十五話
「じゃあお風呂行ってくるねー」
「おーう」
「翔太、覗くんじゃないわよ」
「振り?」
「ぶっ飛ばすわよ」
と言葉を残して風呂場へ消えていくいろはとみさきちゃん。ガチャりとリビングの扉が閉まり、完璧に2人の気配が消えた所で……
「よし、行くか」
「修学旅行か」
おい、これ去年も同じ流れやったぞ。その時ほんとに風呂場まで行っていろはに悲鳴あげられた挙句俺からはボッコボコにされてみさきちゃんに目潰しされたの覚えてんのか……?
「まぁ冗談だよ。緑、バレーしようぜ」
「お前のは冗談に聞こえてねぇんだよ……いいぞ」
「あの後の緑はマジで怖かったからな……庭でやろうぜ」
一旦玄関まで行き、靴を履き替えてそこそこ広い我が家の庭でオーバートスを二人で交互に行っていく。
「バレーの調子はどんな感じよ……よっと」
ふわりとソフトタッチで回転をさせずに翔太の方へボールを返す。
「最近は結構型もハマってきていい感じ……飯塚の方も大分パワーだけじゃなくてスピードも着いてきてメキメキ成長してる」
パワーだけなら翔太にも勝る飯塚。流石はポテンシャルお化けと翔太が言っている程でもあるな。
「翔太はもっと体柔らかくなったか?」
思い出すのは、翔太の天敵がいたゲスブロッカー持ちの日凛高校との一戦。
翔太は跳躍時に体を捻り左手で超インナースパイクを決めた事が強く印象に残っている。中学の時に俺と一緒に練習して完成させたインナースパイクも大概化け物だが、捻りを入れることにより、もっと手に負えなくなった。
「この前長座が……なんだっけ90センチ?」
「きゅうじゅっ!?」
びっくりしてボールを落としてしまう。
「おまっ……それはやべぇだろ」
「去年より5センチ伸びてるからな」
落ちたボールを拾い、またオーバートスでパス練を始める。
「小手先技術の方はどうよ」
「小手先とか言うなよ………今あたらしい技を開発中」
「へぇ………どんな?」
いつもいつもこいつの新技には驚かされてばっかりだからな。それこそアンダー18に選ばれる1つの大きな要因だ。他国代表選手に『あの日本人は人間か!?』って言われてたもんな。
「そいつは高総体の時のお楽しみだな」
ボールをキャッチしてニヤリと不敵な笑みを浮かべる翔太。そして軽くスパイクをうってきたので、急いでレシーブの型を作り、受け止める。
そして真上に上げたボールをキャッチしてから翔太にジト目を送る。
「………おい」
「ははっ。わりぃわりぃ」
急に何すんだこらという念を送ったが、伝わったか伝わってないのかどちらとも言えない謝罪をする。
すると、リビングが見える窓に、人影が写った。
「みーくん?翔太くん?お風呂上がったよー」
カーテンを開け、窓を開けた後お風呂上がりでまだ髪を湿らせているいろはが姿を見せた。
お風呂上がりで少し上気していて頬が紅くなっている。そして少し濡れている髪がまたいろはの魅力を―――――
「……みーくん?」
いろはに呼びかけられ、はっとなる。
「な、なんでもない。翔太、先に風呂はいってくんね?俺はいろはの髪拭いておくから」
「え!?みーくんが拭いてくれるの」
嬉しそうに顔をパァァァと擬音がつきそうな程に輝かせるいろは。
――――俺はさっき……いろは相手に何を―――
「………翔太?」
翔太から返事がなかったため翔太の方をみたら、なにやら顎に手を当て考え込んでいるようだった。俺が見ていることに気づいた翔太は
「あ、いや……分かった風呂だな」
と言ってササッと玄関に戻っていった。
(……後気づくまでもうちょいって所か)
「……あいつどうしたんだ……」
「さっき急にぼーっとしていたみーくんが言えることじゃないと思うよ………」
あの後、俺もいろはの髪を拭くために玄関に戻り、リビングに行ったのだが、いろははそこから動いておらず、窓際に腰掛けていた。
「……いろは?」
椅子に座ってしないでもいいのか?の意味も込めたのだが、いろはは首を横に振って「ここでいい」と言ったので、いろはの後ろに片膝を着いて座った。
まずは軽く、髪を傷めないように拭くと言うよりは当てて髪についている水分をとる。そして既に横に準備されていたドライヤーを手に取り弱風にして、撫でるように風を当てていく。
「……んっ」
終わったあとには乱れた髪を整えるためにまずは手ぐしで軽く整える。その時いろはから色っぽい声が出た。
そしてラストにクシで整えてから終わり。用意がいいようで、いろはの横には道具一式が全て置いてあった。
「終わったよ」
「うん、ありがとう」
二人で立ち上がり、道具一式をいろはに渡す。
「……あの、ね……みーくん」
もじもじとしながら俺の名前を呼ぶいろは。
「この前さ……その……彼女欲しいって言ってたじゃん……?」
「……ん?……あぁ言ったな」
雑誌とか色々見てるがよく分からんから若干諦めかけてたな。
「………その……」
「………?」
どんどんいろはの頬が赤くなっていく。ま、まさか夜の冷気に当たって熱が――――
「――彼女………私じゃだめかな……なんて」
……………………ん?
「か、考えておいてっ!」
と、一人俺を置いてリビングから立ち去っていくいろは。
「…………………~~~~~~~っっ!?!?!」
意味を理解した俺は、一気に顔に熱が集まる。目眩がしたために壁に背中を預け、ぐにゃりと力が抜ける。
―――俺は………俺は今、いろはに告白された……!?
一気に進展してしまった………あれぇ?予定ではもっと後の予定だったんですけどねぇ……?具体的には大体30話くらいで緑から告白させようと思ってたんですけど………あれぇ?
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