表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/28

おかえり

王の間に俺と王様だけが残り、面と向き合っていた。


「それで王様、【鑑定】はもう使ったのですか?」

「お主、どこまで知っておる・・・それにその魔導書は・・・」


王様は俺の手に持つ愚者の書を指さす。


「愚者の書ですか?貴方に貰ったのです」

「貰った・・・?」

「はい、貰いました」

「お主、その愚者の書の所有者か?」

「はい、この通り」


俺は愚者の書を簡単に開いた。

その様子をみた王様は酷く驚いた様子だ。


「所有者が現れたとしても宝物庫の物をそう易易と渡す訳がなかろう、相当大きな貸しでも無い限り・・・」

「貸しはありませんが、王様の部下に奪われた物ならあります」

「・・・申してみよ」

「まず、爪」

「爪・・・?」

「はい、全て剥がされました、玉座の後ろで待機している騎士団長に」

「・・・ライラ、出てこい」


王様が言うと、予想通り玉座の後ろから騎士団長が出て来た。

この女、久しぶりだなー。


「私が何故貴様の爪を剥がさなくてはならない!!それにお前の爪はあるじゃないか!!」

「爪だけだと思ってるのか?」

「・・・なに?」

「身体中の骨を砕かれ、仲間との思い出も奪われ、人生そのモノがメチャクチャになったんだぜ?」

「そんな事私は・・・」

「してないだろうな、だって未来の話だもんな」

「未来と言うが、仮にお主が未来から来たとして何があった?」


王様は俺に聞く。

王様には話してもいいが、ただで話すのは何だか癪だ。


「答えるのは三つの質問だけ、それと条件をださせてください」

「・・・なんだ」

「ティアと言う治癒魔法師見習いと俺は魔王討伐したいのです」

「ティア?ワシの耳にはそのような者は入って来ぬが・・・」

「見習いだからでしょう、ティアの治癒魔法は俺と相性がいいらしく、回復量が多いのです」

「そうか、そういう事ならそうさせよう」

「ありがとうございます、それで王様は何の情報が欲しいですか?」


これでティアに恩返しが出来るな・・・

未来では助けられてばっかだし・・・


「・・・では、先ほど他の勇者を殺そうとしていた者はどうなっていた?」

「本来ならば勇者が一人殺され、カズヨシは魔族となって王都を攻め入りこの国は終わります、以上です」


あまりにも大事な事をサッと言ったので王様と騎士団長は唖然とした。

始めに口を開いたのは騎士団長だった。

なんかめっちゃ怒ってる。


「勇者様達がいてもか!!」

「アイツらは目の前でクラスメイトの勇者が殺されたのを見て部屋に引き篭もったんだよ」

「そ、それなら私が!!」

「これは聞いた話だが、お前は騎士団長の役職を降ろされて処罰が決まるまで牢屋に入れられたらしいぞ」

「私が何故そのような目に遭うのだ!!」

「三つ、これ以上聞きたいならまた条件を出させてもらう」

「貴様ァ!!」


騎士団長が剣を抜こうとする。

抜いたら壊すか・・・


「やめんか!!」


王様が騎士団長を静止させる。

流石王様、発言力がある・・・一瞬で騎士団長がびくっと震える。


「王様、しかし・・・」

「お主の態度からしてライラに何かされたのは確かなのだろう、これ以上は聞かぬ、部屋を用意してある、休むが良い」

「はい、ありがとうございます」


そうして王の間を後にした。

けれど俺はこれからやらなくちゃいけないことがある・・・


◆◇◆王城・訓練場◆◇◆


時刻は夜、もう訓練場には誰も居ない。

これなら大丈夫だろう。


俺はスマホを弄り、とある設定をした。

そして準備が終わるとさっそく最愛のあの子を呼び出す。


「【召喚】を行使、ミーシャ」


魔法陣が開かれる。

そして魔法陣の中から召喚され現れたのは・・・


「ここ・・・は?」


ゴブリンでもなく、ホブゴブリンでもない。

そして・・・人間でも無い。

けれど俺はその子に笑顔で言った。


「おかえり、ミーシャ」

「みーしゃ?」

「君の・・・名前だよ」


月の光に辺りが照らされる。

ミーシャと呼ばれたその子はミーシャと同じ銀髪、同じ髪型、同じ容姿、だが一つ違う事があった。

猫の耳、猫の尻尾。

そう、俺はミーシャを獣人にしたのだ。

種族とスキルはリセットされていたがポイントは全て残っていた。

つまり、五百ポイント使って獣人にしたのだ。

猫なのは予想外だったが、ミーシャって名前も元は猫の鳴き声から来てるんだしピッタリだな。


「なまえ、くれるの?」

「あぁ、ミーシャ、それが君の名前だ」

「ねえ、おにいちゃん」

「なんだい?」

「なんで・・・ないてるの?」


どうやら俺は気付かない内に泣いていたようだ。

なんでだろ、ミーシャの記憶が戻るって何処かで思ってたのかな・・・

世界はリセットされたから記憶も無いのは当たり前なのに・・・

何を期待してたんだろう、俺は。


「ごめんね」

「ん?どうしてミーシャが謝るんだい?」

「みーしゃがおにいちゃんをなかせちゃったから・・・」

「・・・」


そっか・・・

確かにミーシャの記憶は消えて、俺との思い出も綺麗サッパリ消えた。

でも、ミーシャが消えた訳じゃない。

ミーシャは今、確かにここにいるんだ。

思い出が消えたならまた作ればいい。

ミーシャが思い出を忘れていても俺が確かに覚えている。


「ミーシャ、パパは悲しくて泣いたんじゃないんだよ、パパはね、嬉しくてないたんだ」

「ぱぱ?」


しまった。昔の癖でパパって言ってしまった・・・

どうしようか・・・


「ぱぱ・・・ぱぱ、おにいちゃん、ぱぱってよんでもいい?」

「えっ?」

「なんかね、おにいちゃんってよぶより、ぱぱがいー」

「あはは、そっちの方がパパも嬉しいかな」

「ぱぱー」

「・・・」

「ぱぱ?」

「ミーシャ、ありがとう」


俺はミーシャを優しくギュッと抱き締めた。

今、確かにミーシャがここにいる。

それを確かめたかった。


「あっかいねー」

「あぁ、そうだね・・・」

「なんだかみーしゃ、ねむくなって・・・」


ミーシャは俺の腕の中でそのまま寝てしまった。

こういう癖もそのままだな・・・


「それはそうと、服を作ってやらないとな・・・」


俺は【裁縫】で適当に質素な下着類とブラウスと黒いスカートを魔力で作った。

素材があればもっといいものを作れるのだが、魔力だけで作れるのを感謝しなくてはな。

魔力だけで作るってこの石ころはどうなっているのだろう・・・


「とりあえず今は部屋に帰って寝るか。王様の話だと全て個室らしいけど布団はどれくらい柔らかいのかなぁ、ま、森の中よりは快適なのは確かなはずだし・・・」


俺は部屋に行ってあることに気付いた・・・

ベット一つしかないじゃん・・・


その日は結局、床で寝るのであった。

まぁ、慣れてるからいいんだけど・・・


◆◇◆次の日◆◇◆


朝、起きると兵士さんが朝食だと呼びに来てくれた。

ミーシャも一緒にイイかと聞くと、「もうお仲間さんを見つけられたのですね!!」と言われて関心された。


朝食はバイキングらしい。

そしてミーシャと手を繋ぎ歩いていると兵士さんがほのぼのした顔で見てきた。


「コチラでございます」

「ありがとうございます、ほら、ミーシャも」

「ありがとー」

「どう致しまして、本当に仲が良いのですね」


そして部屋に入ると、他の連中は既に集まっていた。

クラスメイト達は食事しているが、どうも雰囲気が暗い。


俺はミーシャにバイキングのルール的なのを教えながら料理を取っていく。

そして料理を取り終えてソウスケの目の前に座る。


「おはよー」

「・・・おはよう」


ソウスケは元気が無さそうに下を向いている。


「どうしたんだよ、元気ないじゃねぇか」

「だってよ、今日は魔物を倒すための訓練を午前にやって午後には倒しに行くんだぜ?怖くねぇのかよ」

「あー」


確かに俺も魔物が始めは怖かった。

けれどこの世界の常識なんだと思えば特に苦にはならない。

それに人間を殺す訳じゃあるまいし・・・


「魔物か・・・どんなのだろう・・・」

「ホーンラビットとかその辺りだろ」


ミーシャは黙々とフォークを使って料理を食べている。


「ミーシャ、頬に食べカス付いてるぞ」


俺はミーシャの口をハンカチで拭く。

小さな時によく親にやられたものだ。


「はぁ、魔物か・・・」

「美味いか?」

「うん!!」


「勝てるのかな、魔王に・・・」

「ゆっくり慌てず食べろよ」

「はーい」


俺とミーシャが話してる中、独り言を続けるソウスケ。


「って誰その子!?」

「なんだ、今更気付いたのか」

「みーしゃ!!」


ソウスケが大きな声を出したせいで周りのクラスメイトが我に返って俺達の方を見る。


「猫耳!?」

「なんでこんなところに猫耳娘が!?」

「アシュレイ、その子どこから連れてきた!?」


猫耳がそんな好きなのかミーシャをマジマジと見るクラスメイト。

一方ミーシャは・・・


「ぱぱ、これおいしー」


全く気にしていない。

そんな調子で朝食を終え、午前の訓練に向かうのであった。

ミーシャと再会した時、あれ?これ、最終回でよくね?と一瞬思う自分がいた・・・

大丈夫です!!

ちゃんと続き書きますからご安心下さい!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ