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チートなし ~ウサギの詩~  作者: デイジーケミカル
8/19

ウサギ女

翌朝 雷鳴で目を覚ました。


曇り空からざーっと雨が降り続いている。森は霞がかかってちょっと神秘的だ。雨音に混じって時々よくわからない動物の鳴き声がする。甲高い鳴き声が雨の中に響く。窓から荒れ放題の畑を見ているとカモシカのような獣が草を食べている。ノックの音。



「おはようございますご主人様。朝食の用意が出来ました。食堂においでください」


「ありがとう。あ、ちょっと ローズマリー、あれ、あそこ、動物が・・・あれ名前なんていうの?」


「まあ、あれはモリノウシです。とっても美味しいんですよ。ご主人様、狩ってもいいですか?」


「え、うん」


「ありがとうございます。この辺りの森は王家のですからいつもは公式には誰も狩れなくて、獲物がとても多いと聞きました。今はご主人様管轄の土地ですから。


 オレガノ、オレガノ」


「なんだい隊・・・メイド長」


「ほら、あれ、モリノウシ」


「おっ いいのかい?」


「今、許可をいただきました。夕食に使いましょう。雨だし楽でしょう?よろしくね。


  ではご主人様、食堂にどうぞ」


「今から狩るの?見てていいかな」


「はい、では私も見物させていただきます」


窓から外を見る。窓はそんなに大きくないからローズマリーちゃんが寄り添って並ぶ。肩がふれる。こんな可愛い人と俺は並んで立っている。雨の向こうでモリノウシは一心に草を食べている。大きな音を出すと逃げそうだ。雨の匂い。ローズマリーの匂い。どうやって狩るのだろう。魔法を使うのだろうか。


ひゅん


 と何かが飛んできて、モリノウシの首がスパッと飛ぶ。


「え」


ズンシャッ と森の木が揺れて木に溜まっていた大量の雨粒がザザ―っと落ちる。大木に大きな斧が刺さってる。


「命中ですね。 オレガノ!お見事!あとでカモミールにさばいてもらいましょう。回収よろしく」


わかった、と手をあげて雨など気にせずモリノウシのほうに歩いていくオレガノ先生。すげえ、なんかすげえ・・・


「あれは・・・斧だよね」


「はい、オレガノの銀の斧です。」


「メイドさんは斧を持ってんの」


「はあ、前職で少しだけ兵隊などをやっておりましたので」


「オレガノさん、兵隊だったんだ。やっぱそうか、キレイだけどちょっと強そうだもんなあ」


「あの、えーっと、そろそろ食堂に」


「ん、行こう」




馬鹿みたいに長い食堂の机の一番奥に座る。どうにも居心地が悪い。


「お待たせいたしましたあ」


たぶん待たせたのは俺のほうだ。申し訳ない。今日はカモミールちゃんがライ麦パンとスープを持ってきた。食器が小さく見える。なぜなら胸がでかいからだ。気のせいか昨日より少し胸元が開いてる。すごい。これが伝説の『タフン タフン』か。胸が揺れる擬音にプルンプルンとかゆっさゆっさとか色々あるが真なる巨乳はタフンタフンなのである。一体神はなぜこのような胸を


「カモミール、もういいわ。よくわかったから。」


「ん?ローズマリー、何?」


「いえ、お気になさらず」


「ええぇ、これからなのにい」


「カモミール」


「うう、わかりましたあ」



何だろう?俺の知らないところで今何か起きた。昨日より心なしか大きく胸元が開いてるカモミールちゃんが惜しくも退場していく。服がだらしないからローズマリーが怒ったのかな。そうなら許してあげて欲しい。胸チラしてもいいじゃない巨乳ちゃんだものみつを



「ご主人様、本日のスープはいかがでしょう。キノコはお口に合ったでしょうか」


「うん、これも美味しいよ」


「今朝早くにチャービルが森で採ってまいりました黒キノコでございます」


「そっかチャービルちゃんが。ありがとうって言っといてよ。あの子、びっくりするぐらい可愛いよね」


「 ・・・・・あの、ご主人様は、その わたしたちのようなウサギ女には何も感じないんですね」


「何も? いや、ウサギ耳 可愛いよね。ちゃんと可愛いと感じるよ」


「可愛い。ですか。」


「ローズマリーも他の皆も、きれいだしスタイルいいし、まったくよくこれだけ美人集めたよね」







「・・・・・ご主人様はご存知ないのだと思いますが、私たちのようなウサギ女はどこの国でも大抵は嫌われております」


「え なんで」


「さて、どうしてでございましょうか。私にはわかりません。人は自分と違うものを毛嫌いするのかもしれません。


先日、こんな事がございました。私たちがバークの城で掃除をしておりましたところ、少し離れた部屋でシャンデリアが落ちたのです。落ちたところには幼き第三王子様がいらっしゃいました。運悪くその王子様の指が 落ちてきたシャンデリアのせいでちぎれてしまいました」


「うわあ」


「そして誰かが呼んだのでしょう、そこに聖女様が駆けつけてまいりまして、聖女様というのはお城で一番の治癒魔法の使い手と皆から尊敬されあがめられている大変美しいお方なのですが」


「その人 会った事あるよ。美しいかどうかについてはコメントしないけど」


「それで聖女様が全力で治癒をするのですが、なにせ指はちぎれてしまってる上につぶれておりまして、元々幼い子の小さな指でありまして、これがなかなか元には戻らないのです」


「ふんふん」


「そこで、見るに見かねたチャービルが横から入って指を元通りに戻してしまいました」


「えーっ、チャービルちゃんすごい!」


「はい、魔力が豊富な上に人体の中を探るのが上手く、何より戦争の最前線で実際に多くの兵士を治してきた経験がありますので、私の知る限りチャービルの治癒魔法は大陸一です」


「チャービルちゃんも戦争に行ってたのか・・・え、ひょっとして、みんな?」


「はい、ですがそれはまた後で・・・ それで怒り出した右大臣様がチャービルを斬首にするのでそこに直れと言い出しまして」


「まって、話が飛んだぞ。なんでチャービルちゃんが首を切られなきゃいけないんだ」


「聖女様が治せなかったケガを生白いウサギ女ごときが治してはいけないのです。国で一番の治療魔法の使い手は聖女様でなくてはならず、他の方に譲ったとしてもそれは人間でなくてはならず、そんな高度な治癒をするウサギ女がいてはならず、バーク王国一の治癒の使い手がウサギ女であるなど許されないのです」


「・・・なんだよそれ」


「断っておきますが、聖女様は止めたんですよ。さすがに殺すことはないと。ですが立場的に強くは言えなかったようです。それで、右大臣が風魔法でチャービルの首を飛ばそうとしたので私とオレガノが防御に入りまして、そしてめでたく反逆罪で全員地下牢行きとなりまして、死罪など言い渡されまして、仕方なく脱走など考えておりましたところ、アオキユータ様が現れまして、人手不足の為に一時死刑を棚上げとして、私たちがこちらに回された、という次第でございます」


俺はもう、泣きそうになってしまって うつむき加減で悲しそうに微笑みながら話すローズマリーがいとおしくて 感情が昂って なんとかしたいと思って





気が付いたら彼女を抱きしめていた。







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