オネェ魔族再来
◆◇◆訓練場◆◇◆
訓練場に向かうと三組に分かれるように言われた。
おそらく一人の教官が十人を教えるのだろう。
分け方は物理戦闘系と魔法補助系と生産系らしい。
俺の石ころは物理戦闘系だが魔法も使えるし生産も出来る。
どうやら戦闘系は騎士団副長がやるらしい。
あの女では無いのは王様が気を使ってくれたのかな?
でも、石ころで物理戦闘系はちょっと恥ずかしいからパス。
ミーシャは初めから【剣術】は持っていたからミーシャを行かせる。
魔法補助系はベテランの魔導師が教えるらしい。
だけど、愚者の書の使い方がわかる魔導師は王城にはいなかったんだよなぁ。
だとしたら残るは・・・
「生産系の担当してます・・・はぁ、やっぱり誰も来ないよね」
「俺は生産系を学びますよ?」
「いいんだ、慰めてくれなくて・・・どうせ僕なんか・・・」
「・・・」
「僕なんか、はぁ」
果てしなく面倒臭い教官だ。
とりあえず殴るか。
メガネの色白で非弱そうなので手加減して・・・
「めんどくせぇ!!」
「ハベブッ!!なんで殴るの!!」
「俺は生産系だっていってるだろ!!」
「え?まじで?」
「だから教えて下さいよ」
「あ、はい!!少々お待ちを・・・」
教官は城に大急ぎで戻っていった。
にしても・・・生産系が俺以外いないってどういう事じゃい。
◆◇◆数分後◆◇◆
「お待たせしました!!」
教官は素材がわんさか入ってる箱を持ってきた。
今まで見た事ない素材なので森には生息しない魔物だろう。
「まず、自己紹介させて頂きますね、僕は生産系担当にされたレストです。生産系のスキルは調合と裁縫です」
「アシュレイです、生産系のスキルは調合、骨合成、素材鑑定、鍛冶、裁縫です」
「多いですね、まぁ、それは置いといてコチラの素材をベースに生産系スキルで加工して別の防具に変える作業をして下さい」
なるほど、練習ようの素材だったか。
「素材が全て終わったら教えて下さい、また用意するので」
「スキルをレベル上げまくれって訳ですね」
「そういう事です、失敗する事も多いですが頑張っ!?何してるんですか!?」
俺は素材を石ころに吸わせまくった。
レシピを増やす為だ。
「これが俺の生産系のスキルの使い方です」
「あぁ、確かに勇者の力は我々とは少し違うと言ってましたね」
黙々と素材を吸わせる。
素材が被っているのは吸っても意味が無いので残しておく。
素材を全て吸わせるとこれだけ増えた。
鉄を吸わせた結果
【鍛冶レシピ】
【鉄の剣】
【鉄の槍】
【鉄の斧】
【鉄の盾】
【鉄の鎌】
【鉄の鎧】
【ライトアーマー】
【魔法】
【アイアン】
一つあった魔物の核(魔石)を吸わせた結果
【付与魔法(新しく増えた)】
【硬化】
何かよくわかんない皮全部吸わせた結果
【裁縫レシピ】
【ホワイトウルフのコート】
【ブラックウルフのコート】
【皮のベルト】
【ブラックウルフの革ズボン】
【シルク】
【カーディガン(色変更可)】
【綿】
【ヌイグルミ】
【絹の服(構造変更可)】
「スキルレベルは適当に使っていけば上がるか、まずはミーシャのブラウスの上に羽織るカーディガンと普段着を作るか」
とりあえず五着作ったら【裁縫II】が増えた。
「鉄の武器が作れるなら国に売って欲しいものですね〜」
「いったな?俺、小遣い稼ぐかんな?」
「え?」
鉄の剣と鉄の槍と鉄の鎧を三十個ずつ生産した。
未来で剣を大量に作ったから【鍛冶II】になっており、質も上がって消費魔力も減っている。
そして途中で【鍛冶III】になったのでさらに質が上がった。
「なんだろう、僕が教官なのに」
レストさんは山済みになった鉄の装備をみてそう言った。
俺はその間にミーシャの普段着を作っていた。
結局、鉄の装備は一つ300クリスタで買われた。
ビルスの宿に百回以上泊まれるじゃないか。
◆◇◆チキン平原◆◇◆
午前の訓練を終え、俺達はチキン平原に来ていた。
敵が雑魚とは言え勇者もレベル1という事で、もしもの事を考えて十名ほどの兵士と治癒魔法師を数名連れてきていた。
その治癒魔法師の中にはティアの姿があった。
「夕方までこの平原でレベルを上げてもらいます、怪我をしたらすぐに言ってください、それでは解散!!」
騎士団副長が言うとそれぞれ武器を手に取って魔物を倒しに向かった。
その後でティアがコチラに向かって歩いてきた。
「あ、あのアシュレイ様ですよね?」
「あぁ、そうだよ」
「なんで私の事を知ってたんですか?」
まぁ、普通はそうなるよな。
勇者って相当強い存在だって言われてるらしいし、そんな存在から指名されたら普通驚くよな、面識も無いのに・・・
「君に命を救われた、悪いけど今はそれしか言えないんだ」
「命・・・ですか?」
「何を言ってるか分からないかもしれないけど、今はそれでいいんだ」
「わかりました、アシュレイ様がそういうのであれば」
「ありがとう」
「ぱぱー、早くいこー」
話をしているとミーシャが早く行こうと急かす。
「ミーシャ、その前にこれを渡しておくよ」
「これなに?」
俺がミーシャに渡したのはライトアーマーだ。
軽鎧のなので、ミーシャでも着れると思うのだが・・・
魔力もそれなりに込めたから耐久性はかなり高いはずだろう。
「これはな、ミーシャが安全でいてほしいから作ったんだ、着てみてくれ」
「うん!!わかった!!」
やはりサイズはバッチリのようだ。
よかった・・・
俺は後方で石ころを飛ばすだけだから上に絹の服、下にブラックウルフの革ズボン。そしてブラックウルフのコート。
適当に作ったので性能はミーシャのライトアーマーより低いがそこら辺の鎧よりは性能がいいはずだ。
「じゃあ、行こうか」
「はい!!」
「うん!!」
と、言ってもこの辺りの魔物だったら俺のレベルは上がらないから、ミーシャ達のレベルを上げることになるだろう。
◆◇◆一時間後◆◇◆
一時間の間、ホーンラビットを100体以上は倒した。
俺が止めをさすと経験値の配分が俺に多くなるので、ホーンラビットの角を石ころで破壊してからミーシャに倒させた。
なのでミーシャはもうレベルが十六になった。
ホーンラビットの生態系は大丈夫か心配になったが、地球の動物とは違い魔物とは繁殖力高いらしいので倒せるぶんだけ倒した方が良いという。
ホーンラビットを百体倒すとミーシャの【リセット】の【ポイント】が二百増えていたので、剣術を上げる。
「剣術が最大4まで上げられるな・・・」
なんで剣術を4まで上げられるのか仕組みは分からんが損はしないだろう。
【剣術IV】にするとポイントが六十減っていた。
まだポイント残ってるからいいけど・・・
「さて、またホーンラビットを「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
突然響き渡る叫び声。
声の方向は王都の治癒魔法師と兵士さん達が待機している所だ。
「ア、アシュレイ様!!どうしますか!?」
「ぱぱー、いく?」
「何かあったのは間違いない、とりあえず様子を見に行くから安全な所に隠れてて!!」
俺は叫び声のした方へ、石ころと共に向かう。
ーーしばらく走って見えてきたのは・・・かつてのオネェ。
「そっか、アイツも蘇ってるのか」
「あらぁ〜、新しい獲物かしら?」
「クッ、アシュレイ逃げろ!!」
「ソウスケか、大丈夫か?とりあえず・・・【猛毒属性】行使」
おかしいな、ここでは先生とオネェが戦ってオネェが疲労してる所を俺が倒したのだが・・・
なんでオネェが超余裕でソウスケが満身創痍なんだ?
あ、そっか。
ソウスケが生きてるから未来が少しずつ変わってるのか。
でも、このままじゃソウスケが死ぬのは確かだ。
「可愛いお顔ねぇ〜君のなブホッ」
「まず定番の顎!!」
「ホゲェ!!」
「口に中に入ってるな、よし。【ファイアIII】行使」
未来で魔物の大軍に王都を襲われた時に、ファイアIIを使いまくったおかげでファイアIIIになったのだ。
その威力は・・・
バーン!!
火の玉を越えて火の渦が現れる・・・
それを口の中で使ったのだ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「自称魔族のオネェ、さようなら・・・」
手を合わせて「卑怯なことしてごめんね」と言っておく。
オネェが死んだ・・・と思っていたらオネェの胸から謎の光が飛び出てこっちに向かってくる!!
「はぁ!?なんだあれ!?」
石ころで弾こうとするが、まるで幽霊のようにすり抜けて向かってくる。
やべぇ!!と思っていたら、その光は俺の持っている愚者の書に入っていった。
「・・・え?」
何が起こった?と考えていると愚者の書が勝手に動き、ページ6が開かれていた。
「・・・ん!?新しい魔法陣!?」
ページ6には新しい魔法陣が描かれていたのであった。
「えっと、ラバーズ?」
ページ6の上には【ラバーズ】とだけ書かれている。
訳が分からない。
新しい能力なんだろうが・・・
「能力の詳細無いのかよ・・・ま、この能力は詳細が分かるまで保留だな」
「アシュレイ・・・今の力は・・・?」
俺が考え事をしているとソウスケが声を掛けてきた。
おそらく石ころの事だろ。
「あぁ、これが俺の能力だ」
「そうなのか・・・強いな、グッ」
「お、おい、大丈夫か!?」
俺はソウスケに治癒魔法をかける為にティアを大急ぎで呼ぶ。
そしてティアの治癒魔法で何とか傷を塞いで一命を取り留めたのであった。