家族です
「ねぇ、貴方はどうして私に会いに来たの?」
「・・・え、お父様から聞かなかったのですか?」
紫月くんがキョトンとした顔で私を見る。
コクリと頷くと、紫月くんは大きなため息をつく。
「これも一から説明しなければいけないみたいですね・・・・・・」
「ご、ごめんね・・・私、本当に何も知らないの」
「いえ、貴方が謝ることではありませんよ。もう・・・僕が来るまでに説明することになっていたのに・・・だから何もかも知らなかったんですか・・・・・・」
なんだか紫月くんに申し訳ない気持ちになり、私はあとで父に散々文句を言ってやろうと決意する。
あわよくば土下座させてやろうか。
などと考えていると、しばらく悩んでいた紫月くんが顔を上げ、口を開く。
「その・・・実は、ですね・・・・・・僕、天花寺家で一緒に暮らすことになったんですよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
想像の斜め上を行く重大発表に、思わず尻餅をつきそうになる。
が、すぐに体勢を立て直し、紫月くんの華奢な肩をガッと摑む。
「ど、どどどどどういうこと!?一緒に暮らすって・・・え!?それはその、紫月くんが家族になるってこと!?」
「ちょっと・・・痛いです、桜花さん・・・・・・詳しく話しますから力緩めてください・・・」
「あ・・・ごめんなさい!」
慌てて紫月くんから手を離すと、紫月くんは軽く自分の肩をさする。よっぽど痛かったのだろうか。
「まあ、この度は天花寺家の一員になるわけです。ここまではOKですね?」
「OK。理解したわ」
「で、理由なんですけれども・・・ほら、日本って人間のクローンを作成することが禁止されているじゃないですか」
「ええ、そうね」
「ということは、僕は条約を犯した上で作成されているんです」
「ほうほう・・・」
「当然僕の存在が知られたら伯父様は逮捕ですよ、逮捕。・・・そうならないように、僕が天花寺家の人間として暮らしていれば、それを隠せるんじゃないかという・・・」
「あのクソジジィィィィィィ!!!」
「へ!?」
紫月が説明し終わる前に、私はキレていた。
驚いて固まっている紫月くんに歩み寄り、また肩を摑む。
「ちょっと、今あいつどこにいるの!?100発殴らせなさいよ!!ここまでしておいて捕まりたくないなんて、ナメてんのかクソが!!!」
「お、落ち着いて!口調が荒くなってます、ホント落ち着いてください!って、痛い痛い!!これからお父様のところに挨拶しに行かなきゃいけないんです!」
私の怒鳴り声と紫月くんの悲鳴が、辺りに響き渡った。