序章ー3
【何で俺なんだ?】
史郎は考えてみた。生体移植とは、生きた人の臓器を患者に移植すること。
生きた人の機能は低減するものの、急激に悪くなることはないようだ。肝臓でも生体移植は可能らしい。
一方、死体移植といって、臓器提供者が亡くなった方の中で提供意思のある方の臓器をうけるという方法も
あるらしい。移植の中で、一番の肝となるのが【クロスマッチ】の試験結果だそうだ。
クロスマッチとは、レシピエントの身体にマッチする臓器なのかを検査することをのようだ。
血液型や、年齢、臓器の大きさ、など基本的な属性の縛りがあるのが現実だそうだ。そうなると、ドナー対象者はかなり制限される。
(当時の移植データでは移植後のデータや薬剤の関係上、制限されていたようだ)
あくまで、クロスマッチは医療上の技術的な見解であり、法的に整備されたとはいえ、当時は、移植可能になったというスタート時点にすぎないようだった。
ドナーは移植後には慢性腎臓病として定期的に通院を行い医師の指導をうけることになっている。
腎臓が一個なだけに元来ある、二個の機能を一個で賄うということになる。
その為に、様々な疾患に関わる可能性が高くなる。血圧管理、薬剤管理、食事管理、精神的な心理面でのフオローというのも入ってくる。体質的な問題もあるそうだ。状況により仕事の制限も出てくる可能性が
ある為に、臓器の管理を行わないと生命にかかわることになるそうだ。
その為にクロスマッチは慎重に時間と回数と精密にまた、あらゆる医学の専門家の意見が一致したうえで
合否に踏み切るのが常だそうだ。
医療関係者は普通の生活が送れます。というが、普通の生活とはいえ、リスクを背負いますとは言えない
から、普通としか言いようがないのかもしれない。
また、臓器がどのような生活環境の中で時間が経過したのかも大事になるそうだ。
幼少、少年、そして青年時代と多くの家族は、同じ時間にほとんど同じ食事をする。そして生活している。そこで遺伝やDNAのつながりにより、割合として同じ疾病になることがあるそうだ。可能性の問題だが。
なので、移植の際には、兄弟関係の臓器がクロスマッチ的には当時、一番可能性として高い対象臓器だった。