第三十五話 面倒臭い皇太子殿下
短いですが、更新します。
「まったく。私を忘れるとは」
「申し訳ございませんね、殿下」
今、私たちは神殿をお暇して大通りを移動中です。
先程、神殿で私たちが騒いでいた時に現れた皇太子殿下。
その姿は昨日拝見した時と比べると、よれていました。髪型は整えていますがどこか雑で、服装も昨日と同じでシワシワでした。
どうしたのかとお姉さまがお聞きしたら、
「エルトリートの奴はどこかに行ってしまうし、其方達は帰宅してしまうし……誰も私を気にせずにな! おかげで寝る場所の確保にも苦労したわ!」
とのことで。
……土地勘もない場所で、突然宿を探さなければならない状況に陥った訳です。
しかも高貴な立場にいらっしゃるのですから、自分の足でなんて初めての経験でしょう。
大抵の場合、貴族などは雑事は侍従に任せるもので、自分でやることなど全くありません。
王族なら尚更です。
そんな方を、お姉さまが来たことが嬉しくて舞い上がっていた私は気にも止めていなかった事実を突きつけられ、慌てて謝罪しようとしましたが、お姉さまに止められてしまいました。
「いいのよ。私と旦那様だけだったのに唐突に自分もって押し掛けてきたのよ? 宿泊する準備もなにもせずに。それに、自分の事は自分でできると仰ったのは殿下自身ですもの。そう言われたら私たちがどうこうする責任はないわ」
いえ、そういう問題ではないと想うんですが……。
そう思ったらお姉さまは私に寄り添って、小声で本音を暴露してきました。
「殿下って、面倒臭いのよ」
「……それは不敬では?」
「いいのよ、事実ですもの」
お姉さま曰く、殿下は普段は皇太子として理想的な方なのですが、その分、プライベートでは色々と暴走するようです。
公務は素晴らしい手際でこなしますが、その他では我が儘で自己中心的な部分があって、周囲を辟易とさせているのが常であると。
今回のことでいえば、何の準備もなしに部下の旅行に随伴した挙句、自分の事は自分でやると豪語しておいて放置されたら文句を言う、という行動に出る。
「……はっきり言えば、まだ子供っぽいところがあるのよ」
「あ、あはは……」
別に、そこまで酷いとは思えないんですが。
とても責任ある立場で仕事をしているのですから、その重圧ははかり知れません。
人間、気を抜く時がないと精神的にも肉体的にも潰れてしまいますからね。
「限度というものがあるわ。権力者の我が儘に付き合わされる方の身にもなってみなさい。大変なんてものじゃないわ」
お姉さまは盛大に息を吐きながらそう仰いました。
そんなこんなな一幕の間にも殿下がぶつくさと文句を言って、周囲の目もありましたし早々に神殿を辞した訳です。
本来なら色々とお姉さまと一緒に拠点を歩き回るはずだったのですが、あれからずっと殿下は文句を言いながら私たちの後を付いてきます。
「まったく。いくら許可をしたとはいえ、さすがに……」
「いつまで愚痴るつもりですか? 出発前にご自分で言っていたではありませんか。私たちの手を煩わせることはしないと」
「確かに言ったがな……それとこれとは」
先程からずっとこの調子です。
「それで、私たちはこれから観光を楽しむつもりですが、殿下はどうするおつもりで?」
「…………」
ちょっと無理矢理ですが、私が話題を変えようと質問をしましたら、殿下はむすっとして黙ってしまいました。
……いけません。
貴族のマナーとして当たり前の『目上の者には発言の許可を取る』という行動を忘れていました。
拠点に来てからそういった事をする必要から解放されました。
家族とも、友人とも、自由に喋ることができるのです。
だって、もう貴族じゃないのですから。
でも、目の前にいるのは皇太子殿下。やがて一国の頂点に立つ方。
「申し訳ありません殿下。発言の許可も得ずに……」
「いいのよマリア。今はお忍びなんだから、堅苦しいマナーはなしよ。ですよね殿下?」
「……ああ、気にすることはない」
気にするなと仰っていますが、不機嫌なお顔をされているのですが……。
「でんかー」
「分かっている! 分かっているのだが……」
「んもう。マリア、もう放っておいて、私達だけで楽しみましょう」
え? いえそういう訳には……。
「さぁ、昨日は一部分しか見て回れなかったけれど、今日はたっぷりと歩きましょう!」
お姉さま、手をそんなに引っ張らないで~。
気がつけば四ヶ月……。
書けない状況が続いております。
今年はこれが最後となります。
皆様、よいお年を!




