序章ー1
2010年1月福岡は雪が降っている。
史郎は、天神から地下鉄に乗り込むのに足が進まなかった。繁華街の街並みがうっすらと白くなってきた。
時間は21時寒空を見上げながらため息をついていた。
ため息は二度三度と止まらなかった。理由は史郎の会社は上場を目指していた。その上場準備が失敗してしまった知らせを本社から受けた日だった。
『なんだろう。飲みに行きたいな。。。』
携帯にメールが入る
【ご飯はいるの?】
家からだった。
〈あ、帰ってこいってことか〉
また、ため息が出てしまう。こんなメールが来る時は、大方何かあることが多い。
つまり、疲れていることや、何か話したいことがある。などのことが待っておることが多い。
『ま、いいか。早く帰ろう。』
返信する
【今天神。22時半には着く予定。】
つまり、ご飯は食べます。という意思表示だ。
時間を伝えれば、面倒なやり取りはしなくていい。
何の話?とか聞くだけ野暮というものだろう。
電車で揺られること40分。
あと5つで自宅の駅に着くなと思っていると今度は、実の兄(伸郎)からメールが着た。
【今電話大丈夫?大事な話。】
(またなんだ?)
伸郎は二つ上の兄にあたる。結婚しており子供も3人いる。マイホームパパを絵にかいたような人間だ。
学生時代に悪性腫瘍により、早期発見の為に大事には至らなかったが、健康には気をつかっているタイプの人間だ。
史郎とはほとんど連絡を取ってはいない。住居も横浜と遠方に住んでいる理由もある。
そんな伸郎からのメール。
史郎は大事な話を詮索してみた。離婚か?
いやいやそれとも別居か?
ま、独身の俺には関係ないしな~
一応、返信しとこう。
【10分後に駅に着くから。】
直ぐに返信が着た。
【電話する】
直感で(面倒くさ!)そう史郎は感じた。
史郎が駅に着いたころ
携帯がタイミングよく鳴り響いた。伸郎からだ。
『はい。もしもし』
『あ、大丈夫か?実はな』
『うん(そらきた)』
『お前の腎臓をくれ』
『はあ????』