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「うぅ…なんか…すごく疲労感やばい」
目指している野球チームの練習場に来た私たちは、駐輪場にバイクを止めて、近くの自販機でドリンクを買って、休憩している。
むしろ休憩をもらわねば、歩き回るなんてできない。
初めてのバイク。
見える景色は、車から見える景色と違って、風と音とともに感じることができて、最初は坂本くんの背中ばかり見ていたけれど、途中からは、多少の左右に顔を動かすことができて、楽しかった。
でも当たる風が気持ちい!なんて言うのは、フィクションであって、現実はまぁまぁに痛い。し、スピードもめちゃくちゃ感じて、え?このスピードって有りなの?って、信号待ちした時に聞いたら「法定速度は守っている」とのこと。
そっか。車は箱になっていて色々守られているけど、バイクで、身一つで乗りこなす乗り物なんだよね。そんなことを再認識しつつ、目的地に着いた。さぁ降りましょう。という時には、心と裏腹に、意外と緊張もしていたようで、足はまるで、生まれたての子鹿ちゃんのようにふるふるとおぼつかない足取りになってしまったことは仕方がない。
「原付…慣れないと疲れるかもな…」
と真面目に言う、坂本くんが微妙ににくい。
そうじゃない。それだけじゃないんです。
とりあえず、ジュースを飲みながら、実名型SNSから見つけた情報と、彼が参加しているであろう、少年野球チームを探す。
土手の広がる複数の運動スペースにユニフォームを着たチームがそれぞれ試合をしていた。
ただの一般人であったら難しかったかもしれないが、スポーツにはユニフォームがつきもので、遠目でも、色やデザインの入り型で簡単に見分けることができる。
「…いた」
夏は暑く、遅くても昼頃には熱中症対策で、試合終了。解散してしまうため、昼前には着くように早めに出ていたが、間に合ってよかった。
まずは、第一関門クリアだ。もちろん、会うのが目的だけど、見ず知らずの子供が訪ねるって不審極まりないでしょう。
今までは、皆、いい人だったけど、今のご時世、そんなことばかりじゃない。
なので、今回の関門は3つ。1つは野球チームを見つける。2つめは平木さんを見つける。3つめは平木さんと喋る。
でも、少年野球チーム。大人の数は少ない。そんなに難しいことではないが、簡単でもない。
坂本くんとお互いに、お目当のチームを見つめる。
「平山さんらしき人いるかな?」
「どうだろうな…キャップを被っているし、陽射しをも強くて影が濃い。難しい。」
言葉の通り、本日は嬉しいような困ったような…快晴であり、日差しがさんさんと降り注いでいる。
そのため、キャップをかぶる人の顔は、黒く塗りつぶされたように、判別が難しい。
まるで、穂花さんが見せる夢のように、顔がわからない。
「よね…」
その場に立っていても意味がないので、土手の上にある歩行道を歩きながら、チームに近づく。
そうして、真横まで到着すると、土手の上からチームを観察する。
このままでは試合終了!解散!って、なりかねない。
ユニフォームを着た大人もいるけれど、応援に来ていたり、サポートしていると思われる私服と大人たちもいる。
私服を着ている人であったら、しゃべることが可能かもしれないし、聞き込みして、今日、平木さんがいるかどうか確認した方が良いような。
でも、野球のことを女子が聞くのは、ちょっと不自然かもしれない。
高校野球なら、ファンの子って感じになるけど、少年野球になると…野球をはじめようとしている親か、野球が好きな少年、男子が聞くのが、妥当だよなぁ。
しかし、そうなると。坂本くんが聞き込みというか、他人とオシャベリできるのだろうか。
私の家や一美の家は、一応、クラスメイトの家で、それをわかった上で家族も話して来てるが、この寡黙な男子が、全く関わりのない集団と会話。
・・・・想像が沸かない。
「…確認するか…」
ポツリとこぼした言葉は本当に小さくて、聞き間違いのようにも思った。失礼だけど。
「え、か、確認?」
「…神崎が行くと浮きそうだからな…そうなると俺が聞くのが一番自然だろう」
「そ、そうだけど…だ、大丈夫??」
私がいうのもなんだし、それ以外の解決策もないからやるしかないんだけど、心配せずにはいられない。
「…問題ない」
いつも通りの淡々とした返事に、一抹の不安を持ちつつも見送ることにした。
「じゃ、じゃあ、行ってらしゃい」
そう送り出して数分後、その不安は現実のものになる。




