DOKI☆WAKU☆話し合い 〜ヒカル〜
「だいたい…お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃない!そう呼んで何が悪いの!?」
あ…ヒカルのことを忘れていました。
「だってあなた、槐お姉ちゃんでしょ?」
「!!??」
…………えっ…
「目の色も髪の色も顔も違うけど。魂の色も仕草もそのままじゃない!」
ま ! ?
「最初は半信半疑だったわ。私の都合に良い夢だと思った。だって、お姉ちゃんがこんなとこで別人になって生きてるとか有り得ないって!私に………また優しくしてくれるなんて……」
えええええええ…!?わたくし、輝ちゃんを すごーくいじめたつもりですよ!?
「死んじゃった…お姉ちゃ、ん……が………」
ヒカルはポロポロと涙を零しました。
ああ、わたくし、今日 何人泣かせるんでしょうね…
「お、お、お…お姉ちゃん、お姉ちゃん…!お姉ちゃん!会いたかった!会いたかったよお!!お姉ちゃん…っ」
ヒカルはわたくしに縋って おいおい泣き始めてしまいました。
「お姉ちゃんが、死んだのに…アイツら……お葬式もあげないで…!「エンジュ様は神となった!」とか…ばっ、馬鹿騒ぎ、して……!!私っ!わたし…くっ、悔しく、て!」
「輝ちゃん……」
わたくしはヒカルを抱きしめました。
「輝ちゃん……いいえ、ヒカル。わたくしはエンジュなどと言う者ではありません。わたくしはディアナ。ディアナ・ランカスター公爵令嬢ですの。だから…これは夢で見た、可哀想な女の子のお話です……」
「お姉ちゃん…?」
「その子は、妹を とてもとても愛おしく思っていたそうですよ。その姉妹は、少し人と違った能力があるだけで親に捨てられ、巫女などと祀り上げられ、誰とも接することなく。たった二人きりの姉妹は言葉を交わすことすら許されず。姉は挙句にグレてギャル化。でも、あの日の夜に、もうそれはやめる気だったのです。……逃げよう、と。妹を連れて、ここから逃げようと」
あの日。
ギャルこと槐は、それはもう猛省していたのです。
こんな風に外見を変えたって、中身は つまらない小娘のままだ。逃げよう。そうだ、逃げよう、と。
そして、なんの躊躇もなく、妹を連れて逃げようと思いました。これ以上、あの子を教団の犠牲になどさせない、と。
自分が居なくなれば、輝は教団で大事にされる。
そう思っていたのに、現実はそう甘くはなかったのです。もっと酷い現実を目の当たりにしてしまった私は…あの日、賭けをしたのです。
今日一日、誰も声をかけて来なければ……やめよう、と。
もう、逃げるのはやめようと。
二人でなら、生きていける気がしていた。
二人でなら、教団から逃げ切れる気がしていた。
そして、一人で死んだ。
ああ、なんと愚かな姉か。
「わたくしは あなたの『お姉ちゃん』ではありません。ですが……ええ、ですが、わたくしを実の姉だと思って頼ってくださいませ。わたくしは あなたのことを妹のように可愛いと思っていますから」
「おっ、おね……おねえ………!お姉さまアアアアアアア!」
おっと鼻水が。
わたくしは涙と鼻水で ぐしゃぐしゃになったヒカルの顔にハンカチーフを当てました。
感動のシーンですが、汚いものは汚いのでございますよ、ええ。




