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霊感微少女の夏  作者: 慶
9/25


「へーこんなお祭りがあったんだー」

「……」


 我が家では、今、地元のお祭りを調べる、自由研究を行なっています!

 夏休みと言えば、自由研究だよね?

 やるかやらないかは自由だけど、やっとくと成績の評価にプラスされる素敵な課題なので、夏休みに余裕がある人はぜひ、挑戦しよう!


 なんて、誰にいうワケでもない自由研究のメリットを浮かべて現実逃避している、この部屋のぬしである私。

 ・・・とても坂本くんの視線が痛いです。


「……」

「……」


 無言の圧に耐えかねて「だから、事前に連絡しといたでしょ!」と視線に意思を込めて強く返す。


「……」

「……」


 一触即発なんて言葉が似合う、無言の弁明は

「すみませーん!堀江いますよー!二人の時間作らないで下さーい」

 大げさなリアクションと共に、目で語る私たちを一刀両断する一美。

 と、言うか

「ばっ、違うって言ってるでしょー!」

 力いっぱい否定する私を横目に坂本くんは

「……」

 まさかの無言。援護射撃なし!

「坂本くんも否定してよっ!」

「…めんどくさいし」

 なるほど。坂本くんらしいな、なんて力が抜けるけど。

 いや、でもさ、否定しないと、なんか間違った情報が広まってしまうワケであってね。

 忙しなく脳内では会議が開催されてあたふたとする私と対照的に、悟りを開いたかのように落ち着いた坂本くん。

「あははっ。あー面白い」

 一美は吹き出すように笑った。


 くそぅ。私の反応みて楽しんでるわね、一美のヤツぅ〜!!!!


「それにしても、トミーの広間なんて久しぶりよね」

 そう私たち3人は、私の部屋ではなく、広間を使って作業をしている。

 2人の時は私の部屋でしていた作業も、3人で資料を広げて見るには狭い。

 ひとしきり私の反応を楽しんだ一美は、まとめた資料を眺める。


「ふーん。結構、調べてあるね。やっぱり昔になると、グッと情報が減るわね」

「そうなのよ…他にもあるとは思うんだけど」

 そうは思うけれども、個人、いや学生が調べられる限界かべがあるようで、情報が足らないのではないか、とまだ不安が残っていた。

「そうだね…にしても、なんで8月〜10月なの?」

 ギクリと嫌な汗が流れそうになりつつも、当然のように言葉を繋げる。

「そ、それは、この時期がお祭りが集中しているし、年間で追うのも大変じゃん!」

「なるほどねー」


 一美がちょいちょい質問する内容は当たり前といえば、当たり前の質問だけど、突かれると説明がしにくいところなので、心臓に悪い。


「ま、とりあえず、一美はここから調べてもらっていいかな?」

 開催時期や場所の情報が少ない箇所を指して、検索結果などを書き込んでもらう。

 そのことを確認してから、一人で黙々と作業をしている坂本くんに近づいて、小声で話しかける。

「メールで連絡した通りなんだけどさ、どうする?」

 小声と言えども、私たちが話しているのは一美からは見えるだろうけど、今度は見逃してくれているようで、何も言わずに作業を続けている。

「…別にこのままでもいいんじゃないか?情報を調べてもらうには人手は必要だったし…」

 それは確かに必要であったので、一美が参加することに言葉で了承を得られたことに胸を撫で下ろしつつも、もう一つの疑問も投げかけてみた。

「やっぱり、坂本くんの”アノ事”は言わない方向、だよね? その、一美は理解してくれると思うけど…」

 大きなお世話って言われるかもしれないけど、変に誤解されたままでも、誤解したままはよくないって思う。

「…信用してないワケじゃないが、今、言うべきことでもない」

 私の心配とは別に、何事もないように答えた坂本くんは淡々とはしていたけれど、突きかえすような冷たい感じではなかった。

 それは坂本くんらしい言葉だし、それに、信用はそれなりにしてくれているのだろうと言うことも分かったのが嬉しかったから

「わかった」

 それ以上は何も言わずに、私たちは作業に戻った。 

 まぁ、奇異な目で見られてしまったり、イヤな思いもしたことがあるのだろう。「お寺の孫娘」として扱われることが多い私としては、理解できないことでもない。本人がそう言うのならば尊重したい。


「あー!!!!」


 突然上がった一美の声に驚いて振り返る。


「ねぇねぇ。見て、面白い記事が引っかかったよー」


 そう言って、書き込まれた情報に坂本くんと私は顔を見合わせた。


 一美が見つけた記事というのが「桜川祭り 中止」という記事。

 ただそれだけだったら問題がないのだが、個人のブログ記事に書かれていた内容。

 それは夜な夜な幽霊が出るという噂と事故が多発していて、中止になった。という記事であった。

 

「面白いねー。心霊で中止なんて。実際中止したかどうかは分からないけど。

 でも…開催したって記録はなさそうだし…中止したのは確かなのかも?」


 確かに記録はなかったし、目にしたような記憶もなかった。


「まあ、地域限定のお祭りだったっていうのもあるかもしれないけど、同時期に他でお祭りやっているし、やっても、やらなくても支障はなかったみたいね…それにしても心霊おばけで中止なんて…昔の人ほどってことなのかねぇ」


 言葉にしなくても、私と坂本くんはその記事に一つの可能性を見いた出していた。

 まだ事情を話していない一美がいる間は、そのまま祭りなどのイベントを調べて書き込む。という作業を続けた。


 夕方17時。町内のスピーカーから童謡が流れる。


「あ、やば。うちに帰んなきゃっ」

 一美は慌てて、荷物を片付けはじめた。

「俺も…」

 同様に立ち上がり片付けをはじめる坂本くんをみて

「え、帰るの?ゆっくりしていけばいいのに」

 この言葉は私の発言ではない。

「一美っ。それは家の主である私が言うセリフだし、さすがに夕方までいるとかおかしいでしょう!?」

 呆れ半分なツッコミを入れる。

「またまた〜ホントは二人っきりになりたかったんでしょ?」

 ご近所の井戸端会議よろしくなノリの一美に

「んなワケないでしょ!」

 と雷を落としたのは言うまでもないことだと思う。


 もちろん、一美と坂本くん、二人とも帰ってもらいました。


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