十三話
個人的にはターニングポイントだと思っています
「それじゃ、頼んだぞ。白石、槙野」
「了解です」
「任せて下さい」
一時間目の体育の授業が終わり、たまたま一緒に居たという理由で片付けを任命されてしまった俺といろはは、先生から体育倉庫に戻すビブスやらなんか音が出るやつをもらって体育館をでた。うちの高校の倉庫は、いったん外に出ないといけないので翔太と別れる。その際に、何故か翔太がいろはを呼んでこそこそと耳打ちをしていて、いろはの顔が真っ赤になった。
「....さっきは翔太に何を言われたんだ...?」
「な、なんでもないよ!」
気になったのでいろはに聞いてみたのだが、顔をさらに真っ赤にさせて拒否されてしまった。
倉庫に入り、人がしっかりと居るアピールのためにドアを開けっ放しにしておく。前に生徒(翔太)が倉庫の扉を閉めていて、閉じ込められたので、それを防止するためである。しかも、倉庫の扉は中に鍵がついていないため、閉じ込められたら誰かが気づくまで待機していないといけないため、精神的にも非常によろしくない。
倉庫はなかなかに広く、受け取った荷物は、入り口の死角になるので、早めに置いてささっと出なければいけない。それをきちんと肝に銘じて取り掛かった.....筈なのに...。
「えぇぇぇぇぇ.....」
ガラガラ...と音がなった後に、ガチャンッ!という絶望の音が響いた。俺達は、突然のことに反応できずに、気づいたときには何もかも手遅れだった。
この時、倉庫の外には耳が若干遠いということで有名な事務員の森繁先生がいて、体育担当の浜野先生を歩いている姿を見つけ、閉じ忘れと勘違いしたことで起きた事件だったと、出てきたとき浜野先生に教えてもらった。
「おい!誰か居ないか!?」
ドアをドンドンと叩いて、耳を済ませる。しかし聞こえるのは俺といろはの息遣いの音のみ。悲しいかな。外からは、何も聞こえなかった。
まさか俺達が翔太の二の舞になるとはな....あの時思いっきり馬鹿にしたのに、今度は俺が馬鹿にされてしまう。
内心くそぅ...と思いながらもドアをドンドンするのは忘れない。授業が始まれば、俺達が居ないことに気づいたクラスメート達が探してくれるだろうが、早く出れることに越したことはないからな。
その後もドンドンと叩いていたが、ちょっと痛くなってきたのでいったん休憩。こんの野郎...思いながらドアを睨んでいると、すっと俺の手がいろはの手に包まれた。
「....みーくん...」
彼女の手は暖かいが、自分を見つめるその瞳は、不安に満ちていた。その瞳と、昔のいろはの姿が重なる。俺は、気づけば、いろはの身体抱きしめていた。
「大丈夫」
あの時みたいに優しく髪を撫でる。いろはも、背中に腕をまわし、弱弱しくだがしっかりと背中の服を掴む。
...うん。何か元気でてきた。
「ありがとういろは。少し落ち着いた」
先ほどまで感じていた焦りは既に鳴りをひそめ、俺の心は穏やかになった。最後にもう一度強く抱きしめてから離す。「あっ...」といろはから声が聞こえたが、いろはも(しぶしぶとだが)離れた。いろはの顔を見ても不安の色は見えなかった。
「ううん。私も、みーくんを支えたいから...」
ぐっと拳を握っていろはは言った。
「緑ー!いろはー!大丈夫かー!」
「きゃあーー!!」
急に外からドンドン!と物凄い音が響いてきたため、それに驚いたいろはが抱きついてきた。
「おわっ!」
俺もいろはの行動に反応できずに、いつもだったら受け止められたが、今回は勢いに負けてしまい、尻餅を付いてしまった。
「...っ!悲鳴っ...!緑っ、いろはっ!大丈夫かーーーーーーーあ?」
「あっ」
ガチャリとドアが開き、ものすごい表情で突撃してきた翔太だったが、俺達の格好を見て間抜けな声を上げた。そしてそのあとにやにやとした顔つきになってーーーーー
「おいおいいろは...流石に俺も予想外だったけどまさか本当にやるとはーーーー」
「ち、違うもんっ!!!」
「ぶへぇ!」
体育倉庫にいろはの声と、翔太の悲鳴が響き渡った。その後、教室に戻った翔太の左頬に立派なもみじがあったことに全員なぞを覚えるのだった。
「い...いてぇ」
「大丈夫か?」
俺はなぜ翔太がいろはにぶたれたか直接的には知らんが、「今日は友達と食べる!」と言っていた所、まぁ何かやらかしたのだろうとは思った。あそこまで怒るいろはも珍しい。
いろはがいないお昼を翔太と過ごす。そういえば、翔太と二人っていうのもなんだか久々だな...。
「緑はーーー」
「ん?」
突如名前を呼ばれたので生返事となる。翔太のほうを向くと、真剣な目でこちらを既に見ていた。
「緑はーーーいろはと二人でなんか感じたか...?」
翔太の言葉に先ほどの光景が脳裏に出てきた。それと同時に思い出すいろはの弱々しい雨の日の姿。
「----守りたい」
口を開けば勝手に出てくる言葉。なぜそう思ったかは分からない。だが、翔太はそれを聴いて満足げに笑った。
「その気持ち...よく覚えて置けよ。いつか分かる日が来る」
「いつか...ねぇ」
翔太が何を言いたいかは相変わらず分からない。だがしかし、なんとなくだが近いうちに分かる...そんな気がしていた
作者が思っているより早くこの二人くっつきそうなのですが...まぁその時はその時でうまく後日談とか書いて伸ばしたいと思います。
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パソコンで打つの疲れる....