二話
その後、ホームルームが始まる10分前に教室に入り、いろはと別れてから俺と翔太は席に座る。俺と翔太は席が前後ろで、いろはが離れている。席替えした時のあの悲しそうな顔はよく覚えている。
「……今日1時間目から体育か。だる」
「おい運動部。お前がそれ言ったらダメじゃね?」
「部活は別にいいんだよー。体育は………なぁ?」
「まぁ分からんでもないが………」
体育だるい。俺は特に運動部に所属はしていないが、体育はなんか無駄に疲れる気がする。楽しいっちゃ楽しいんだが。
ホームルームが始まる。朝は簡単な連絡事項だけなので、五分で終わる。ウチのクラスの男子たちは体育大好き勢が多いので、意気揚々と体操服に着替え始めた。
「………ほんと血気盛んだな」
「加えて運動部も多いしな。このクラスに帰宅部お前しかいないんじゃないの?」
「…………まっさかー」
一見地味目のお前絶対運動部じゃねぇだろみたいなメガネ男子が実は卓球部で全国常連レベルだったりとかあるよな。目の前で着替えてる迎くんがそうだし。
「でもお前結構スポーツ万能だからなー……器用貧乏の域はでないけど」
「やかましいっ」
今日は1時間目からバレーだった。何故だ……何故いきなりバレーなんだ………。そのせいで翔太が張り切ってるし。
「よっしゃー!緑のセッターでバレーできる!」
「同じチームになれるとは限らんだろうが」
「なるよ。俺達はそういう運命だ」
「あながち否定できんからな」
体育のチーム競技において、俺達は一度も敵として戦ったことは無い。偶然か。はたまた神の悪戯か。
「進藤」
俺達がオーバートスでパス練をしていると、翔太に声が掛かった。
「おう、どうした飯塚」
飯塚公平。翔太と同じバレー部に所属。翔太曰く、ポテンシャルお化けでその実力は全国レベル。翔太と同じユース候補に選ばれていた。
「体育だろうと、負けないよ」
「おう、俺だって負けねー。こっちには緑がいるからな」
「おいバカ」
巻き込むな勝手に。
「白石くん……進藤の幼馴染か」
「幼馴染だからって上手い訳じゃないからな。多少素人に毛が生えたくらいだ」
実際に俺はそう思っているし、結局は器用貧乏だからな。
「男子集合!今からチーム分けするぞ!」
先生の声が響く。向こうでは女子の集合がかかっている。
「それじゃあ進藤。またな」
「おう」
「あの……言っておくけど君らは違うチームだけど俺は翔太のチームに入れる訳じゃないからね?」
ここ本当に大事よ?もしかしたら俺飯塚くんのチームに入るかもしれないんだから…………。
と、思っていた時期がありました。
「よろしくな!緑!」
「……………………」
やっぱ同じチームなのね。薄々分かってはいたが。
翔太がささっとポジションを決める。前衛と後衛でローテを回すのだが、俺はどうやら翔太の対角にいる。
試合の始まりを告げるホイッスルが鳴り、一応気を引き締める。さて、サーブは………
「…………げ」
いきなりあいつじゃん。しかも俺後衛だし…………。
ダンダンと二回ほどボールを打ち付けボールを投げる………って!
「いきなりジャンプサーブかよ……」
バァン!と強烈な音を響かせてサーブを打つ。狙いは、真っ直ぐに俺である。
「緑!」
しっかりと腰を落として迎え打つ。甘かったな飯塚。俺はあの翔太の幼馴染だぞ?
真正面でボールを上手く捉える。そして、衝撃を、威力を上手く殺す。
「~~~~っっ痛っってぇ!」
衝撃が上手く殺せなかったから思いっきり尻もちを着いた。だがーーー
「ナイスだ!緑ー!」
直接ネットを超えるぐらいのレシーブは既に助走に入っていた翔太がたたき落とした。
てかマジで腕痛い。翔太のサーブ受けてなかったら多分尻もちじゃ済まなかったな。
作者のバレー知識はほぼハ○キューであることを加味してお読みください。