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霊感微少女の夏  作者: 慶
20/25

20

 翌朝。私は玄関前で立ち尽くしていた。

 目の前に見えるのはバイク。と、運転手。

 ヘルメットで顔はよく見えないけれど、坂本くんであることは間違いない。

 我が家にバイクで来るような友達は、今のところ、坂本くん以外いないから。

 正直、想像していたよりは音はうるさくはないが、いつも目にする原付よりふた回りほど大きくて、音も低音が響く。

 それに、家の前にバイク乗っている男子がいるって、なんか…あれだよね。


「富子、彼氏か?」

 父が勘違いするもの仕方がないことだと思う。

「違うっ!友達だってば」

 すぐさま否定したけど

「まさか不良ヤンキーと付き合うとは…予想もしていなかったよ」

 しみじみと呟く内容は時代錯誤もいいところだ。

「やめてよ、その古い考え方。原付=不良ってのは、全部じゃないしっ」

 田舎の若い人にとって、たった数年であっても原付という長距離移動可能なものが必要なのだ。

 自転車での移動ではたかが知れているし、バイトだって難しい。


「アナタ、やめてあげて下さい。富子は照れてるのよ!

 親として見て見ぬ振りをするのが一番。その内にきっと紹介してくれるわよ…」

 そうよね?と言わんばかりに肩にそっと手を置かれて、暖かい、いや、生暖かい目で見て来る母。

 だめだ。我が家はもうだめだ。別の意味で頭が痛い。

 父も父だが、母も母で見当違いな話をしはじめているし…いや、あのね、見てるからね。

 ヘルメットしてるし、ゴーグルも着けてるし?気持ち遠くにいるから見えないのかも知れなけど。

 以前、会ってますからね!


 もはや、言い返すのも訂正するのも馬鹿らしくなってきたので、おとなしく出かけることにした。


「いってきます…」

 こんな時でも、長年培ってきたものはなくなりはしない。挨拶大事よね。


「遅くなる時は連絡して頂戴ねー」

 朝に説明したけれど、日帰りだからね。

「お、お泊まりは許してないからなっ」

 何を想像しているんだ父よ…思春期の娘に何を言っている…


 だからね、友達なんだってば…出発前にエネルギーを吸い取られた気分。


 すでに足が重くなりながら、力なく挨拶をする。

「おはよう」

「…おはよう。なんか疲れてないか?」

 バイクに寄りかかるように立っていた坂本くんは、不思議そうな顔をしながら挨拶を返す。

「気にしないで…両親の勘違いっぷりにパワーを吸い取られただけだから」

「…?…わかった…」


 さて、気分を変えて、バイクに乗ろうとすると、ストップをかけられた。

「あ、待って」

 座席の下。カバーを開けるとヘルメットが入っていて、それを渡された。

 やはり見るだけと、運転するのは違う、と思った。

 当たり前のことも忘れてしまう。

 それに意外と、バイクに乗れることにテンションが上がっているのかもしれない。

  

「着けて」

「わかった」


 見た目やイメージしてたヘルメットより、意外と重みを感じて驚いた。もっと軽いと思っていた。

 顔の下にアゴ紐を回して、カチリと音がして装着完了。

 左右に頭を振るのも、ヘルメットの重みでグラグラと振り回されそうになる。

 坂本くんは、私がヘルメットを装着したのを見て

「ちょっと、真正面見てて」

 近づくと、身長差があるので、かがんで覗き込むようにして、ヘルメットが緩くないか?とか、紐の長さを確認してくれている。乗ったことがない初心者だし、さっきもうっかりヘルメットをつけずに乗ろうとした私だから心配しくれたのは嬉しいんだけど…ち、近いです。

 めちゃくちゃ顔を見らている気がする…視線は真正面に向けることができず、アスファルトにできた自分の影を見て、坂本くんチェックを乗り越えた。


 ズレなさそうだな、と満足したのか、次は、やっとバイクにまたがる時がきた。

「後ろ、乗って。俺支えているから気にせずに思い切って乗って…」

 と指示されたが、意外と高くて、足が上がらないっていうか。

 念のため、言うのであれば、どちらかというと私は小柄の方の部類であるからであって、決して足が短いわけではない。

 足が上がっても、体が持ち上げることができず、不安定でヨタヨタしてしまう。


 あまりにも時間がかかっているのを見かねたのか、耐えかねたのか…


「神崎、そのままで…」

 体を持ち上がらない私の腕を掴み、ヒョイと引き寄せ、乗せてくれた。

「あ…ありがとう」

「そのまま、俺の腰に手回して」

「う…うん」


 なんだか恥ずかしくて「これは自転車の二人乗りと同じ」「友達とよくやるやつ」と脳内で言葉を繰り返していた。


「神崎もっと…力強く抱きついて…落ちるよ」

 今度は両手をそれぞれ掴まれ、坂本くんのお腹まで手を重ねられる。

「あぁああ。うん。」

 動揺して声が震える。

 それをどう思ったのか

「…なるべく、安全運転で行くけど、絶対、手を離さないで…」

 とイケメンよろしくな発言をして出発した。


 そのあと、初めての原付。二人乗り。であるが”安全運転とは?”と言う言葉を投げかけたくなるのは1時間後のことであった。


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