博士の研究理由
男の二人連れが荷台を押しながら受付まできた。
「何時ものを納品したんでサインお願いしまーす。」
受付の人間は「あーはいはい。受け取りのサインするんでそこにおいといて下さい。後は自分達で運ぶんで。」と言いながらサインをした。
「えっいや、自分達が「わかりました、では御言葉に甘えてサインを確認したら我々は帰らせていただきます。」と言う言葉を言い終わらない内にサインされた紙を取って、もう一人の男の腕を掴み引っ張りながら出口の方に向かった。
腕を引っ張られた男は「えっ先輩、最後まで運ばなくて良いんですか?」と聞き
聞かれた男は、引っ張りながら「別に相手が言ってるから良いんだよ!だいたい俺達は配達屋じゃない、それに加えてあんなもん運んでるんだ。死んでるんならまだしも生きてるやつをだ。眠ってるってわかってても嫌だぜ。欲しがるあの博士もあの博士だよ、どうかしてる。」と答えた。
その声は施設内のとある研究室まで届いていた。
「散々な言われようですね~博士w」
「ふふっ。あながち間違いでも無いんじゃない?自分の親や子供、親友や恋人を殺された人だっているのよ。あれだけ人間を殺しておいて、何でこいつらを生かして置かなきゃならないんだって思う気持ちもわからなくもないわ。」
「ならどうして今回生け捕りが欲しいなんてわがままをいったんですか?」
「それはね、彼らを解剖して気づいた事があるからなのよ。尖った耳と鼻が無いだけで後は人間にそっくりな体の構造をしてるの
、それに防護スーツとかで体を保護してないのに体には何の影響も出て無さそうだったの。って事は彼らとは姿だけじゃなくて住んでる環境も同じか極めて似てるって可能性が高いでしょ。ちなみに彼らの体に付いてた細菌も地球上にそっくりなものがあったわ。」
「私はそれに運命を感じた訳。こんな広い宇宙で巡り合えたのなんてそれこそ天文学的確率ってやつでしょ。何でこんなに似てるのに戦争なんかしてるんだろって思ったわけ。」
「だからね、もっと相手の事を知れればこんな戦争終わるんじゃないかと思ってるの。」
「なるほど、なるほど。博士は戦争を止めて宇宙人とお友達になりたいと言うわけですか。」
「でも博士、いくらこっちがわかりあおうと思っても相手は応じてくれないかもしれませんよ。現にやつらは何の挨拶も無しにドッカーン!!ってやって来たじゃないですか。まぁ返す刀にこっちもおっきいのを打ち落とした訳ですけど。」
「僕ずっと不思議だったんですよ。映画とかでも普通なら警告や予告をしてから、滅ぼすなり征服するなりするでしょ。でも今回のやつって現れたと思ったら会話も何にもなくドッカーン。それにこっちを一方的にやっつけるだけの戦力も無かった。」
「今もそうでしょ。被害はむしろ相手の方が出てそうで攻撃の手もかなり緩まってきてるのに、こっちが働きかけてもまるで返答無し。意地でも僕らと話すかってぐらいの感じですよね。」
「だから、何でそんなに意地になってるんだろうと思ったんだけど先生の勉を聞いてなんとなくわかったんです。」
「きっと彼らは僕たちを理解したく無いんだと思います。攻撃が出来なくなってしまうから。彼らだって外見が似てることぐらいわかってるはずです。だから外見だけが似てるってことだけで理解を止めておきたかったんです。それ以上知ってしまったらもう戦争何てできなくなるから。」
「確かに、お互いの事を理解しあうのは戦争を終わらせる一つの手段かもしれません。敵対していたドイツとフランス、イギリスの軍がクリスマスの日に一つになれたようにね。」
「彼らはそれをわかっていても、ひくにひけないから事情があるからこうやって攻めてきてるのかもしれないって思えて来ました。」
「あなたって私が思ってたよりもすごい想像力が豊かだったのね。それがあなたの意見だとすると、私のやってることは意味の無いことだって思ってるの?」
「いえ。先生が彼らの事をわかろうとしていなかったら、僕は自分の疑問に対する答えを永遠に得られなかったかもしれないです。若者に戦争とか平和とか考えさせただけでも博士のやってる事は無駄じゃないですよ。」
「あなたが若者扱いされるほど、私とあなたの年の差に変わりはないような気がするけど。まぁお互いに何か学べたと言うことにしときましょうか。」
「さぁ、結構時間もたったしおしゃべりもここまでにしてさっさと研究に励むとしましょうか。」
「はぁーい」
そういうと二人は席をたって、戦争相手の元に歩いていった。