一話
白石緑の朝はそこそこ早い。
毎朝朝の六時に起きては今日も仕事を頑張る両親の為に朝ごはんを作る。
(今日はふわふわスクランブル)
「うっま……流石パパの息子だ」
「えぇ………自慢ね」
「早く食べて。仕事遅れるでしょ?」
別に俺はまだまだ時間があるからいいけど父さん達後30分でしょ?早く急いで。
その間に洗濯機を回して置いたので、ササッと庭に干しておく。顔も普通、成績普通、運動も普通の俺が唯一、幼馴染達や他の人に勝てる分野である。1年の時に家庭科室で俺といろはで料理戦争が起きたこともあった。(勿論勝ったのは俺)
「緑ー!行ってくるからなー!」
と、父さん達が手を振ってくるのではよ行けと顎で急かす。こっちはまだ洗濯もの干してるの。
せっせっと洗濯ものを干して朝飯を食べる。ここまでで6時50分。
リビングでしばらくゆっくりしてから家を出る。そこには既に俺の幼馴染である槙野いろはと、進藤翔太がいた。
「おはよう緑」
「みーくんおはよう!」
「おはよう二人とも」
トントンっとつま先を地面でつついてから靴をしっかりと履く。
「……今日は翔太朝練ねぇーの?ほい、弁当」
「サンキュー。今日はオフなんだってよ」
進藤翔太。身長は180後半でバレー部に所属している。15の時にユース候補に選ばれ、高一で既にアンダー18の日本代表選手にも選ばれているすげーやつ。俺の自慢の幼馴染だ。
家が隣同士で、よく夜にバレーに付き合わされる。だからそこそこバレーが上手くなってしまった。楽しいけど入るつもりは無い。
そんな俺がなぜ翔太に弁当を作っているかと言うと、主に栄養管理である。
翔太の両親は夜遅くまで帰ってこない。だからほとんど………つか毎日夜は俺ん家で食う。
それが中学の頃から続いているため、俺が家事を好きになったのはほぼ翔太のおかげと言ってもいい。
「翔太くん。今度大会だったよね?大丈夫なの?」
槙野いろは。俺の大事な幼馴染の一人。めちゃくちゃ美人で、よく告白される現場を見てる(翔太と一緒に断った相手が逆上しないように見張ってる)。成績優秀で、天は二物を与えずとかそんなん嘘だといろは見たらつくづくそう思う。
「大丈夫。夜に緑とするから」
「おいコラ。ナチュラルに巻き込むな」
「とか言いながらなんだかんだするもんなー緑は。このツンデレめ!」
「本当にしねーぞ」
「冗談でございますみーくん様」
「弁当回収するぞ」
「あははははは!!」
俺たちのやり取りでいろはが笑う。それに釣られて俺と翔太も笑った。
「ははは……はぁー笑った笑った。……緑。お前やっぱバレー部入んねぇ?」
「…………お前またそれかよ」
ココ最近……てか半年前からよく翔太にバレー部に誘われる。
「……翔太。俺には無理だって。そもそも俺あんま上手くないだろ?」
「えーーセッターとしてならお前充分やれると思うけど」
「そもそも身長無理だろ。それに………バレーはお前とやるから楽しいんだよ………そのくらい察せアホ……」
そう言うと一瞬ぽかーんとアホ顔になった翔太の顔が途端に嬉しそうにニヤついた。
「そっかーそっかー」
正直ちょっとキモイ。翔太はイケメンだけどその顔はちょっとキモイのでそのニヤケ顔やめてほしい。
「まぁ今日は付き合ってやるから………お前勝てよ?見に行くから。負けたら焼肉な」
「おう!ぜってぇー負けねー!俺は緑といろはが来た時の試合は負けた事ねーんだ!」
と、自信満々な笑顔で答える翔太。俺はそれにニヤッと笑ってから…………
「お、それじゃあ期待しないで焼肉待っとくわ」
「そこは俺の勝利を期待しとくって言うところだろ!」
「はいはい!そろそろ行くよ!学校遅刻しちゃう!」
やかましくなる俺と翔太の会話を、いろはが無理やり切る。それが俺たちのいつもの流れ。
いろはに背中を押されてから歩き始める。
こんな感じで、俺達三人は仲良くやっている。