まで伸ばして、頭を撫でる。
「緑!?大丈夫か!?」
めちゃくちゃ焦った顔で翔太が聞いてくる。俺は一度頷いてから無事なことを言った。
「あぁ。三時間分寝たから大分回復した」
「そ、そっかぁ………よかったァァァ」
安堵の息を漏らして全身の力を抜く。
「………心配かけたな」
「あぁ……ごめんな緑。俺のせいで」
「気にすんな。今度遊び行った時になんか奢ってくれればそれでいい」
実際、中学の時に、翔太の夜練に付き合わさた頃なんて毎日のように当たってたからな。今更だろ?
「…………いろは」
耳元に口を寄せて優しく名前を呼ぶ。一瞬ピクっとした後に、おずおずと俺と視線を合わせる。
「ごめんな。心配かけた」
「…………暫く翔太君と口聞かない」
「なんでだよっ!いや、まぁ理由はだいたい分かるけど…………」
哀れ翔太。だがきっと謝り倒せば許してくれるよ。きっと。
と、またいつものように三人で話しているとそこに飯塚くんがやってきた。
「白石くん」
「飯塚」
「先程の試合。見事なセッターだった。進藤が認めるのも分かるよ」
と、急に賞賛の言葉を送ってくれた。それを聞いて翔太が胸を張る。なんでお前がドヤるねん。
「できれば………そうだな。君にバレー部に入ってもらいたいんだが………」
「……………は?」
「冗談じゃないよ。僕は本気さ」
真剣な目で俺から目を逸らさずに言う。その瞳から、どれだけ本気かどうかを窺わせる。
「……悪いな。俺のトスは翔太専用なんだ。諦めてくれ」
折角だが、断る。実際俺は翔太としか合わせれないし、今入っても、飯塚と翔太の推薦があっても部員には中々認められないだろう。
「………そうか、それは残念だな」
と、ははっと笑った。
「体育の時に、君のトスを打てることを願っているよ」
「あぁ。巡り合わせが合えばな」
多分そうないだろうが。
それじゃあと言って教室から出ていく飯塚。
「そろそろ俺らも飯食おうぜ。いろは、そろそろ」
「うん」
最後に一際強くぎゅっとしてから離れる。胸に少し温もりが残ったが、すぐに消えた。
「どこでくう?」
「中庭でいいだろ」
「いつもそこだもんね。翔太くん、荷物持ち」
「………へいへい」
と、俺らも教室を出ていった。
(………すげぇ白石。あの槙野さんに抱きつかれても顔色ひとつも変えなかった)
(飯塚くん、いろはちゃん白石くんに抱きついたままだったけど喋りに行ったわ……ある意味すごいわ)
「そういえば誰が俺を保健室に運んだんだ?」
「俺。緑が倒れてやべぇ!って思って無我夢中で運んだんだ」
「そうか。ありがとな」
「でも、廊下走ってる時なんかキャーキャーうるさかったぞ?」
「それは翔太くんがみーくんをお姫様抱っこで運んだからでしょ?」
「………………え?」
なろうランキングで、恋愛の現実で39位に入ることが出来ました!ありがとうございます!!これも皆さんのお陰です!!
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……このまま1位も夢じゃない……?いやまずはTOP10入り頑張ろう、うん。
追記
何故か21位に上がってました!ありがとうございます!