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「えっ違うの!?てっきり、坂本くんと付き合っているのかと」
意外そうに声を出す一美の気持ちが分からないワケでもない。
基本的に寡黙で、あまり人と関わらない人が、急に、人と、しかも女子と一緒に行動していたら、そう思うのも仕方がないだろう。
「なんだーつまんないのー」
部屋にあるクッションにもたれながら出しているその声はとても楽しそうだ。
「いやいや、つまらなくないって!いや楽しいことでもないっていうか!!」
きちんと否定したいのだが、なんか、うまく言葉が出なくて、あーもどかしい!
「でさ、実のところ、どうなの?好きなの??」
女子というのは恋話が好きな生き物である。
「好きとかじゃないよ。友人としてイイ人だとは思うけど」
無論、私だって、自分のことじゃなければ、嬉々として聞いていることでしょう。
そう!自分のことじゃなければね!
しかも、本当に友人関係であるって言うのもなんとも、否定しても理解してもらえないのは想像に容易い。
なるべく、そういう時は、冗談のような会話でなく、真面目な表情で答えるに限るっ!
「じゃ、なんで最近一緒にいるのよ?」
はい、きました。この質問。そうなるよねー。私もそう思います。
素直に「私に取り憑いた霊の人探しに付き合ってもらってます」と言いたいところではあるけども、私の霊感うんぬんは幼馴染の一美は知っているに近しいので、奇異の目で見られることはないだろう。
しかし、坂本くんはどうだろうか。他人に「霊が視える」と話しているのだろうか?
・・・きっと誰にも言っていないだろう。それを私が勝手に言うのは、なんか違うに思って、気が引けた。
一美を信用していないわけじゃない、きっと「そうなんだね」と笑って受け入れるだろうけど、自分が秘密にしていることを他人に、知らない内にバラされていら気分が悪いだろう。
もし、自分だったら、嫌だ。
たとえ、このことを受け入れてくれている人であっても。
「…夏休みの自由研究で、このへんの地域の歴史でも調べて見ようかと、それで、たまたま喋る機会があって、その話をしたら、一緒に調べたいってなったの」
今、散らかっている資料を含めて、辻褄が合うような事情を話した。
思いもしなかった状況なのに、その場での突貫発言にしては、ギリギリセーフラインに入っていると思う。
ドキドキしながら一美の反応を待つ。
「へーなるほど。だから、新聞とか白黒の資料があるんだね」
机周辺にある資料を見て、納得してくれたみたいね、よしよし。
「でも、坂本くんから参加したいって言うかな…」
ほっとしたのも束の間だ。
「そ、そこはっ、どうせ興味があるなら参加しなよ!って言ったのよ!」
間髪入れずに言葉を続ける。
「あー。トミー意外と強引だもんね」
一美を意外と聡いと言うか、無意識に急所を突くから、侮れない。
次にどんな爆弾発言があるのかと、ヒヤヒヤしていると
「あ!じゃあさ、私もその自由研究、参加してもイイ?」
本当に一美は侮れない。