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チートなし ~ウサギの詩~  作者: デイジーケミカル
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なんとなく書き始めてみます

会社の帰り道、ビルを出て地下鉄の入り口前で地面が揺れたと思ったら山の中だった。


世界遺産レベルの原始林だ。森が暗い。でも夜ではない。さっきまで日が沈んでいたのに。


俺は全裸で立ち尽くしていた。


カバンも無く靴も履いてない。森は暑くもなく寒くもなく・・・いや少し涼しいかな。

状況がつかめない。あの時確か揺れて・・・頭の上に何か落ちてきた?はっきりしない。


苔むした石の上にしばらく座って考えていたがわからない。と同時に怖くなってきた。獣に襲われたら・・・いや、そもそも今自分は遭難してるんじゃないのか?

背中にチクりと痛みが走る。あわててその場を動く。どうもアブに刺されたっぽい。羽虫が体にまとわりついてくる。とりあえずじっとしてると刺されまくるので手で虫を払いながら歩き出した。


木々の間を歩いていく。道は無い。とりあえず楽な方に・・自然と傾斜を下って歩く。巨木が根を張り歩きにくいが下草だけで低木が少ないので藪コギはしなくて済む。これは手付かずの原生林の特徴じゃなかろうか。上空の巨木が茂っているので光が差し込まず低木が少ないんだ。これが人の手の入った森や地形的に開けた場所だと人の高さまで低木が育ちまともに歩けない。


しばらくすると崖に出た。下には川が流れている。底まではっきり見える透明度。美しい。水が飲みたい。どこかに崖を降りられる場所は無いだろうか。崖沿いに歩いていくうちに水面まで3mほどの場所を見つけた。水深もありそうだ。これなら飛び込める。流れもゆるそうだ。そのままドボンと飛び込んだ。一瞬だけ大きなイワナのような魚が逃げていくのが見えた。


緩やかに見えた川の流れは意外に速く、思った場所よりずっと流されて浅瀬にたどり着いた。


歩いてる間に足の裏がずいぶん傷ついた。体力も消耗。浅瀬に浸かったまま休む。本当は水につかりながら休むと体温を取られるのでよくない。だが両岸は切り立った崖で登れない。とりあえず水を飲もうと・・・この生水を飲んでも大丈夫なんだろうか?驚くほどきれいな水だけど・・・しかし飲まないわけにもいかない。手ですくって水を少し飲む。うまい。一口飲んだら一口も二口も同じだ、ごくごくと気が済むまで飲んだ。一息ついて考える。まず水から上がろう。このままじゃ寒くなる。目の前に高さ1mほどの岩がある。あの上に登ればいいんだ。


川底の動かせる大きさの石を集め足場を作って岩によじ登った。陽で暖められた岩が気持ちいい。空は青く風で木々が揺れている。仕事ばかりしてて、こういうの長い事見てなかったなあ。


足の傷を確認してて気が付いた。体が少し若くなってる。35歳の俺の体ではなく、まだ10代といった感じだ。バイクで転倒してついたヒザの傷が消えている。高校生ぐらいの体だろうか。どういう事だ・・・これが俗にいう異世界転生なんだろうか・・・?


だけど確実に俺だ。高校の時の俺だ。小太りで手足も見覚えがある。鏡は無いけど美男子に生まれ変わったわけじゃなさそうだ。腕の同じ場所にほくろがある。


安いラノベじゃあるまいしどういう事だろうか。脳に欠陥でもあって記憶が混乱してるのか、それとも夢か?魔法とか使えたらいいなあ。試しに「ファイヤー!」などと言いながら手のひらから炎が出ないかやってみたが何も出ない。そりゃそうだ。


腹が減った。魚を捕まえるにしても今のままだと火が起こせない。川魚を生で食うのは危険すぎる。とにかくこのまま川を下って河原を探そう。場所が無いと何もできない。


普通、山の中で迷った時、川沿いに下るのはかなり危険だ。小さな滝というのは下れても登るのが難しい。落差10mほどの大きな滝は下る事もできない。両岸が切り立った崖だと先に進めず引き返しもできず、どこにも行けずそこで死ぬ。だから滝に当たったら小さくても下ろうとせずに川から上がらなきゃいけない。


幸運にも滝に当たる前に川原を見つけた。流木もあった。少し体を乾かしてから枯草や枝を集めて火の準備にとりかかる。枯れ木で火を起こすのはやったことがある、無人島に流される映画を見て自分もやってみようと何度か試した。虫に刺されているがもういちいち気にしてられない。枯草をほぐし、木と木をこすり合わせて苦労する事2時間ほど。やっと煙が上がり火種ができた。それを枯草で包み慎重に息を吹きかけ育てる。もうもうと煙が出てきてボッと火が上がった!助かった。もう腕に力が入らないほど擦った。


大きな焚火を作ってから再び川に入る。サケ科の渓流魚は人影を感じるとすぐ逃げて岩陰に潜る。用心してエサも食わないので釣りはできない。人が立ち去っても数時間はジッとしている。それを逆手にとって、川に潜り、魚を脅かして魚に潜んでもらう。岩陰に潜んでいるイワナにそーっと近づく。岩の奥で逃げ場がないようなところだとそのまま掴んで獲る事ができる。なんとか日が暮れる前に1匹獲れた。しかしよく見ると・・・これ、イワナじゃない。マスの仲間の特徴を持っているが美しいコバルトブルーの斑点がある。新種のヤマメか・・・本当に異世界なのか。とにかく腹を裂いてエラと内蔵を出して皮をむいた木の枝に刺して焼く。塩が無いのが残念だが食えるだけでもありがたい。遠火でじっくり焼くのが好きだ。いい臭いがしてきたのでそろそろ食おうと手に取ったところで茂みから何かが飛び出してきた。気が付いた時にはもう目の前。


パニックになった。とっさに腕で顔を覆う。獣、オオカミか?でかい。 俺の左腕を噛んでゴキッと腕の骨を折ると俺を引きずっていく。


「があああああっ」

俺は痛みで叫ぶがオオカミは動じない。今度は別のオオカミが足を。そしてまた別のオオカミが右腕を。

4頭のオオカミが左右の手足を抑え5頭目が俺の首を噛んだ。首だけは甘噛みだ。動くな、という事だろうか。とにかく大きい。高さが1.5mぐらい、頭からしっぽまで3mはあるんじゃないだろうか。犬とはまったく違う。まだ殺されていない、殺す気ならもう死んでる。殺されない、俺は殺されないと自分に言い聞かす。それでも恐怖が収まらない。


動けずにいると、いつのまにかすぐ横に人が立っていた。ワラでできたミノのようなもので体を覆っている。木の杖を俺に向ける。

「●〇●◇●● ▽●▽●◇」

何を言ってるのかわからない。日本語じゃない。そしてその声は俺にではなくオオカミに話しかけてるようだ。俺は転がされうつ伏せにされて後ろ手に縄で縛られた。


「いっ! いてててて!」


そいつは「〇〇▽●▼●▽?」と俺に話しかけてくるが、もちろんわからない。

改めて顔を見ると女のようだ。若い。


「何を言ってるかわからないって。腕が折れてる。痛い。痛いんだ。ここはどこなんだ、あんた誰」


返事はない。女は珍しい物でもみるように俺を見ていた。

何度か胸や腰をペタペタ触られた。何かを確認してるのだろうか。

全裸だけどもう恥ずかしいとかそういう感じじゃない。


オオカミに無理やり立たされた。後ろから押してくる。歩けという事か・・・

女も顎を動かし 行け とだけゼスチャーしてくる。

仕方なく歩き出した。たとえ逃げてもオオカミより早く走る事は出来ないだろう。


足の裏と折れた腕が痛い。止まるとオオカミに押され、倒れれば引きずられて余計に辛い。仕方なく立ち上がり歩く。そうしているとやがて道に出た。森の中をずっと遠くまで直線の道が続いている。すごく直線なのに未舗装だ。


道のわきに石碑らしきものが立っていて、そこでオオカミは止まった。俺はその場にへたり込んだが特にオオカミからはリアクションが無かった。最初は休憩かと思ったが、どうも女は道の先を見つめている。何かを待っているんだろうか。石碑には文字が刻まれている。もちろん読めない。2文字だけだ。文字というよりマークかもしれない。


女は茶髪で顔は汚れているが白人系だろうか、切れ長の猫目で緑色の瞳。鼻筋が通っていて割と整った顔立ちだ。気が強そうな。年齢は20前だろうか・・・


やがて道の向こうから大きな鳥が現れた。ダチョウよりもずっと大きくて、ブラウンの体毛が生えていて頭には水牛のような角が生えている。この時、初めてはっきりと異世界だと確信した。こんな鳥は地球にいない。


紐でつながった2匹の鳥の前のほうに男が乗っていた。やはり白人系だろうか、顔の彫が深い。でも白人にしてはそんなに大きくない。麻の服を着て腰には剣があり背中には弓矢が見える。


こちらをじろじろ見てから女と何か話をしている。



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